日常にツベルクリン注射を‥

現役の添乗員、そしてなおかつ社会科の教員免許を所持している自分が、旅行ネタおよび旅行中に使える(もしくは使えない)社会科ネタをお届けするブログです♪

【スポンサーリンク】

【保存板】47都道府県完全網羅!ご当地ソング特集♬【西日本編】

f:id:tuberculin:20201110203614j:plain

【保存版】シリーズは、筆者であるツベルクリンが色々なジャンルの有益かつ無益な情報を書いていくシリーズ記事です。今回のテーマは「47都道府県完全網羅!ご当地ソング特集♬【西日本編】」というテーマでお届けいたします。

続きを読む

【保存版】公立の小学校&中学校でかかる変な教育費を考えてみる記事

f:id:tuberculin:20201117213616j:plain

【保存版】シリーズは、筆者であるツベルクリンが色々なジャンルの有益かつ無益な情報を書いていくシリーズ記事です。今回のテーマは、「公立の小学校&中学校でかかる変な教育費を考える記事」です。

続きを読む

【かもしれない英会話】コロナ禍の社会で使うかもしれない英会話集!

f:id:tuberculin:20201130205544j:plain

【かもしれない英会話】シリーズは、海外旅行や海外生活において使うかもしれない英会話をご紹介していくシリーズ記事です。今回は「コロナ禍の社会で使うかもしれない英会話」を学んでいきましょう。

続きを読む

召集令状(赤紙)にはどんな内容が書いてあったのか調べました

f:id:tuberculin:20200828221859j:plain

 

今から79年前の12月8日、多くの人を巻き込んだ太平洋戦争が始まりました。

 

その戦時中、たった1枚の紙きれで人生が変わったと言われる召集令状、通称「赤紙」。よくドラマや映画などでは、配達人が召集される人の自宅へ出向き『召集令状を渡しに来ました。おめでとうございます!』と言いながら赤紙を渡すシーンがよく見受けられます。

 

このように、赤紙は悲劇の象徴として知られているのですが、赤紙にはどんなことが書いてあるか知っている人は少ないのでは?と思います。そもそも、何が書いてあるのか気にしたことさえ無い人も多いのではないでしょうか?
 

 

私の手元に召集令状(赤紙)があります。

 

f:id:tuberculin:20200828220219j:image

もちろん、本物ではなくレプリカなのですが、レプリカですから本物の赤紙と同じことが書いてあります。この記事では、赤紙にはどんな内容が調べていきたいと思います。

 

 

<目次>

 

 

 

表面の記載内容

 

f:id:tuberculin:20200828221600j:plain

表題は「臨時召集令状」とあります。召集についてはいくつか種類があります。

召集 - Wikipedia

皆さんが想像する赤紙については、そのほとんどが「臨時召集(戦争が激化した時に行われる召集のこと)」と思ってもらっていいでしょう。

 

召集された人(應召者と呼ぶ)は、表紙に書いてある到着地に記載のある日時まで行かなければなりません。到着地は大抵、軍隊の駐屯地です。

 

駐屯地が家のすぐ近所なら歩いて行けますけど、ある程度距離がある場合は、当然公共交通機関を使用して赴くことになります。実は、赤紙はそれ自体が鉄道の切符のような役割を果たしていたのです。

 

ご丁寧に赤紙には「乗車駅」「下車駅」「乗車すべき席の等級」「運賃(急行料金)」が記載してあります。そして、赤紙の左側3分の1は切り離すことが出来ます(上の写真の青線の部分)。

 

左側の部分は「臨時召集應召員旅客運賃後拂證」と書いてあります(難しい語句については「應召員=召集された人」「後拂證=後払証」とお考え下さい)。

 

当時の日本軍(というか国鉄)の微妙に優しいところが、召集された場所へ向かう交通費(鉄道費)を基本的には全額無料としたところです。点線より切り離して出発駅の窓口に後払証を差し出すと、到着駅までの切符と交換してくれるというシステムでした。

 

 

 

 

裏面の記載内容

 

f:id:tuberculin:20200828220306j:image

 

裏面には召集にあたっての諸注意が書き連ねてあります。戦前の文書は、特に公文書など旧字体を使用した漢文調を使用しており、現代の我々からすると読みにくく意味の通りにくいところもあります。なので、私の方で現代語訳して記述していきます。

 

 

後払証の使用上の注意

細かく4項目に分けて記載がなされています。

f:id:tuberculin:20200828220319j:image

「一.本証を使用する時には、後払証と召集令状を駅員に提出し、乗車券(乗車距離が170キロを超える際は急行券も)を受領せよ。他人に譲渡したり他人が使用したりしてはいけない」

 

「二.席の等級は以下のとおりとする。将官クラス→1等か2等か3等。長官クラス→2等か3等。それ以外→3等」

 

「三.本証による運賃の割引率は以下のとおりとする。1等→5割引き。2等→4割引き。3等→5割引き。朝鮮半島や満州地方(※中国の東北部。当時日本の影響下にあった地域)の鉄道は5割引き。」

 

「四.召集された者は、名前や使用区間、使用日などを記入するように。訂正する場合は、使用者の訂正印が必要である。」

 

 

 

第一項で言及されている通り、召集された人に関しては、基本的には召集場所まで出向く際の交通費はかからない(目的地までの切符を駅にて授与)と定められています。

 

運賃の割引率に関しては、おそらく軍隊から鉄道会社(現在のJRは当時は国鉄と言って国有の企業だった)に支払われる際の割引率かと思います(違っていたらご報告した頂けると助かります)。

 

 

應召員の心得

こちらも細かく5項目に分かれて記述されています。

f:id:tuberculin:20200828220335j:image

「一.(イ)召集場所に到着したら事務所に召集令状を提出せよ。もし、令状の到着が遅れた場合は、持参する必要は無い。」

 

「一.(ロ)召集令状を受け取った時点で、指定の日時に収集場所へ出向くことが難しい場合、最寄りの憲兵または警察に出向き、証明書を発行してもらい召集地の事務所に提出せよ。」

 

「二.戦時下のため、鉄道に問題なく乗ることができない可能性もあるかもしれないが、基本的には指定の日時に到着できるよう気を付けよ」

 

「三.軍隊に属する船舶会社の船に乗って出向く場合は、事前に憲兵または警察に届けで証明を受ければ、割引運賃で乗船が出来る」

 

「四.もし召集された者が召集所に出向く際に、交通費を手出しした場合は、到着後事務所にて旅費を支給する。もし、何らかの事情で旅費の手出しが難しい者は、事前に各市町村役場に届け出て、前金を受け取るようにせよ」

 

「五.召集された者が軍隊に入隊する前の宿舎については召集された部隊の近くに用意してある。召集された市町村の役人、もしくは憲兵または警察に届け出て、指定の宿舎に宿泊せよ」

 

 

 

経済的に召集された場所までの旅費が出せない人に関しても、運賃を無料としたり事前に役場から前金を受け取れるようにするなど、様々な配慮(逆に言えば、経済的理由などで召集を拒否することを許さない)がなされていました。

 

召集場所に到着した人は、入隊検査を受け問題が無ければそのまま入隊、戦地へ配属となりました。もっとも、入隊検査で異常ありと判断された人に関しては、「即日帰郷(帰宅が許される)」を命令されることもありました。

 

例えば、小説家の三島由紀夫は、入隊検査当日に酷い風邪を引いており、間違って肺病と診断され即日帰郷を命じられています。

 

 

ここで、憲兵の存在について触れておきます。

憲兵 (日本軍) - Wikipedia

憲兵とは、軍隊内の犯罪を取り締まる兵隊のことを指します。当初は、兵隊内の人間のみがその監視対象だったのですが、次第に一般国民にまでその目が向けられました。現在の警察官と同等の権限を与えられていたとされています。

 

 

問題が生じたときの処置

「一.召集された者が、事故のため指定の日時に召集地へ出向けない場合の手続きについては以下のとおりとする」

 

「(イ)疾病によって出向くことが出来ない場合、各部隊長に宛てた届け出に医師の診断書を添えて、本籍地の市町村長に差し出すこと。もし、診断書を何らかの事情で手に入れることが出来ない場合は、憲兵または警察の証明書を添付すること」

 

「(ロ)伝染病予防のため交通機関が遮断された場合は、部隊長への届け出を本籍地の市町村長に差し出し、憲兵や警察、または船長や駅長から証明書を受け取り、召集地に到着後事務所へ提出せよ」

 

「(ハ)非常事態発生により交通機関が遮断された場合は、最寄りの部隊(部隊がいない場合はその地の市町村長または憲兵または警察)に届け出よ。」

 

以上、明記した以外の理由による召集期日の延期は認めない

 

 

 

「二.前項の(イ)(ロ)に規定している理由で、到着が遅れた者は、その遅延の理由が解消された際には、本籍地の市町村に届け出た後、すぐに召集場所へ出向き届け出よ。(ハ)の事由による延着の場合も、証明書を受けて召集場所へ出発せよ」

 

「三.召集される者が召集されることにより、その家族の生活が立ち行かなくなると考えられる場合、各市町村長または警察署長を経由して召集の免除を部隊長に願い出よ」

 

 

 

 

 

 

ある程度のトラブルを想定してその対応方法が明記されています。ただね、勝手な偏見ですけど憲兵や警察に『鉄道が動かなくて召集地に行けません!』とか言ったら『それでも貴様は日本男児か!!!』ってぶん殴られそう。

 

あと三項って、どの程度の経済困窮者なら認められたんでしょうね?ちなみに、徴兵された場合は、もちろん軍隊から給料は出ます。

 

さらに、企業によっては、召集されてしまった会社員の給料を一部払い続けるところもあったようです(残された家族が困窮しないように)。

 

皮肉ですが、軍隊に入れば衣食住は保証されます(戦地に行けば例外ですけど)。経済的に困窮している家庭の男子ほど、軍隊を希望した人もいるかもしれません。

 

 

 

應召員の代わりに令状を受け取った時の心得

「一.應召員(召集される者)に代わって召集令状を受け取った者は、すぐに確実な方法で召集部隊や召集日時を召集される者に連絡せよ。なおかつ、すぐにこの令状を渡せるように対応すべき。」

 

「二.すでに演習召集または教育召集中の者の代わりに召集令状を受け取った者は、演習または教育部隊宛てに令状を送付すべし。」

 

「三.召集される者が犯罪者または行方不明で指定の召集日時に出向くことが出来ない場合は、令状を代わりに受け取った者が、召集される予定の部隊長宛ての届け出に憲兵または警察の証明書を添付し、本籍地の各市町村長に差し出すこと。」

 

 

 

 

召集令状(赤紙)は、郵送ではなく役人が直接本人の家に出向き手渡しをしていました。もちろん、赤紙を渡す相手が仕事などの都合で不在の時もあります。その時は家族の人に代わりに渡しますが、ここでは代わりに召集令状を受けとった人の対応について書かれています。

 

一言に召集と言っても、その種類は様々です。戦地へは行かない「教育召集」「演習召集」という名目で召集される時もあります。教育召集や演習召集中に、実際に戦地へ行かされる臨時召集令状(赤紙)が届くこともあったようです。

 

ちなみに、犯罪者は不穏分子として召集されませんでした。非合法的なやり方ですが、召集を恐れ赤紙が来る前に犯罪を犯す人もいたようです。

 

 

 

召集を無視した時の刑罰について

「一.召集された者または令状を代わりに受け取った者で、正常の理由無く前項までの心得に背いた者は、拘留または罰金に処す」

 

本人が召集を拒否することはもちろん、令状を代わりに受け取った家族が『あの人を戦場へは行かせたくない』と考え、令状が来たことを本人に知らせない(もしくは本人を匿まったりする)ことも処罰の対象となったようです。

 

 

 

終わりに…

f:id:tuberculin:20200828232852j:plain

当ブログでは、これまで政治色を前面に押し出した記事を掲載することはほとんどありませんでした。今回の赤紙の記事をもってしても例えば、『二度と子供を戦争へ行かせない国に!』『憲法第9条改正反対!』『いや、もっと防衛費を拡大すべきだ!』とか主張しようとは毛頭思っておりません。それは、各自読者の皆様が考え判断することです。

 

今回の記事は、レプリカの赤紙に書いてある記載内容を淡々と掲載したに過ぎませんが、実際に戦時中にこの赤紙を受けとった時の絶望や悲壮感は想像を絶するものがあると思います。

 

と同時に、『自分が戦地へ行くことで家族を守ることが出来る』といった一筋の希望を持って戦場へ行った男子もいると思うのです。大切な人の平和を守るために戦争へ行ったのです。

 

平和な世界を維持するためのアプローチの方法は様々あるとは思います。そんな中で、たった1枚の赤紙によって戦地へ行き、死んだり傷ついた人々の思いを、現代に生きる私たちは受け止めなければいけないのです。

 

 

 

当ブログのtwitterアカウントはこちらから

ツベルクリン@現役添乗員 (@tuberculin0706) | Twitter

 

【スポンサーリンク】