【旅行用心集を読む】シリーズは、『旅行用心集』という江戸時代のガイドブックを読んでいくシリーズ記事です。今回はその第4回です。
前回の第3回はこちら
『旅行用心集』とは、1809年(文化7年)に八偶芦庵という旅好きの一般人がまとめた旅行のハウツー本です。その江戸時代に書かれた書物をツベルクリンが所有しているので、それを現代語訳しながら読んで行きます。
芦庵は旅行の際に気を付けることを"道中六十一ヶ条"としてまとめています。前回の第3回ではその条項の8~16条までご紹介しました。今日は第17条からです。
<目次>
<第17条>
「夏の旅では旅の途中で疲れた時に、道端で休憩したり、草むらで寝っ転がるような人がいますが、こういう行為はやめましょう。夏の草むらには毒を持った草がたくさんいます。たとえ、毒を持っていない虫であったとしても毒を持っている虫と接触したあとに人間を刺すことがあるので、危険であるといえます。」
「また、草が茂っている古い神社やお寺、山中の洞窟などにむやみに入ったり、水辺や湿地が涼しいからと言って長時間休むのは止めましょう。そんなところは毒を持った草や虫が多くて危ないです」
著者の芦庵さんは、気を付けるべき生物を絵入りで解説しています。
右上の赤四角が「ハンミョウ」という昆虫です
ハンミョウは大きなアゴを持っているので噛まれると痛いです。でも、綺麗な模様が魅力です。
そして、ハンミョウを捕まえる香川照之さんがこちら
右下の青四角がトカゲです。ちょっと気持ち悪いので画像は載せません(´・ω・`)
左側の緑四角がマムシです。ちょっと気持ち悪いので画像は載せません(´・ω・`)
『ちょー、渋谷でショッピング中にマムシに噛まれたんだけど~。マジうけるw』という方は、こちらを参照ください。
<第18条>
2行目"食後に道を~"より現代語訳
「食事した後すぐに歩き始めてはいけません。歩かなくて馬や駕籠に乗っていく際も急いではいけません。もし転んだり落馬したりするとお腹が落ち着いていないので具合が悪くなる場合があります。」
今でも食後すぐの運動はダメっていいますよね(´・ω・`)
食後に運動すると、横腹が痛くなるのはどうして?予防と対策を知っておこう - NAVER まとめ
<第19条>
6行目"大小便~"より現代語訳
「トイレを我慢して馬や駕籠に乗ってはいけません。落馬した際に心臓に負担がかかり、最悪ショック死します。」
第18条でもありましたが、そもそも落馬自体がヤバイ事故じゃないのでしょうか?(´・ω・`)。鎌倉幕府の初代将軍源頼朝も落馬が原因で亡くなっているし‥(なお諸説あり)
団体ツアーにおいても、観光バスに乗る前には必ずお手洗いを済ませましょう、なお、仮に乗車中に催した場合は遠慮なく添乗員orバスガイドさんへお申し出ください。最寄りのトイレへ立ち寄りますから。"事後報告"よりはマシです(´・ω・`)
<第20条>
8行目"人馬の先触~"より
「人足(にんそく)や馬に荷物を送ってもらうならば、出発日より前に余裕をもって送っておきましょう。直前だと、荷物に追いついてしまう(もしくは荷物を追い越す)場合があります。」
人足とは、現在でいう宅配業者みたいな業者です。
国内旅行や海外旅行に行く場合、大きなスーツケースを自宅からゴロゴロしていくのが面倒な場合、スーツケースを事前に空港もしくは1泊目のホテルに送っちゃうというテクニックがあります。
当たり前ですが、例えば1泊目のホテルに荷物を送るのであれば、チェックインまでに荷物を届けてもらう必要があります。第20条はそういうことを言っているんですね(´・ω・`)
<第21条>
1行目"武士の荷は勿論~"より現代語訳
「武士の荷物はもちろん、商人の荷物であっても、宿場町の問屋場に到着したら問屋場の人にきちんと挨拶し、書類上の手続きをします。その後、荷物が届いているか確認し、受け取ります。問屋場は混雑する場所なので、紛失物が無いようにし、ほかの人に迷惑にならないように気を付けましょう」
問屋場というのは、各宿場町(しゅくばまち・旅館が集まっている町)に必ず1か所はある、荷物集約所です。現在では、荷物は宿泊予定のホテルに送れますが、江戸時代は宿泊場所は飛び込みで決めるものだったので、それが出来ません。送った荷物は、偉い武士の荷物であろうとこの問屋場に届けられたのです。
問屋場のイメージはこちら
出典:https://gallica.bnf.fr/ark:/12148/btv1b10526708z.item
問屋場は裸率が高いですが、問題ないです(´・ω・`)
<第22条>
7行目"武士は勿論、平民にても~"より現代語訳
「武士はもちろん、庶民であっても大切な用事で旅行するときにおいて旅行中に馬や人足の手配が思うようにいかなくても気にしてはいけません。スケジュールに影響をおよぼすこともあるかもしれませんが我慢しなければなりません。途中で手間取っては、何のために大切な用事で旅行しているのか分かりません」
宿場の旅館や、飛脚や駕籠、人足は半官半民みたいな存在でした。幕府の管轄下にもあるので、融通はなかなか効きにくいようでした。
<第23条>
3行目"途中にて馬~"より現代語訳
「馬や人足は、途中で"荷替"というものを行うことがあります。距離によって、途中で別の馬や人足に荷物の入れ替えを行うものです。これは預け主にとっては手間がかかるので少々迷惑かもしれませんが、仕方がないと思ってください。」
「そのため、人足は焦って荷物替えをして、うっかり小物を落としちゃう場合があるので、自分自身でも荷物を確かめながら、手伝ってあげてください」
荷物を持ってくれる人足や馬を同行させながら旅する場合の注意です。道中には「荷替場」という荷物の積み直し(を口実にした人足さんの休憩所)をする場所がありました。また、荷替場には馬が何頭か待機していることもあり、元気いっぱいの新しい馬に荷物を積みなおすこともあったようです。
<第24条>
9行目"明荷、葛籠~"より現代語訳
「スーツケースや大きい籠(かご)に衣類や紙類を収納する場合、油紙で二重に巻いて防水加工をしておきましょう。川越えをする場合、荷物の中に水が入ってしまう恐れがあります。スーツケースだけではなく、肩掛けかばんにも水が入らないように気を付けましょう。」
「また、川越えの際は荷物の紛失(川に荷物を落とす)にも気を付けましょう。スーツケースや肩掛けかばんは、伝通院前の駿河屋さんで購入するのをお勧めしますよ!」
明荷(あけに)とは、まあ行李(こうり)みたいなものでこういうやつです
油紙はこういうの
油紙は水をはじくのです
江戸時代は、大きな川に橋が架かっていなかったので、川の手前に川渡し屋さんがいました。お金を払って肩車とかしてもらって川を渡っていたのです。たぶん、カバンはずぶ濡れになりますわね。
そして、唐突に駿河屋さんのCM。江戸時代のアフェリエイトですわ。
<第25条>
6行目"旅先にてしらぬ川~"からの現代語訳
「旅行中に初めて渡る川は、決して自分で歩いて渡らないようにしましょう。洪水などで川渡し人足や渡し舟を臨時で出している場合がありますが、そのような場合は川渡し案内所にて相談してください。決して直接業者に接触しないように。案内所を通すことでトラブルを避けることが出来ます。」
何言ってるか分かんないかもしれませんが、実は重要なことを言っています。
大きな川(例えば静岡県大井川とか)には、最初から幕府の方針で橋がかけられていませんでした(幕府に反乱を起こす軍隊がいても、川で足止めが出来るため)。
上の絵は静岡県の大井川の様子です。まあこんな感じで川渡し屋さんが常設されていたのです。
大井川にはこのように、幕府公認の川渡し屋さんがいます。公認ってことは、公営ってことでありボったくられる心配が無いのです。こういう大きな川は、常に幕府の監視の目が光っており、ぼったくり屋さんが勝手に営業することは出来ない状態でした。
問題は、"いつもは橋が架かっているけど、橋が洪水で流されちゃって‥"みたいな場所です。その場合、芦庵さんの文章のように、橋の修理が終わるまで臨時の案内所が設置され、臨時の川渡し屋さんがやってきたようなのです。案内所が管轄している川渡し屋さんならまぁ大丈夫として、こういう時にどさくさにまぎれてぼったくり屋さんが顔を出すのです。
『だんな!うちならお安く渡れますぜぇ~。』と歌舞伎町の客引きみたいに旅人に話しかけ、いざ船に乗ったら『100万円払わないと船から降ろさねえ!!』みたいな悪徳川渡し屋さんもいたようなのです(´・ω・`)
話は変わりますが、海外旅行において現地の空港に着いた際に、タクシーで移動する場合は、きちんと正規のタクシー乗り場もしくはタクシー案内所にてタクシーを手配して利用しましょう。到着ロビーに出てきた瞬間、『タクシー?』みたいに話しかけてくるようなやつらは、ぼったくりタクシーなので無視しましょう♪
ツベルクリンも海外添乗の際、『タクシー?』って声をかけられますが、スーツで旅行会社の旗を持ってるような奴がタクシーを使う訳ないのです。ツベルクリンに声掛けするのはお門違いなのです。ぼったくり屋さんももうちょっと考えて声かけしろよと思います(´・ω・`)
また、ホテルからタクシーを利用する場合、ドアマン(ドアの外に立たされている人)にタクシーを呼んでもらいましょう。
ドアマンとはこういう人です
芦庵さんのアドバイスは現在でも場面を変えて使えるものもありましたね(´・ω・`)
終わりに‥
次回は第五回として第26条からご紹介いたします♪次回もご覧ください♪
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