【旅行用心集を読む】シリーズは、今から200年以上前の1810年に書かれた『旅行用心集』という旅行のハウツー本を現代語訳しながら読んでいくシリーズ記事です。今回はその第6回です。
前回の第5回はこちら
『旅行用心集』とは、八偶芦庵(やすみろあん)という旅好きな一般人が書いたガイドブックです。その書物がツベルクリンの家にあるので現代語訳しながら江戸時代の旅行の様子を探っていきます。
芦庵さんが、旅行のアドバイスを書物の中で"道中六十一か条"としてまとめています。前回の記事ではその37条までご紹介しましたので、今回は続きの第38条から読んで行きます。
<目次>
<第38条>
1行目"泊々にて、刀、脇差は~"より現代語訳
「旅館に泊まるときは、刀や脇差は自分の布団の下に隠しておきましょう。槍や長刀は部屋の一番奥に置いておきましょう。」
脇差(わきざし)とはまあ短い刀のことです。
出典:【作画資料】日本刀の種類や構造・描き方 | イラスト・マンガ描き方ナビ
刃渡りが60cm以上のものを「刀」、60cm未満の物を「脇差(わきざし)」といいます。刀を所持していいのは武士だけでした。逆に、脇差に関しては一般庶民でも勝手に所持してよかったのです。
現在みたいに気軽に110番出来る時代ではないので、襲撃されたらある程度自己反撃しなければなりません。"やられたらやり返す、倍返しだ!"精神です。敵に武器を奪われたら反撃できないので、敵に奪われない位置に武器を置いておく必要があったのです。
なお、現在では許可なく刃渡り15cm以上の刃物を所持していたら銃刀法違反で捕まりますのでお気をつけください。どうしても刀が欲しい方はこちら。
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<第39条>
3行目"道中、火の用心~"より現代語訳
「旅行中は、火の用心に十分気を付けてください。村の中はもちろん、広々とした場所でもタバコをその辺にポイ捨てしないようにしましょう。また、乗り合い船なのではタバコの火で衣類や荷物を焼くことがあるので注意が必要です」
江戸時代のタバコはいわゆる"キセル"というやつでした。
タバコ屋さんでタバコの葉を刻んだやつを買って、キセルの先っぽに入れて火をつけて喫煙していました。
出典://edo-g.com/blog/2016/09/cigarette.html/6
たき火から直接火をもらっています。スペクタクルです(´・ω・`)
この時代は、芦庵さんの文章にもあるように江戸時代は今以上に木造建築が多いので火事の恐れと隣り合わせでした。しかしながら、江戸時代の喫煙率は非常に高かったようです。
出典:https://edo-g.com/blog/2016/09/cigarette.html/7
気になるのがこの浮世絵。タバコの煙を妖怪さんに吹き付けていますが、妖怪さんめっちゃ嫌そうな顔をしています。妖怪にカモフラージュされていますが、江戸時代も愛煙家VS嫌煙家のバトルはあったようです。
<第40条>
7行目"春の中、所々野山~"より現代語訳
「春になると、いろんなところで野焼きをしているところがあります。風の向きや勢いによっては火が広がったりすることもあるので、野焼きしている場所では迂回することも考えましょう。大通り沿いでも火がやってくる可能性ものあります。野焼きを侮ってはいけません。」
春先のまだ草がボーボーになってない時期に、山や野原に火をつけて全部燃やしちゃうことを「野焼き」といいます。灰が肥料として活用したり、害虫を殺戮するために行います。
出典:https://www.hirado-net.com/?post_type=news&p=8549
世の中にはどんなものにも"マニア"がいます。"野焼きマニア"というただ野焼きを見るのが好きという断末魔みたいな方々も一定数いらっしゃいます。
場所によっては、毎年春先の決まった時期に行ったいるところもあるので、『おっ、やってるやってる~!』といった感じでどこからともなく野焼きマニアが沸いてくるのです。見た感じ、まだ幼稚園くらいの女の子も熱心に野焼きを見ています。野焼きマニアの鏡ですね。
なお、野焼きをする場合は、きちんと役場の方に届けなければなりません。『この腐った世の中を変えてやるんだぁーー!!』的なノリで勝手に野焼きをした場合、放火犯になっちゃうのでお気を付けください。
<第41条>
1行目"道端の家居~"より現代語訳
「道路沿いの家や畑の中に、梨、柿、柚子、みかんなどの果物がなっているばあいがありますが、勝手に手を出してはいけません。また、田畑や庭先の干物などにも手を付けてはいけません。見知らぬ土地でのトラブルは解決しようがありません」
江戸時代の柿泥棒さんはこちら
出典:https://edo-g.com/blog/2017/07/utagawa_hirokage.html/4
そして、現代の柿泥棒さんはこちら
ってか2019年現在で『おっ、柿なってるじゃん!捕ったろ!(´・ω・`)』って考える小学生ってカツオくらいな気がします。まず、木登り自体しないんじゃないでしょうかね。
<第42条>
6行目"山中、或は野中などにて~"より現代語訳
「山道や野道にて女性とすれ違った場合、一通りのあいさつなら構いませんが、無駄話や相手のなまり言葉などをバカにするのはやめましょう。トラブルはこういう些細な言動から始まります。注意しましょう」
ツベルクリンが昔、ラジオで聞いた小話があります。九州の修学旅行生が東海地方へ行った時の話です。九州の高校生と東海地方の高校生がすれ違った際の話ですが、
九州地方の高校生『あいつら(東海地方の高校生)、"ずら"とか言ってるげな~』
と仲間内で話す一方、
東海地方の高校生『あいつら(九州地方の高校生)、"げな"とか言ってるずら~』
東海地方では、語尾に『~ずら』と言う方がいます。一方の九州地方では、語尾に『~げな』と言う方がいます。お互いにお互いの方言をバカにしあうというネタ話ですが、現代でも地方によって方言が強いのに、江戸時代だともしかしたら相手の言ってることが分からないこともあったかもしれませんね(´・ω・`)
<第43条>
1行目"間の宿、又は横筋なとにて~"より現代語訳
「間の宿や町はずれにて、あんまり良くない旅館に宿泊するのはいい気分はしません。けれども、不自由なことを文句言ったりせず、やわらかな物言いに抑え、荷物の管理や戸締りに気を付けましょう」
江戸時代、江戸から京都を結ぶ東海道(現在の国道1号線)には、53個の宿場町(旅館街)がありました。53個の宿場町は、まあ江戸幕府が公認した正式な旅館街などのですが、宿場町と宿場町の間に、自然発生的に生まれたのが「間の宿(あいのしゅく)」です。
神奈川県の難所、箱根の手前に昔からやってる休憩所である甘酒茶屋があります
基本的に"間の宿"は休憩施設であり、宿泊するような場所ではありませんが、しれーっと宿泊できるようにしている場所もあったようです。現代のネットカフェみたいなもんでしょう。ネカフェに泊まって、やれ毛布が薄いだのシャワーの水流が弱いだと文句言うなよってことです(´・ω・`)
<第44条>
5行目"皆人他国へ出れば~"より現代語訳
「人はみんな誰でも、自分の地元を出れば、言葉や習慣が自分の思っているものと違ったりすると、変だなと思うかもしれません。しかし、自分が変だと思う時は、また相手からも自分は変だと思われているものです。このことを理解せずに、相手のことを笑ったりするとトラブルになる恐れがあります。」
ツベルクリンは添乗員の仕事で日本のいろんな地域の方と接しますが、
北海道地方の人‥控えめ、おしとやか
東方地方の人‥意外と優しい
関東地方の人‥時間をきっちり守る。ちょっと細かい
東海地方の人‥関東人と関西人のミックス
関西地方の人‥人情溢れるが、お土産あんまり買わない
中国地方の人‥カープファン
九州地方の人‥旅行中はお土産買うことしか考えていない
もちろん全員が全員これに当てはまるわけではないので、ご理解ください(´・ω・`)
芦庵さん(著者)のアドバイスは、むしろ現代では海外旅行に行く際に考えるべきアドバイスといえます。海外旅行では、自分の常識を大きく外れるような光景を目にすることがあっても、気にしてはいけないのです。気にしたら負けです。インドみたいに、児童公園の中で野良牛が闊歩していたって動じてはいけません。
(ツベルクリン撮影)
終わりに‥
一昨日からPV数が常軌を逸したものになってます。たぶんどこかで当ブログが晒されていると思うのですが、ご存知の方いらっしゃったらお教えくださいm(_ _)m
次回は第45条から紹介していきます(´・ω・`)
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