日常にツベルクリン注射を‥

現役の添乗員、そしてなおかつ社会科の教員免許を所持している自分が、旅行ネタおよび旅行中に使える(もしくは使えない)社会科ネタをお届けするブログです♪

【スポンサーリンク】

添乗員として"てるみくらぶ"の破産に巻き込まれた時の体験談

スポンサーリンク

スポンサーリンク

f:id:tuberculin:20190610235048p:plain

 

2017年3月、日本国内外で大きな波紋を呼んだ旅行会社「てるみくらぶ」の破産。ずさんな経営に粉飾決算が重なり、突然旅行会社が倒産。倒産時にてるみくらぶのツアーに出かけていた多くの旅行者が帰国できない、飛行機やホテルの予約が取り消されている、などの被害を受けました。

 

メディアでは、主にツアー利用者側の声が多く取り上げられました。その一方で、てるみくらぶ側の立場にあった人の声はほとんど聞かれませんでした。

 

実は私、てるみくらぶのツアーに添乗員として添乗をしていました。しかも破産当日も。この記事は、破産直前(破産の前日)にツアーに出発してしまい、ツアー中に海外の旅先で会社の破産を知った添乗員(私)の行動記録です。

 

 

 

f:id:tuberculin:20210308231724j:plain

 

本題に入る前に、根本的な事実を申し上げます。そもそも、この世に存在する添乗員ののほとんどはフリー(派遣社員)の添乗員です。旅行会社が独自に雇用している添乗員はほとんど存在しないのです。

 

この日本には、添乗員養成&派遣会社が存在し、色んな旅行会社のツアーにそこから派遣されているのです。A社のツアーに添乗していた添乗員が、翌日B社のツアーに添乗していることはよくあることです。実際、私は5~6社のツアーに派遣され、添乗していました。

 

その5~6社の中に、あの「てるみくらぶ」が存在したのです‥‥。

 

 

 

<目次>

 

てるみくらぶってどんな会社?

f:id:tuberculin:20190611001408j:plain

まずは、旅行会社てるみくらぶについてご紹介していきましょう。

 

てるみくらぶとは、1998年に設立された格安旅行会社です。東京に本社があり、札幌、名古屋、大阪、福岡に支店を設けていました。社長には山田千賀子氏が就任していました。

 

この会社の集客の特徴としては、主にインターネットからの申し込みに力を入れており、その分旅行代金を安く設定していました。その一方で、大々的な新聞広告を載せており、その格安さをアピールしていました。

 

f:id:tuberculin:20190611002255j:plain

格安で海外旅行に行けるとあって、主に若年層に人気の旅行会社だったようです。

 

 

てるみくらぶ事件の発生

f:id:tuberculin:20190611002635j:plain

出典:https://media-groove.com/terumiclub-higaisyanokai/

 

しかし、実際の経営は火の車らしく、航空会社やホテルへの支払いが滞っていたようなのです。そして、支払期限になっても支払いが完了しなかったため、各関係機関はてるみくらぶからの手配を取り消しました(おそらく、それが2017年の3月23日の話)。

 

その後、旅行客が現地に行って飛行機やホテルの予約が消されているのが発覚したのが翌24日~になってからでした。

 

3月27日、てるみくらぶは破産しました。すでに旅行中のツアー客に対しては『ごめんけど自力で帰って来てね(∩´∀`)』と通告。

 

どうやら2014年ごろから融資を受ける銀行に対して粉飾決算書(赤字だけど黒字と嘘ついて書いた決算書。TBSドラマ半沢直樹でも出てきた言葉)を提出し、銀行をだまして融資を受けていた事実があったようです。その結果、山田千賀子元社長ら幹部が詐欺罪で逮捕されました。

 

てるみくらぶのマズいところは、破産直前の時期に『旅行代金割引!(すぐにお金全額入金してくれた人のみ)』と謳っていたところです。最後の最後までお金を回収(返せなくなる可能性があるのを分かっていて)しようとしていたのが、被害者数を増大させる要因にもなりました。

 

 

事件発生時の様子

f:id:tuberculin:20190611004143j:plain

出典:http://blog.livedoor.jp/

私は、不運なことに2017年3月23日(営業停止前日)出発のインドゴールデンルート5日間に添乗員として出発してしまいました。上の写真はそのツアーの広告です。

 

元社長が会見で『海外にもう出発しちゃった人は自力で帰ってきてね(^^♪』と言っちゃったので、ネット上では"てるみくらぶ帰国難易度ランキングww"みたいなスレッドが立ちました。

VIPPERな俺 : てるみくらぶ帰国難易度ランキグンwwwwwwwwwww

 

7 名前:名無しさん@おーぷん[] 投稿日:2018/11/05(月)21:52:58 id:BvG
3位 『世界遺産』8箇所を巡る!インド・ゴールデンルート5日間

 

私が添乗したツアーが帰宅難易度ランキング3位に選ばれました!!やったね(∩´∀`)∩。

 

 

現在の海外旅行のツアーは、添乗員なし(フリープラン型)が増えてきており、海外添乗員の養成の場が少なくなっている現状がありました。ですから、添乗員付きの海外ツアーを出しまくっていたてるみくらぶは、当時の添乗員業界からすると救世主のような存在でした。

 

f:id:tuberculin:20190611015149j:plain

 

その一方で、その旅行代金の安さに『この料金で添乗員の給料払えるの?(笑)』という空気も確かにありました。ってか5日間でインドまで行って燃油サーチャージ込で旅行代金5万円って安すぎて気持ち悪いですからね。

 

しかしながら、"まさか旅行会社(しかもそこそこ名が知れた会社)が潰れるわけがない‥"という空気もあり、てるみくらぶのツアーに添乗させられていたのです。私自身、破産の前までに2回、てるみくらぶのツアーに添乗していました。

 

 

 

私は、てるみくらぶの社長に会ったことはありません。そもそも、てるみくらぶの支店にも足を運んだことがありません。添乗員が支店に打ち合わせに行くと、交通費が発生します。徹底的なコストカットをしていたてるみくらぶは、添乗員の交通費すら払いたくなかったようで、書類一式を私が所属する添乗員派遣会社に送付するだけで済ませていたのです。

 

f:id:tuberculin:20210308233302j:plain

 

打ち合わせの際、普通の旅行会社の場合だと(特に海外ツアーならば)ツアー担当者と直接会って疑問点などを聞きに行きます。遠方で直接会えない場合も電話で疑問点や確認事項を担当者と話します。

 

ところが、当時のてるみくらぶの社員は1人当たりの仕事量が過重だったらしく、添乗員の個々の打ち合わせに対応するような余裕が無かったようです。(だから私はてるみくらぶの社員さん達もある意味被害者だと思う)。

 

そのため、派遣会社内での暗黙の了解として『てるみくらぶの担当者との打ち合わせはなるべく控えるように!』『よっぽどの事が無い限りはてるみくらぶに電話するな!』と言われていました。担当者が誰なのかさえ分からない状態です。

 

つまり、てるみくらぶ側から書類をポンと送付されるだけであり、疑問点や確認事項も曖昧な状態で、ツアーに添乗していたのです。曖昧な部分は添乗員の力量でカバーせよ!ってことです。

 

 

そんな状態で内心『かなりブラックな企業なんだろうな‥』と思いながらも、まさか破産寸前とはつゆ知らず。私はお客様10名様と営業停止前日の2017年3月23日、インドへ向けて日本を出発したのです。

 

 

事件発覚

f:id:tuberculin:20190611011128j:plain

出典:https://www.travelvoice.jp/

 

23日は、インドへ移動するだけの行程であり、夜遅くホテルへ入りました。翌24日も普通にインド国内の観光を済ませ、ホテルへチェックインしました。ここまで特に行程上問題は見当たりませんでした。

 

24日の夜、ホテルチェックイン後wifiが繋がったのでLINEをチェックすると、知り合いの添乗員から『てるみくらぶ破産したけど、ホテルとか予約大丈夫?』とメッセージが入っていました。

 

寝耳に水というか晴天の霹靂とは、こういうことを言うのです。とりあえずYahoo!ニュースを調べると"てるみくらぶ営業停止"とかヤバい文言が書いていました。会社の破産は"よっぽどの事"だと思い、初めててるみくらぶの営業所へ国際電話をかけましたが、もちろん繋がらず‥。

 

 

不幸中の幸いと言っていいのか、お客様はガラケーしか持っていないようなご年配の方ばかりでしたので、お客様に破産は気づかれなかったようです。

実はこの時、友達同士でご参加されていた50代の女性が日本にいるご主人から『てるみくらぶ破産したけど大丈夫か?』と連絡があったらしく、破産したことをご存知でした。でも、この方は"ほかのお客に言ったらパニックになる"と思い、日本に帰着するまで黙っていたようです。何という精神力(;^ω^)

 

 

f:id:tuberculin:20190611015409p:plain

 

その後、自分の所属している添乗員の会社から連絡があり、少なくとも私のツアーに関してはホテルや飛行機の予約が消えていないらしいという情報を入手。

 

また添乗中の日当についても『恐らく、てるみくらぶから添乗員の賃金が派遣会社に支払われることは無いだろうけど、ちゃんと派遣会社の方で今回のツアーの日当は負担するわ!』との文言が。いや、私としては別に日当はどうでもいいんですわ、ちゃんと日本に帰国できるかどうかが大事なんですわ(*'ω'*)

 

 

その後は、(お客様の前では)何事も無かったように、タージマハルを見たりして、普通に行程を消化していきました。そしてお客様の見てない裏側では同行していたインドのガイド(日本語話せる)に『会社が倒産したよ~~~あぁアぁぁぁぁアアァ嗚呼あ、どうするよ!!どうしよう!!!』と喚いていました。

 

私のツアーでは最後までお客様に破産の事実はバレませんでしたが、帰国後聞いたところによると、他のツアーでは破産の事実を知ったお客様たち添乗員に詰め寄るケースもあったようです。その時、私の知り合いの添乗員さんは『何を慌てているのですか!私が付いているじゃないですか!!』と逆にお客様を圧倒したりしたようです(*'ω'*)

 

 

f:id:tuberculin:20210309000842p:plain

私の方はというと、何とか無事に帰着日を迎え、インドの空港に到着することが出来ました。そして、帰りの搭乗券が全員分発券された(つまり無事帰国できる)ことを確認した上で、初めてお客様へてるみくらぶが破産したことを伝えたのです。先程の1人を除き、自分が発表するまでお客様は破産をご存知ありませんでした。お客様一同『えぇぇぇぇぇ!!』って、そりゃそうです。

 

 

まあ無事に日本へ帰ってこれましたが、帰りの搭乗券が発券されるまでの旅行中の私の心労は、ハンパなかったことでしょう。最悪、インドでストリートツベルクリンとして生きていくことも考えました。

 

別れ際、今後の私を心配するお客様に向かって『大丈夫です!私は今後もこの地球のどこかで生きていきます!』と、ちょっと感動チックで壮大なセリフを吐いちゃいました。てるみくらぶには派遣されているだけなので、私自身帰国できれば別に問題は無かったんですけどね(*'ω'*)

 

 

 

ちなみに、お客様へは『日本の空港に着いたとき、マスコミが取り囲む可能性もあるので、てるみくらぶのタグは外しておいてください』と忠告。私もマスコミに対し『お話しすることはありません』『その件に関しては会社に一任しております』みたいなセリフを考えていたのですが、日本に帰着してみると誰1人マスコミさんはいませんでした。おい、マスコミさん、構ってくれよ(´・ω・`)

 

 

てるみくらぶ事件の教訓

やっぱり『安かろう悪かろう』ですわ。消費者はすぐに値段の安さを求めますが、安さには裏があることを認識するべきですね。サービスを受けるにはそれ相応のコストがかかるのです。

 

今回のてるみくらぶ事件では、旅行代金を払ったのに旅行に行けず返金も無い被害者の方が発生しました。その被害者の方に対しネット上では『自業自得だわww』との意見も散見されました。

 

確かに安さに飛びついてしまった消費者も悪いんですが、自業自得と言ってる人は、絶対にほかの詐欺事件に引っかからないのか疑問です。そういう感情で物を言い思考が停止している人が、いろんな詐欺に対し柔軟にかわせるんでしょうかね(*'▽')

 

 

 

終わりに‥

【追記】2019年6月13日

あまりに反響が多かったので、捕捉記事をアップしました。多かったご質問の答えをまとめています。

www.tuberculin.net

 

 

皆様もツアーにご参加の際は、その旅行会社が信頼できる会社が吟味したうえでお申し込みくださいね!

 

当ブログのtwitterアカウントはこちら♬

ツベルクリン@アウトローブロガー (@tuberculin0706) | Twitter

 

 

【スポンサーリンク】