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たとえ人が死んでもネット上で誹謗中傷してしまう人たち

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プロレスラーの木村花さんが自ら命を絶ったのは2020年5月23日のことでした。彼女は自殺したというより、「殺された」と言っても過言ではないかもしれません。不特定多数の人たちによる、誹謗中傷という言葉のナイフによって‥。

 

木村さんはフジテレビの番組「テラスハウス」に出演していました。様々な男女が1つのシェアハウスで共同生活する様子を放映していた番組です。その番組における木村さんの言動を不愉快に思ったネットユーザーが彼女のSNSに誹謗中傷を浴びせかけたのです。

 

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出典:https://toyokeizai.net/articles/-/352419


木村さんの番組内での言動においては、番組スタッフによる過度の"演出指導"があったのではないかと言われています。「番組の制作についてスタッフの指示、決定に従うこと」を強いた誓約書の存在があったようで、それも木村さんを縛り付けたのです。そのようなテレビ局側の"演出"を鵜呑みにした一部の視聴者が木村さんに対し『生意気だ』『マジで早く消えてくれ』などと誹謗中傷したのです。 

 

ネット上における誹謗中傷は、2000年前後の匿名掲示板「2ちゃんねる」から見受けられるようになり、現在ではインスタグラムtwitterなどのSNSにその場を移して現在でも問題になっています。木村花さんへの誹謗中傷ならびに彼女の死は、世間に多大な影響を与えました。

 

彼女が亡くなった3日後、高市早苗総務大臣(当時)は記者会見で『匿名で他人を誹謗中傷する行為は人として卑劣で許しがたい』と述べ、誹謗中傷の発信者の情報開示を容易にする法改正を進めるとしました。

SNS発信者特定容易に 高市総務相、誹謗中傷「許しがたい」 - 産経ニュース

 

 

そのような政府の動きと連動するように、亡くなった木村さんの母である木村響子さんが誹謗中傷した男性に対し損害賠償請求の訴えを起こし、裁判で損害賠償の請求が認められました。

木村花さんツイッター中傷、投稿者に129万円賠償命令:朝日新聞デジタル

 

コロナ禍で在宅時間が増え、人々がネットに触れる時間が増えたと考えられます。その世相の中で、木村花さんの事件を通して、ネット上の誹謗中傷に対する批判が高まり、ネットユーザーの規範意識が高まったかに思われました。

 

 

しかし、それでもネット上で誹謗中傷をしてしまう人は後を絶ちません。最近では、東京五輪に出場した選手に対する誹謗中傷が大きな問題になっています。

卓球金・水谷隼に「嫌われてんだよ」「ゴミクズ」 悪質な誹謗中傷DMの中身公開「全てスクショ」(J-CASTニュース) - Yahoo!ニュース

村上、誹謗中傷の苦しみ明かす〔五輪・体操〕:時事ドットコム

 

 

木村さんの事件があったにもかかわらず、ネット上での誹謗中傷が止まないのはなぜでしょう?この記事では、『たとえ人が死んでもネット上で誹謗中傷してしまう人たち』と題して、誹謗中傷をしてしまう人々の正体やその背景を考えていきます。

 

 

<目次>

 

 

 

誹謗中傷してしまう理由

 

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『なぜ誹謗中傷してしまうのか?』‥‥この疑問を考えるにあたって注目すべき調査があります。2020年の5月にBIGLOBEが、過去に誹謗中傷を行ったことがある人に対してその理由を問うた調査が存在します。以下のグラフはその結果です。

 

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出典:2020調査「withコロナ時代のストレスに関する調査」ビッグローブ調べ

 

誹謗中傷をする理由として、まずその性格が「特定の相手を攻撃する」ものと、「不特定の相手を攻撃する」ものに分かれるかと思います。「嫌いだから」「嫉妬しているから」「報復」は特定の相手を対象とし、「ストレス」「かまってほしい」「暇だから」「面白いから」は不特定の相手を対象(誰でもいい)していると考えられます。

 

ネット上において誹謗中傷コメントが多数寄せられた状態を「炎上」と呼んでいます。炎上が起こる過程は、まず特定の相手を攻撃対象とする人々が火種となる攻撃を始め、それがSNSなどによって拡散されていくと、今度は不特定の相手を攻撃する層にまで飛び火し、炎上がさらに大きくなると考えられます。

 

 

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誹謗中傷が発生する理由について、その理由を探るヒントとなる調査が他にもあります。日本財団が2020年6月に実施した『18歳意識調査第28回テーマ:SNSについて』という調査です。SNSの浸透率が高いであろう18歳に対して行われた調査の中で、SNS上の誹謗中傷に関する項目がありました。

 

「国内外でリアリティーショーに出演した人がSNSでの誹謗中傷を苦にして自殺する事件が起きています。出演者が誹謗中傷を受けるのは何が原因だと思いますか?」という質問に対する答えです。おそらく、木村花さんの事件などを念頭に置いての質問かと思われます。

 

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出典:日本財団「18歳意識調査」第28回テーマ:SNSについて | 日本財団

 

調査では「SNSの匿名性」をあげる回答者が63.3%いました。誹謗中傷の発信者がどこの誰なのか分からない、すなわち自分の身の安全性が確保されているからこそ、言葉のナイフがさらに鋭さを増す、と考えている若者が多いようです。

 

また「間違った正義感」という回答も多く挙げられました。誹謗中傷をする側には、社会的規範や倫理観を逸脱した者に対する制裁を科すために誹謗中傷コメントを書き込む人々もいます。自らの正義に則って行動しているのです。

 

具体例を出します。2020年5月、東京在住の20代の女性が山梨県に帰省した際、コロナウイルスの陽性が確認された後だったにも関わらず、高速バスに乗車し東京へ帰省したことが問題となりました。

帰京は陽性判明後 山梨帰省の20代女性 - 産経ニュース

 

まだ、コロナウイルスが蔓延しだしたばかりの時期と言うこともあり、ネット上では非常に激しく叩かれました。もちろん、彼女の行動には問題はあるのですが、すぐ後に女性への個人攻撃がネット上で始まりました。彼女のものとされる顔写真やSNSアカウントがネット上で晒されたりしました。これらの行動も、『コロナウイルスをバラまいた、許せない』といった正義感から行われているものと考えられます。

 

 

 

 

 

実名制にすると誹謗中傷は減るのか?

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先ほどの日本財団のアンケート結果でも分かるように、誹謗中傷を受けてしまう要因として「発信者の匿名性」にあるという意見が多く寄せられいました。これと呼応するように、『誹謗中傷を減らすためにインターネットの実名制を導入すべし』といった意見があります。実名制にすれば誹謗中傷は減るであろうという考え方です。

 

では、実名制にすれば本当に誹謗中傷は減るのでしょうか?実は、お隣韓国では一時期、ネットユーザーに対し住民登録番号の入力を義務付けました。韓国では日本以上にネット社会における誹謗中傷が激しい国と言えます。とりわけ、アイドルに対するバッシングが大きくなりがちで、韓国人アイドルの誹謗中傷を苦にした自殺が相次いでいます。

KARA元メンバー、ク・ハラさん(28)自殺か?「アイドルは完璧でなければいけない」 韓国芸能界の“闇”とは

CNN.co.jp : 韓国の人気アイドルのソルリさん、自宅で死亡 自殺の可能性も

 

 

 

では、インターネットの実名制は効果があったでしょうか?

 

"韓国におけるインターネット実名制の効果について実証分析した論文によると、実名制の導入によって通常の書き込み数は大幅に減少した一方で、誹謗中傷的な書き込みの減少効果は限定的であった。たとえば、掲示物数には統計的に有意な影響がなかった。同様に、大韓民国放送通信委員会の発表でも、悪意ある書き込みの割合は13.9%から13%になったに留まったことが分かっている。結局、韓国のインターネット実名制は、表現の自由の観点から違憲であるという判決を受け、廃止された。"

出典:大規模調査でわかった、ネットに「極論」ばかり出回る本当の理由(山口 真一) | 現代ビジネス | 講談社(5/6)

 

全体の書き込み数の絶対数が減少したので、誹謗中傷コメントも減少したのですが、その割合はほとんど変わらなかったのです。ネットを実名制にしても誹謗中傷対策に絶対的な効果があるとは言えなかったのです。

 

それはなぜでしょうか。ネットメディア論に詳しい山口真一氏は自身の著書で以下のように主張しています。

"なぜインターネット実名制は効果が無かったのであろうか。それには、炎上に書き込む動機が関係している。結局、批判や誹謗中傷を書き込んでいる人の多くは正義感から書き込んでいるため、仮に実名制になったとしても、それをもって書き込みをやめようとはしないのである"

出典:『炎上とクチコミの経済学』山口真一著

 

 

ある種の正義感を持って誹謗中傷を書き込むユーザーのほとんどは、やましいことをしているといった意識や後ろめたい気持ちなど持っていないのです。なぜなら、自分の行為は正義感に基づくものであり、自分の意見は絶対に正しい(そして相手が間違っている)と考えて書き込んでいるからです。そのように信じるユーザーにとって、実名制は誹謗中傷をとどまらせる要因にはなりにくいのです。

 

また、韓国でネット実名制に対し違憲(憲法に違反している)判決が出されたように、ネット実名制は日本においても、日本国憲法第21条で保障されている「表現の自由」に引っかかる可能性が指摘されています。

 

日本では、マイナンバー制度が実施されているので、その気になればマイナンバーを使用しネット利用を登録制にすることは可能だと考えられます。しかし、表現の自由との兼ね合いから実名制導入には大きなハードルがあると言えます。

 

 

 

 

 

なぜネットユーザーの正義感は暴走してしまうのか?

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例えSNSを始めとするインターネットの利用を実名制にしても、正義感を持ってコメントを書き込んでいるユーザに対しては、あまり効果をなさないのではないか、と前章で考えました。正義感は人間を突き動かす(時には攻撃的な言動を取らせる)のに十分すぎるモチベーションとなりうるのです。

 

ただ、例えば芸能人が不倫や浮気を起こしてネットユーザーから個人攻撃に晒される場合がありますが、身内や関係者であるならともかく、大多数のネットユーザにとっては当事者と直接的な関係は無いはずです。そんな相手に対し、誹謗中傷コメントを書き込む(ユーザーによっては複数回も)エネルギーはどこからくるのでしょうか?

 

このエネルギーの源は、正義の制裁を下すことによって得られる"快感"と考えられています。脳科学者の中野信子氏は以下のように解説しています。

"人の脳は、裏切り者や社会のルールから外れた人といった、わかりやすい攻撃対象を見つけ、罰することに快感を覚えるようにできています。他人に「正義の制裁」を加えると、脳の快楽中枢が刺激され、快楽物質であるドーパミンが放出されます。この快楽にはまってしまうと簡単には抜け出せなくなってしまい、罰する対象を常に探し求め、決して人を許せないようになるのです。"

出典:他人を許せない正義中毒という現代人を蝕む病 | リーダーシップ・教養・資格・スキル | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース

 

こう述べたうえで中野氏は、"正義の快楽"から抜け出せなくなってしまった状態のことを「正義中毒」と呼んでいます。自らの正義感を振りかざし、他人の過ちを糾弾することは脳の仕組み上、快感を呼んでしまうのです。

 

そして、近年のSNSではネットユーザのコメントに対し「評価ボタン」とか「イイね」など他ユーザーからの評価がもらえるようになっています。twitterでは、リツイートボタンが設置されており、ネットユーザによって評価されたコメントが拡散していく仕組みも備わっています。特定の企業や人物を糾弾するコメントに「評価」や「イイね」が付くと、コメントしたユーザーは誹謗中傷を後押しされたと思い、さらにコメントの攻撃性が高まっていくのです。

 

正義感を持って誹謗中傷することで得られる快感に、SNSのイイね等他者から評価されたいという承認欲求がプラスされると、その行動は歯止めが効かなくなってしまう恐れがあるのです。正義感が暴走してしまう理由はこの点にあるのです。

 

 

 

 

「特定班」なる人々

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正義感が暴走してしまう人の中には、ネット上で非難されている人物の個人情報をネット上から探し出すことに躍起になる人たちも現れます。「特定班」とネット上で呼ばれるような人たちです。

 

"特定班と呼ばれる、SNSなどで発信される情報をもとに個人を特定する人物がいます。特定班は、SNSに掲載されている僅かな個人情報や写真をもとに、その人物の住所や本名、さらには勤務先や学校まであっという間に特定してしまいます。"

出典:その社員のSNS投稿、大丈夫ですか? 特定班と呼ばれる人々と炎上のメカニズム

 

中傷の対象は著名人だけでなく、普通の一般人もその対象となりうるのです。SNSのアカウントが特定されると、ネット上で拡散されアカウントへの誹謗中傷のコメントが多数書き込まれてしまいます。さらに、勤務先や学校が流布されると、非難の声はそれら所属先にまで広がります。 

 

 

 

いわゆる特定班として、ネット上に存在するユーザーにインタビューした記事が載っていました。

"「報酬もないし完全に趣味です。自分が投下したネタで盛り上がっているのを見るのが快楽なんです」。40代主婦の夏樹さん(仮名)は、「胸糞(むなくそ)の悪いいじめ事件」専門で特定班をしている。「加害生徒が法律で裁かれないなら私が裁いてやろうと思って」"

出典:唐田えりかも標的! “特定班”の主婦を直撃取材 (週刊女性PRIME) - LINE NEWS

 

 

この女性は、おもにいじめ事件が発生すると、その加害者情報を調べネット上に情報をアップすることに力を注いでいるようです。さらに記事ではこう続きます。

 

 

"「自分が捕まってもかまいませんよ。罰金払ってすぐ出てこれるし、何より被害生徒の近くにいたのは確かだから加害者には変わりないんじゃないですか?」と自分の行いが正義だと信じて疑わない様子の夏樹さん。現場にまで行くという行動力や執念には夏樹さんの過去にいじめの被害にあうなどの出来事があったのだろうか。「いえ、私も私の子どももありがたいことに被害にはあっていません。ただ、許せないというのと暇つぶし。本当に趣味ですね。趣味でいじめ加害生徒に制裁をあたえています(笑)」と、あっけらかんと答える。"

出典:唐田えりかも標的! “特定班”の主婦を直撃取材 (週刊女性PRIME) - LINE NEWS

 

 

女性本人は正義感でやっていると思い込んでいるようですけど、私から言わせれば単純に制裁をしてやったという快感を得るために行動しているように見えます(自分でもそう言っているし)。

 

もちろん、この文章の出典が女性週刊誌なので信ぴょう性には疑問符は付くんですけど、ネット上では特定班と呼ばれる人たちが活動していることは確かです。例えば、直近の事件で言えば、2021年3月に発生した北海道旭川市で起こった中2女子いじめ自殺凍死事件では、ネット上で加害者探しが行われました。

 

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そして、それら特定班が集めた情報を集めて1つの記事にする「トレンドブロガー」の存在が、誹謗中傷の火をさらに燃やすことに繋がっています。ネット上探せばいくらでもサイトは見つかりますし、ここにURLをアップしてしまうとまた情報を拡散させてしまうのでサイトの引用は控えますが、そのようなトレンドブログもネットユーザーの誹謗中傷を加速させてしまう要因になりうるのです。

 

というのも、トレンドブログは広告費を稼ぐことを第一主義としているので、アクセス数を稼ぐためにより扇動的な記事タイトルや内容になりがちです。トレンドブロガーは、正義感というよりもう広告費稼ぎをモチベーションとして情報を拡散させているのです。

 

 

 

 

誹謗中傷とデマ

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匿名であることを良いことに、正義感をむき出しにして、制裁を加えるネットユーザーたち。では、その正義感を持って制裁を加える対象が間違っていることはないのでしょうか?ネットにおける誹謗中傷で怖いのは、デマや誤情報によって全く関係ない人がネットユーザの攻撃に晒される危険性があるという点です。

 

2019年8月に茨城県の常盤自動車道で、後ろからあおり運転をした男性が相手の車の運転手を殴って怪我をさせたという事件が発生しました。

常磐道などであおり運転 被告に保護観察付き猶予刑判決:朝日新聞デジタル

 

この事件において、加害者の男性以上に話題を集めたのは、加害者と同乗していた女性です。加害者が殴っている様子を折りたたみ式携帯(通称ガラケー)で撮影していたのです。ネット上では、"ガラケー女"と呼ばれ、その異様な立ち振る舞いに注目が集まりました。

 

ネット上では、このガラケー女が誰なのか特定しようとする動きが起こり、その結果東京都内の30代の女性がガラケー女であると"特定"されました。そして、その女性の個人情報やSNSのアカウントがガラケー女のものであるとして拡散されていったのです。その女性に対する誹謗中傷が集まったのは言うまでもありません。

 

ところが、その後、この30代女性は全くの別人であることが判明しました。間違った情報が特定班によって拡散されてしまったのです。

「ガラケー女」に間違われた女性に殺到した着信300件とDM1000件超 名前と顔写真を晒され「犯人だ」 (2ページ目) | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)

 

そして、間違った情報を基にしたトレンドブログの記事もアップされてしまいました。

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現在この記事は削除されているようです。

数々上がったトレンドブログの中には、30代女性をガラケー女と断定する記事もあったようです。

 

"とあるブログは、twitter上の情報を引用しながらこう「推測」している。「あおり運転時の写真とインスタを見比べてみると、口元なども似ているので、本人と見て間違いなさそうですね。」"

出典:あおり運転事件「ガラケー女」のデマ被害者が法的措置 リツイート”だけ”も対象に

 

口元だけで本人だと決めつけられるのもアレですが、一旦情報がネット上に流布してしまうとそれを完全に消し去るのは困難です。彼女は、誤った情報をfacebookに流した元市議の男性を訴え裁判を起こしました。

「ガラケー女」デマ拡散、元市議に33万円の賠償命令:朝日新聞デジタル

 

もっとも、話はこれで終わらず、ガラケー女と間違えられた30代女性のSNSには、『謝ったんだから許してやれよ』『金の亡者』といった新しい誹謗中傷が寄せらているようです。ネット上における炎上はまた新しい炎上を生んでしまうのです。

 

 

 

 

誹謗中傷するネットユーザーはどのくらいいるのか?

 

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ひとたびネット上で"炎上"してしまうと、個人情報が晒され、誹謗中傷コメントが相次ぐようになります。攻撃の対象になってしまうと、全世界が敵のような感覚に襲われてしまうことでしょう。では、誹謗中傷を行うネットユーザは一体どのくらい存在するのでしょうか?叩いている人の声はネット全体の声を代表しているものなのでしょうか?

 

先ほどから当記事において何度か論文を引用している山口真一氏が実施した調査(2014年に行った、約2万人を対象とした調査分析。慶應義塾大学の田中辰雄氏と共に行った。)があります。

 

この調査では、ネットユーザーのうちどのくらい炎上に関わったユーザーがいるのか調査しました。

 

 

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出典:『炎上とクチコミの経済学』山口真一著より引用 

 

この調査から炎上の実態が浮かび上がってきます。そもそも、ネットにおける「炎上」自体を知らない人が7.9%存在しています。また、炎上を見たことが無い人は75.4%と多数派を占めています。実際にネットで炎上している場面でコメントを書き込んだことがある人は1.1%、1年以内に限るとわずか0.5%しかいません。

 

この調査結果を考えると、誹謗中傷を書き込むユーザーの意見はかなりの少数派の意見と言えます。大多数のネットユーザーは炎上に参加していないし、4人に3人以上は炎上が発生していることを知らないのです。もはや、炎上の傍観者ですらないのです。

 

しかしながら、この0.5%のユーザーの意見が社会全体の意見の縮図である、とも言えなくもないかもしれません。では、過激なコメントを発する少数派のユーザーの意見は世論を反映しているのかどうか、次章で検証していきます。

 

 

 

 

 

過激なネットユーザーの声は社会の意見を反映しているのか?

 

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誹謗中傷を書き込むネットユーザの動機は、「面白いから」「好奇心で」といったような愉快犯よりも、「許せない」というような正義感を持って書き込んでいるユーザーの方が多いようです。では、ネットユーザーが抱いている正義感は、実際の社会の意見と一致するのでしょうか?

 

 

先ほど紹介した山口真一氏が実施した調査があります。2018年、20代~60代の男女3000名に対し、憲法改正に対する意識調査を行いました。憲法改正に対しての意見の割合と、憲法改正について実際にSNSに書き込んだ回数を分析しています。

 

左のグラフ→憲法改正に対する意見

右のグラフ→憲法改正についてSNS上に自分の意見を書き込んだ回数

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出典:ウェビナーレポート:第13回『コロナで加速する誹謗中傷~ネット炎上の実態と対処法~』 - シエンプレ デジタル・クライシス総合研究所

 

アンケートをした3000名の中には、普段SNSをあまり使わない人もいれば、日常的にSNSを利用している人も存在していると考えられます。SNSに意見を書き込んだ回数には、1人の人物が複数回書き込んでいるケースもあると思われます。

 

まず憲法改正に関する意見を集約してみると

 

  • 「絶対賛成」「賛成」「どちらかといえば賛成」→33%
  • 「どちらとも言えない」→35%
  • 「絶対反対」「反対」「どちらかというと反対」→31%

 

これは、日本人の世論とだいたい一致していると思います。「Yes」「No」の2択の問題であっても、結構な数の「どちらともいえない」勢が世間には存在しているのです。

 

ところが、SNS上に書き込まれた意見の総数を見ると「どちらとも言えない」が198回であるのに対し、「絶対賛成」が304回、「絶対反対」が224回となっています。賛成または反対の両極端な意見が、より多くSNSに書き込まれています。

 

というのも、「どちらとも言えない」という曖昧な意見の持ち主が、その曖昧な意見を積極的に書き込むとは考えにくいですよね。世論調査で多数派の「どちらとも言えない」勢が、ネット上において積極的に前に出ることは両極端の意見の勢力と比べて、それほど多くは無いのではないでしょうか?

 

メディアが行っている世論調査は、受動的に意見を求められている状況下で答えるので、「どちらとも言えない」勢が多くなりがちです。一方で、SNSにおけるコメントの多くは能動的に書かれたものであり、その結果、積極的に自分の意見を発信したいと思うネットユーザーの意見ばかりがネット上に上がってくるようになります。

 

すなわち、ネット上には過激な意見ばかりが存在していることになり、実際の世論とはかけ離れているケースが見受けられると考えられるのです。

 

 

 

ネットで誹謗中傷する人々はどんな人たちか?

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先ほどの調査で炎上に参加したことがある人の割合(過去1年以内)はわずか0.5%の人々でした。では、この0.5%のユーザーはどんな人達なのでしょう?

 

どのような人達が炎上に加わっているのか、山口真一氏の先行研究が存在します。炎上参加者の肩書きを調査した結果が下のグラフです。

 

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出典:ネット炎上参加者「実は高年収」という仰天実態 | インターネット | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース

 

何となくイメージとして誹謗中傷コメントは無職やフリーター、専業主婦&主夫のような時間にゆとりのある人たちが率先して書き込んでいるように思われがちです。社会に対する不満やうっぷんを晴らすために、攻撃に参加しているようなイメージがあります。

 

ただ、実態は会社員+自営業で70%に達します。そして、最も割合が多いの(31%)は係長以上のある程度の役職についている人々という結果が出ています。

 

続いて、炎上に参加した人達と炎上に参加していない人達の平均年収を比べた調査が結果が以下のグラフです。

 

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出典:ネット炎上参加者「実は高年収」という仰天実態 | インターネット | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース

 

調査結果によると、炎上に参加した人たちの平均年収の方がそうでない人たちと比べ80万円も高いという結果が出ています。もちろん、炎上に参加している人達の方が母数が少ないので、その点も考慮しなければなりませんが、「収入が低い人たちがその憂さ晴らしに炎上に参加している」といった一般的なイメージとはかけ離れた実情が見えてきます。

 

これらの結果を考えると、ネット上の炎上に参加し誹謗中傷コメントを書き込む動機として、無職やフリーターなどの低収入者が世間への憂さ晴らしのために書き込んでいるというより、ある程度の収入や地位にある人たちが何らかの理由を持って書き込む方が多いのではないか、という状況が見えてきます。

 

もちろん、役職者にも役職者なりのストレスがあって、その憂さ晴らしのために書きこんでいる、といった場合もあるでしょう。役職者が憂さ晴らしとは別の要因で書き込むケースについて、山口氏はこのように分析しています。

 

"このようなクラス(係長以上)の人たちは、政治、ジェンダーなど様々な問題に対してある程度知識が豊富であり、それぞれの問題に対して確固たる信念を持っている場合が多い。そして、情報への感度も高い。実際、ラジオ聴取時間が長いという特徴も出ていた。そういう人が、自分と考え方の違う人に対して批判を浴びせているーーそれが炎上の構造といえる。"

出典:『炎上とクチコミの経済学』山口真一著

 

 

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役職者は基本的に大卒(大学院卒)の高学歴な人たちが多いと考えられます。特徴として、教養や知識は豊富で、社会の諸問題をある程度認識しており、またそれに対する自身の考えもしっかり持っている人間像が浮かんできます。

 

自己評価は高く、自分の意見こそが正しく高貴なものと考え、そう思っているからこそ他者の意見を邪見に扱ってしまうのでしょう。そのような人たちは、知識は豊富なのでしょうけど、違う意見を許容する寛容性は著しく低い人たちと言わざるを得ません。

 

イメージとしては、飲食店などで若い店員さんにふんぞり返ってクレームを言ってるようないい年した大人が想像できるでしょうか。そういう人達は、自身がクレーマーなんてこれっぽちも思っておらず、『この店のために言ってるんだ!』みたいな説教じみた言葉で相手を威圧してくるのです。恐らく皆様も一度はお目にしたことであろうクレーマーが、そのまま姿を隠してネット上に潜んでいるのでしょう。

 

 

 

 

「批判」と「誹謗中傷」の違いって?

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誹謗中傷コメントを書き込んでいるユーザーの中には『これは誹謗中傷ではない。"批判"である(だから許される)』と思っている人もいるようです。

 

私個人の意見ですが「批判」と「誹謗中傷」の違いを次のように考えています

 

  • もし目の前に相手がいる状態でそのコメントや発言を発することが出来るか?
  • 行動や発言そのものの問題点を指摘するもの。人格を否定するものではないこと

 

ネット上で相手が見えない状況下で発している言葉を、相手が目の前にいる状態でも発することが出来るのかどうか。もし、相手が目の前にいれば委縮して発言できない状況になるのであればそれはもしかすると誹謗中傷に値するのかもしれません。

 

また、『このケースであなたが〇〇した行動は間違っていると思う』などと、反省すべき点のみを指摘するのであれば、それは批判の範囲内と言えるでしょう。それを超えて相手の人格否定に走ればそれは誹謗中傷のラインを超えてしまったものと考えます。

 

 

2019年、北海道札幌市において2歳の女の子に十分な食事を与えず死亡させたとして、母親の池田莉菜容疑者と交際相手の藤原一弥容疑者が逮捕された事件がありました。

母親の懲役9年確定へ 札幌2歳児衰弱死事件 最高裁が上告棄却|NNNニュース

 

ネットユーザによって母親の池田莉菜容疑者のものと思われるインスタグラムが発見されました。現在、彼女のインスタには約4000件にも及ぶコメントが書き込まれています。その一部を抜粋すると、

 

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アカウント名は塗りつぶしています。

 

このように誹謗中傷のコメントが多数書き込まれています。確かに、彼女は自分の子供を衰弱死させてしまったので、保護者としてその死を重く受け止める必要があると思います。彼女の罪は決して拭い去れるものではありません。けれども、批判されるべきなのはその行動(子供の育児を放棄した)であり、『死ねブス』などと彼女の人格や容姿を中傷する行為はいかがなものでしょうか?

 

犯罪者だから何をしても許されるわけではありません(何度も言いますが決して彼女を擁護しているわけではないですよ)。『犯罪者に対してならどんな誹謗中傷は許される』とか思っていると、ガラケー女の事件のように、デマに踊らされ間違った人物を犯人呼ばわりしてしまう恐れもありますよ。おそらく、ガラケー女に間違われた女性も人格を否定するような誹謗中傷コメントがたくさん舞い込んできたことでしょう。心情お察しします。

 

ただ、池田容疑者のインスタのコメント欄を見ていると、そのことにきちんと気付いているユーザーもいるようです。

 


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話はそれましたが、そもそも「批判」って言葉を簡単に使う人が多いですけど、批判とは自分の正義感を振りかざして相手を間違いを突くだけで終わる行為ではありませんからね。

 

批判という言葉は哲学用語でもあり、その意味として「人間の知識や思想・行為などについて,その意味内容の成立する基礎を把握することにより,その起源・妥当性・限界などを明らかにすること。」と出てきます(出典元は国語辞典の大辞林)。

 

哲学について詳しい金沢大学教授の仲正晶樹氏は、批判について以下のように自身の著書で述べています。

"物事を自分なりの直観だけでぼんやり見るのではなく、細かく切り分け、どういう内容があるのか反省的にきちんと把握していくことが含意されています。自分の思い込みではないかと疑ってみて、冷静に判断しないと「批判」ではありません。そういう反省や吟味の意味で、お互いの「意見」を検討し合うのが、「対話」や「論争」における「批判」なのです。"

出典:『ネット時代の反論術』仲正晶樹著(文春新書)38ページ

 

批判とは相手の意見を罵倒して潰すことではなく、お互いの意見を吟味し合い、その「限界点」を探し出す行為を指すと思うのです。「限界点」が高ければ高いほどその批判は良質なものと評価されるのでしょう。そのようなことを考えてネットユーザーが「批判」をしているかどうかと問われれば疑問符を付けざるを得ません。

 

 

 

 

 

『SNSを使わなければいい』という暴論

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誹謗中傷された側への意見、というかアドバイス(?)の1つに、『誹謗中傷が怖いならSNSを使わなければいい』という考え方があります。フリーライターの中川淳一郎氏は、自身の著書で『ネット上では有意義な議論などは難しいのだから、発信などしなければいい』と述べています(2009年『ウェブはバカと暇人のもの』光文社)。

 

2009年時点では、そこまでSNSが発達していませんでしたから、SNSを封印するという手段も取れたのかもしれません。しかしながら、現在ではtwitterインスタグラムなど新しいSNSが登場し、ここまで世間にSNSが浸透した令和の時代において、SNSを封印しろという主張はどうなんでしょう?

 

SNSはデメリットもありますが、もちろんメリットもあります。有益な情報を手軽に取得出来る、また自分の意見や主張を広く世間に発信できる、そんな利点があります。SNSを封印すると言うことは、表現の手段を失うことであり、SNSが浸透した世界では非常に大きな損失だと言えます。

 

『誹謗中傷するのも表現の自由の1つだ』と主張する意見と『誹謗中傷が怖ければSNSなど止めればいい』と中傷被害者の表現の自由を奪いとるような主張は矛盾してるのではないでしょか。

 

 

 

『誹謗中傷なんて気にするな』と言われても‥

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誹謗中傷を受けて悩んでいるとそれに対するアドバイスとして『そんなコメントなんか気にするなよ!』と言われることがあります。私も一昔前ならばそうアドバイスしたかもしれません。

 

ただ、誹謗中傷コメントを『見ないようにする』ということは、案外難しいことなのです。気にしないようにしようとすればするほど気になってしまうものです。

 

 

当ブログで先日、はてなブックマーク砲を受けた記事がありました。

 

www.tuberculin.net

 

掲載する前から『多少の批判は来るだろう』と予想をしていましたが、私の予想以上に拡散されていきました。はてなブックマークを630個も頂き、嬉しいと思う反面、恐怖心さえありました。

 

そして、かなりの数の悪評コメントが書き込まれました。正確に数えてはいないのですが、コメントの中身の内訳として感覚的には「評価5割:中立2割:批判3割」くらいかなと思います。 良記事と評価してくださった方も多かったのですが、目につくのは多数派の評価コメントよりも少数の悪評コメントなのです。

 

私の予想を超えてブックマーク数が増えていくのを見て、コメント欄を見るのが怖くなってしまいましたが、それと同時に『私の知らないところで批判がどんどん増えていくのではないか‥』と不安になり、その不安を解消するためにコメント欄を見てしまうのです。

 

 

不安を解消するためには誹謗中傷コメントを確認するしかない、そして確認してみてより傷ついてしまう‥まさに悪循環なのです。この悪循環が重なってしまうと、心は確実に蝕まれ、心身ともに疲弊していくのです。 

 

 

 

 

 

誹謗中傷されたらどう対応すれば良いのか?

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この章では、誹謗中傷を受けた場合、どのように対応すればいいのか考えていきます。 

 

①自分に非がある場合は謝罪する

詳細は伏せますが、私の知人が過去にネット上で炎上しています。犯罪行為とみなされかねない行動を自慢げにネットにアップしたのが原因でした(今もネット上に探せばその炎上についてのまとめサイトが出てくる)。顔写真やブログアカウント(現在は削除済)が掲示板に晒され、中傷コメントが相次いで書き込まれていました。それを知ってネットにおける炎上が非常に身近に感じられたものです。

 

誹謗中傷は絶対悪です。とはいえ、私の知人の場合、明らかに知人の行動には問題がありました。自分に非があると思う場合、早い段階で謝罪してしまいましょう。謝罪してしまうことで、攻撃者の攻撃名目を無くしてしまうのです。もちろん、謝罪するのはあくまで自分に非があると思う場合のみです。

 

 

②誹謗中傷を見たうえで気にしない

前章の文章と矛盾するのですが、誹謗中傷を受けた際にどれだけ気にせずスルー出来るかが自分の心身を守るうえで大切になってきます。誹謗中傷を受け始めた最初の段階では、思わず反論したくもなりますが、反論してしまうとさらに炎上が燃え上がる可能性があります。

 

誹謗中傷してくるような人のほとんどは、例えこちらが反論しても攻撃の手を緩めることはほとんどありません。なぜなら自分が正しいと確信しているからです。そのような相手と議論してもかみ合うはずがありません。ならば、最初かスルーしてしまうのが得策です。

 

中々高度な手法ではありますが、コメントを全て目にしたうえで『色んな考えがあるんだな』と"見たうえでスルー"出来ればいいですね。

 

 

③攻撃者は少数であると考える

この記事で検証してきたように、炎上に参加したことがあるネットユーザー(1年以内)はわずか0.5%に過ぎません。ただ、その0.5%のユーザーが大きく騒ぐのでまるでネット上全体から中傷されているように感じられます。

 

 

ネット上には少数の攻撃者と大多数の理解者がいることを常に認識しておきましょう。

 

 

④相談窓口へ相談する

過度な誹謗中傷で悩んでいて、無視していても炎上が止まない場合は、ネットトラブルの相談窓口へ相談してみるのも手です。以下、相談窓口などのリンクを貼っておきます。

 

とりあえず相談したい、話を聞いて欲しい

まもろうよ こころ|厚生労働省

 

アドバイスが欲しい

違法・有害情報相談センター

 

コメントを削除させたい、発信主を特定したい

ネットの誹謗中傷 | セーファーインターネット協会 Safer Internet Association(SIA)

 

警察に相談したい

警察庁 | サイバー犯罪対策

 

弁護士に相談したい(慰謝料などを請求したい)

法テラス 公式ホームページ

 

 

ガラケー女と間違われた被害者は、中傷コメントの発信者に損害賠償を請求する裁判を起こしました。その結果、その請求が認められました。しかしながら、一般人が裁判を起こすのは、弁護士費用など多大な費用と時間がかかり、なかなか難しいものがあります。

 

 

 

 

自分が攻撃側にならないためには‥

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ネットを利用している以上、自身が攻撃される側にもなりうるし、反対に攻撃する側になってしまう可能性だってあります。自分が攻撃側にならないようにするためにはどのようなことを心がければいいのでしょうか?

 

 

①正義は人の数だけ存在すると認識する

誹謗中傷してしまう人の多くは、自身の正義感を従って、自分の正義に反する人に対して誹謗中傷コメントを浴びせてしまいます。自分が正義だと思っている状態は、人間を最も攻撃的な動物にしてしまうのです。

 

ここでいう正義とは、ウルトラマンや水戸黄門的な社会全般的な正義ではなく、あくまで自分本位の正義感なのです。ですから、人間1人1人が持つ正義感はそれぞれ違うはずです。そのことをまずは認識せねばなりません。正義の反対は悪ではなく、また別の正義が存在しているのです。

 

 

②見ず知らず人の行動や意見なんて「どうでもいい」と思う

ちょっと誤解を生みそうな表現ではありますが、身内や親しい関係の人のことならともかく、見ず知らずの人の行動や意見なんてどうでもよくないですか?「どうでもいい」と思うことが出来れば、誹謗中傷コメントを書き込んでやろうという気力も沸いて来ないと思うんですけどね。

 

アンジャッシュの渡部健がいわゆる"多目的トイレ不倫"で芸能活動を自粛していますけど、彼に対するバッシングは相当のものがありました。もちろん、不倫自体は倫理上許されない行為であり、子供もいる父親としてあまりにも軽率だったと私は思います。と同時に、不倫は犯罪では無いし、各家庭の問題なので正直「どうでもいい」です。妻の佐々木希が離婚しないという判断を下した以上、周りがとやかく言う問題ではないと思うのです。

 

なので、例えば佐々木希に対して『頑張れ~』ってエールを送るのは良いとしても、渡部健(もしくは佐々木希)のSNSに中傷コメントを書き込むことは、褒められるべき行動ではありません。不倫浮気は犯罪ではないですけど、誹謗中傷は侮辱罪&名誉棄損罪と認められれば犯罪行為ですからね。

 

 

③コメントする前に時間を置く

見ず知らずの人や自分とは関係ない有名人に対する怒りは、時間が経てば落ち着くこともあるでしょう。面と向かって相手と喧嘩になってしまった場合は、売り言葉に買い言葉でつい罵倒してしまうこともあるかもしれませんが、SNSでは落ち着く時間は十分にあるはずです。『本当にこのコメントを書き込んでいいのか?』と自問自答するクセをつけましょう。

 

 

 

 

言葉を発信することは素晴らしいことだからこそ‥

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つい20~30年前までは、世間に自分の言葉を発信できるのは一部の著名人や作家だけでした。それが現在では、ネット環境下であれば、誰でも自分の意見を発信することができるようになりました。

 

しかし、言葉を世間に発信できる特権を全員が得たからと言っても、言葉を発信する責任を全員がきちんと認識しているかと問われれば、疑問符を付けざるを得ません。車の免許を持ってない人が公道を運転してはいけないように、言葉の重みを知らない人が無責任に世間全体に自分の言葉を発信してはいけないのです。

 

世間に言葉を発信する以上は、スタートラインはプロの作家たちと同じです。たとえ文章を書いてお金をもらっているわけではないとしても(ブログ等で収益を得ている人はなおさら)、自分の言葉に責任を持つべきです。

 

言葉は時に人を勇気づけたり笑わせたりする薬にもなるし、時として人を傷つけるナイフにもなるのです。表現の自由がネット上においても保証されているのですから、その自由を履き違えないようにしていきたいものです。

 

 

 

参考文献

・『ネット炎上の研究』田中辰雄・山口真一共著

・『炎上とクチコミの経済学』山口真一著

・『SNS暴力』毎日新聞社取材班編集

・『炎上する社会』吉野ヒロ子著

・『ネット時代の反論術』仲正晶樹著

 


ネット炎上の研究 誰があおり、どう対処するのか [ 田中 辰雄 ]
 

 

 
炎上とクチコミの経済学 [ 山口真一 ]

 


SNS暴力 なぜ人は匿名の刃をふるうのか【電子書籍】[ 毎日新聞取材班 ]
 

 


炎上する社会 企業広報、SNS公式アカウント運営者が知っておきたいネットリンチの構造 [ 吉野 ヒロ子 ]
 

 


【中古】ネット時代の反論術 /文藝春秋/仲正昌樹(新書)
 

 

 

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