【学校で教えてくれない社会科】は、社会科の教員免許を所有しているツベルクリンが、学校で教えてくれないような役立たない社会科の授業をしていくシリーズ記事です。18時間目の今回は「画期的な裁判の判例を紹介する授業」を扱っていきます。
前回の復習はこちら
社会科の公民の資料集や高校の現代社会及び政治経済の資料集なんかに、過去の裁判の判例が載っていたりします。そういうの読むと私は結構楽しめるのですが、いかんせん難しい表現だったりして、読むと眠くなります。
今回は、過去の画期的とも言える裁判の判例を解説付きでご紹介していきます。もし、読者の皆様の中で現在裁判の最中という方がいらっしゃったら必見です(*'ω'*)
構成としては、各判例ともに「事件の概要」「裁判の争点」「判例」「元教師(私のこと)による解説」という項目で授業していきます。なお、あくまで分かりやすさを優先していますので、細かいところのニュアンスの違い等は目をつぶってください(*'ω'*)
<目次>
チャタレー事件の判例(1957年判例)
〇事件の概要
伊藤氏『イギリスの官能小説"チャタレー夫人の恋人"を翻訳して出版しよう♬』
出版社『うわぁ、ド下ネタすぎるわ。まあいいや、出版するで!』
政府『はい、刑法第175条(わいせつ物販売禁止を定めた決まり)違反で、翻訳者と出版社社長を逮捕します~』
伊藤氏&出版社『は?憲法第21条で表現の自由が認められてるやん。わいせつ物を出版することだって、表現の自由の範囲内じゃん!』
〇裁判の争点
・刑法175条自体が憲法21条(表現の自由)に違反しているのではないか?
・わいせつ物を出版することは、表現の自由に含まれないのか?
〇判例
第1審(東京地方裁判所)
『出版社はわいせつ物を販売したんやから悪いわ。でも、翻訳者は翻訳しただけやし、憲法21条で表現の自由が保障されてるから無罪ですわ。』
第2審(東京高等裁判所)
『両方悪いわ。2人とも有罪やで!』
第3審(最高裁判所)
『両方悪いわ。2人とも有罪やで!。チャタレー夫人の恋人のようなわいせつ物を出版することを制限するのは、"公共の福祉"論で説明可能やで!』
〇元教師の解説
憲法第21条では「外部に向かって思想・意見・主張・感情などを表現したり、発表する自由。個人におけるそうした自由だけでなく、報道・出版・放送・映画の(組織による)自由などを含む」といった、表現の自由が保障されています。では、わいせつ物を公に表現することも、権利として認められるのでしょうか?
最高裁判所で示された「公共の福祉」論。この語句は、中学校の社会科で必ず出てきます。人間は誰もが権利を持っています。ただ、その権利を盾にやりたい放題やったら社会は回らなくなります。そういう場合に、権利を制限できる、という考え方です。
この裁判では、『わいせつ物を出版する権利もあるぜ!』との主張に対し、裁判所は『世間にわいせつ物が出回ったら、みんな興奮してもうアレよ!』と判断し、わいせつ物出版の権利を制限したわけです。
この裁判以降、憲法21条の表現の自由VS刑法175条、をめぐる裁判が続きます。
これ以降裁判所は、たとえ芸術性が高い作品でもそれ自体にわいせつ性がある場合、出版することは有罪である、との判断を下し続けました。
じゃあ、世の中に出回っているアダルトビデオとかどうなるんや?って話なんですが、
・出版されている物が多すぎて対処することは不可能
・あんまり制限しすぎると性欲のはけ口が無くなって困る
という風潮があり黙認されている状態です。『チャタレー夫人の恋人』は、ある意味見せしめとして摘発されたにすぎないのです。
長沼ナイキ事件の判例(1973年判例)
〇事件の概要
国『北海道の長沼町に自衛隊のミサイル(ナイキと呼ばれるミサイル)基地を作るよ!そのために、森林を伐採するわ!』
地域住民『は?森林破壊するなよ。ってか、そもそも自衛隊の存在って憲法9条違反じゃね?』
〇裁判の争点
自衛隊の存在は憲法第9条に違反しているのか?
〇判例
第1審(札幌地方裁判所)
『よくよく考えてみれば、自衛隊って憲法違反(違憲)だわ。地域住民の訴えを認めるよ!』
第2審(札幌高等裁判所)
『地域住民の訴えは認めません。そもそも、裁判所に"自衛隊は憲法違反じゃないんですか?"とか難しい問題持ち込むなよ(*'ω'*)』
第3審(最高裁判所)
『同じく、地域住民の訴えは認めません。自衛隊が憲法違反かどうかについてはノーコメントで(´・ω・`)』
〇元教師による解説
長沼ナイキ事件の裁判は画期的です。ランクがあまり高くない地方裁判所ではありますが、裁判所が初めて『自衛隊は憲法違反やわ!』って判決を出したのですから。
なお、その上の高等裁判所は『そんな難しい問題持ち込むなよ』と逃げます。このような、裁判所が判断を回避する(回避すべき)考え方のことを統治行為論(とうちこういろん)と言います。
この裁判には裏側があります。自衛隊を憲法違反だと判決を下した裁判官の福島氏に対し、上司の平賀氏が裁判の前に"先輩のアドバイス"と書かれた手紙を福島氏に送りました。その手紙には、「自衛隊を憲法違反とか言わないほうがいいよ♬」といった意味合いの内容が書かれており、判決に対する圧力がかけられたとされています。
これは後ほど大きな問題となりました。まあ、福島氏は無視したわけですけど(´・ω・`)
大分県欠陥マンション事件の判例(2007年)
〇事件の概要
マンション購入者『マンション1棟丸ごと買っちゃった♬』
マンション販売業者『ありがとうございます!』
~しばらく経ったのち~
マンション購入者『なんやこのマンション?ベランダの手すりグラグラやん。こりゃ欠陥マンションや!』
マンション販売業者『まことに申し訳ありません!』
マンション購入者『販売業者も悪いけど、マンションの設計会社と建築会社も同罪や!賠償金払えや!』
〇裁判の争点
住宅に欠陥が見つかった場合、販売者だけでなく設計会社や建築会社にも損害賠償を請求できるのか?
〇判例
第1審(大分地方裁判所)
『マンション販売会社だけでなく、設計会社と建築会社も責任があるわ。7400万円の損害賠償を払いなさい』
第2審(福岡高等裁判所)
『購入者と直接契約したのは販売会社のみ。販売会社は責任あるけど、設計会社と建築会社には賠償責任は無いよ。そもそも、手すりがグラグラしたくらいじゃ、違法建築とまでは言えないしね』
第3審(最高裁判所)
『設計会社と建築会社にも賠償責任はありまぁす!手すりのグラグラも"生命や安全を脅かす欠陥"に認定されまぁす!』
〇元教師の解説
この判決が出るまでは、マンションでも一戸建てでも同じですが、購入者と直接契約した販売者のみがその責任を負う、とされてきました。そのため、販売者に支払い能力が無かったり倒産してしまった場合は、購入者はどこにも責任を問えなかったのです。
この判決が出たことにより、購入者は自身が契約をした販売者だけでなく、その住宅の設計会社や建築会社にまで責任を追及できるという見方が広がりました。また、「ベランダの手すりがグラグラする」レベルの欠陥も、"生命や安全を脅かす欠陥"であると認定されました。
もし、読者の方の中で『私の家も欠陥住宅や!屋根無いし(*'ω'*)』とお気づきになった方は、今すぐ裁判沙汰ですわ!住宅完成の20年後まで損害賠償は請求できますよ。
今治サッカーボール事件の判例(2015年判例)
〇事件の概要
小学6年生男児『サッカーボール蹴って遊ぼう。あれ、間違って校庭からボールが飛び出してもうたわ!』
通行中の80代男性『うわぁ、サッカーボールだ!』
→バイクで走行中の男性は転倒し骨折。以後寝たきり生活となり、1年4か月後に死亡
男性の遺族『お祖父ちゃんが死んだのは、小学生の蹴ったサッカーボールのせい。小学生の両親は監督不行き届きだ。小学生の両親に損害賠償を請求するで!』
〇裁判の争点
この状況で保護者に監督責任は存在するのか?
〇判例
第1審&第2審(大阪地方裁判所&高等裁判所)
『小学生の親が悪いわ。ちゃんと子供を見とかないかんで。1180万円賠償しなさい』
第3審(最高裁判所)
『ボールを蹴ってどっか飛んでいくとか、よくある事やん。危険な行為じゃないよ。そんなことで親の監督責任とか言っても、監督しようがないでしょ。損害賠償は無しでいいわ!』
〇元教師による解説
民法714条では、"責任無能力者(ガキのこと)の監督義務者等の責任"について定められています。子供のしたことは、全て保護者が責任を持つべき!という法律です。
この事件の判決は、子どもが何かしでかした時、必ずしも保護者の責任になるわけではない、との考えが示されたと言えます。何でもかんでも保護者の責任、っていうわけではなく、個別にその妥当性を考えるべき、ってことです。
終わりに‥
ちなみに、過去の判例や判決文は全て著作権フリーなので、そのままブログに張り付けたって著作権違反にはなりません。やったね!。
ってか、こんなアウトローなブログを発信し続けることは、憲法21条の表現の自由の範囲内なのかちょっと不安になってきました。でも、Googleポリシーには違反してない気がするから無問題です(*'ω'*)
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