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【保存版】中高生のための分かりやすい憲法改正講座

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【保存版】シリーズは、筆者であるツベルクリンが色々なジャンルの有益かつ無益な情報を書いていくシリーズ記事です。今回のテーマは『中高生のための分かりやすい憲法改正講座』です。

 

 

 

このブログを好き好んで読んでいる方たちなんて、政治の事ちっとも分かってない人ばかりじゃないですか(*'ω'*)。そんな方々のために、元中学校社会科教師である私が、中学生や高校生でも理解できるように、政治問題について説明していこう、っていうのがこの記事の趣旨です。

 

 

様々な政治問題の中から、今回は憲法改正について取り上げます。出来る限り分かりやすく(でも「衆議院」とか「参議院」とか言葉は知ってるよね?レベルで)解説していきますので、よろしくお願いしますね。

 

 

 

<目次>

 

 

 

憲法改正の手順



『そもそも憲法ってどうやって改正するの?』っていう疑問について、手順とか段取りを説明していきます。改正の手順に関しては、実は憲法にきちんと書いてあります。憲法の第96条を引用します。

 

 

「この憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない」

 

 

発議(はつぎ)とは、国会議員が議案を提出して審議を求めることをいいます。改正の手順の第1段階は、憲法のどの部分をどのように改正するのか示した「改正原案」を国会に提出するところから始まります。

 

 

改正原案を提出するルートは2通りあります。

 

「議員提出」ルート
国会議員が原案を、衆議院か参議院に提出します。衆議院に提出する場合100人以上、参議院に提出する場合50人以上の議員の賛同が必要です。

 

「憲法審査会」ルート
衆議院と参議院に、それぞれ設けられた憲法審査会が国会に提出します。

 

 

憲法審査会とは、憲法について議論する専門の機関のことです。衆議院と参議院両方に設置されていて、メンバーは国会議員の中から選ばれます。

 

衆議院の憲法審査会メンバー

委員名簿 憲法審査会

 

参議院の憲法審査会メンバー

憲法審査会委員名簿:参議院

 

 

 

↓ 審査会の会議はこんな感じ

 

出典:衆院憲法審査会・発言の要旨(2023年4月20日):東京新聞デジタル

 

 

審査会のメンバーには様々な政党の議員が参加しています。様々な政党の議員が参加していますが、その政党比率は衆議院参議院それぞれの国会議員の政党比率とほぼ同じように設定されています。例えば、A党の衆議院の議員比率が50%だったら、A党の憲法審査会に選ばれる審査会メンバー比率もだいたい50%だということです。

 

 

国会に提出された改正原案は、国会の本会議において説明や質疑応答が行われます。その後、衆参それぞれの憲法審査会で審議され、審査会の採決で過半数を超えれば、国会の本会議に再度提出され、国会議員全員による採決が採られます。

 

 

衆議院と参議院、両方の本議会においてすべての国会議員の3分の2以上の賛成で可決されると、国会が憲法改正の発議を行い、国民投票にかけられます。国民投票は可決後60日後から180日以内に行うと決められています。なぜ最低60日間は実施までの期間を空けるのかと言えば、憲法改正案の内容を国民に広く知ってもらうための期間なのです。

 

 

国民投票では、通常の選挙と同じく18歳以上の日本国籍を持つ人全員に投票の権利が与えられます。国民投票において投票総数の過半数以上の賛成があった場合、国民の承認が得られたものとみなされ、新しい改正案が公布されます。

 

 

 

段取りをイラストにまとめるとこんな感じになります

 

出典:憲法改正の場合の手続きは - みんなとわたしの憲法 NHK

 

 

 

改憲勢力と護憲勢力



国会議員の多くは自民党や立憲民主党といった政党(同じ考えを持つ人々が集まって作った政治グループ)に属しています。政党によって憲法改正に賛成するのか反対するのか、考え方が異なります。

 

憲法改正に前向きな人々を改憲勢力、改正に反対する人々を護憲勢力(非改憲勢力)、と私は呼んでいます。主要な政党別に見てみるとだいたい以下のように分類できます。

 

 

改憲勢力→自民党・公明党・日本維新の会・国民民主党

非改憲勢力→立憲民主党・共産党・れいわ新選組・社民党

 

 

参政党は改憲ではなく一から新しく憲法を作り直すべきと主張しています

 

 

よく選挙後に、勝利ラインとして挙げられるのが「改憲勢力が全体の議席の3分の2以上の議席を獲得できたか?」という点です。というのも、先ほど説明したように憲法改正案が国会で審議された際に、その改正案を可決するためには全ての議員の3分の2以上の賛成が必要だからです。逆に言えば、護憲勢力から見れば、全体の議席の3分の1以上の議席を獲得すれば、とりあえず憲法改正案の可決は阻止できる、ということになります。

 

 

定められている衆議院の議員の定員は465人、参議院の議員の定員は248人です。すなわち各院の3分の2ラインは

 

衆議院:310人

参議院:166人

 

となります。

 

 

例えば、自民党が昭和時代にずっと憲法改正が出来なかった理由は、当時の最大野党であった社会党が他の非改憲勢力と組んで議席の3分の1以上を常に確保していたからです。そのような状態では、たとえ憲法改正案の原案を国会に提出したところで、否決される結果となったことでしょう。

 

 

 

 

2025年7月現在、衆議院と参議院の改憲勢力と非改選勢力の勢力図ですが以下の通りになっています。

 

まずは衆議院の方から。衆議院は2024年に選挙が行われました。

 

出典:第50回衆議院選挙2024の振り返りと国民民主党への期待 - 榎本あゆみ(エノモトアユミ) | 選挙ドットコム


憲法改正に前向きな議員(自民党・公明党・維新の会・国民民主党)の数を合わせると281人になります。3分の2ラインである310人に届いていません。

 

 

 

 

続いて参議院です。参議院は2022年に選挙が実施されました。

 

出典:情報ライブ ミヤネ屋|記事|【独自解説】参院選で改憲勢力3分の2超、安倍元首相の悲願“憲法改正”は行われるのか?専門家「何をするかが問題、4党足せばという話ではない」|読売テレビ



憲法改正に前向きな議員の数を合わせると177人です。3分の2ラインが166人ですのでそのラインを超えています。

 

 

つまり、2025年7月現在、衆議院では憲法改正に前向きな議員の数が3分の2を超えていないので、今この状態での憲法改正の可能性はほぼ0だということになります。仮に憲法改正の原案を国会に提出したとしても、賛成票は3分の2を超えないと考えられます。

 

 

 

 

 

憲法改正の可能性があった時期もある

 

 

出典:【図解】過去の衆院選 主な政党の議席の変遷(Yahoo!ニュース オリジナル THE PAGE)

 

 

では、今までに衆議院も参議院も両方、憲法改正に前向きな改憲勢力の国会議員が国会全体の3分の2以上を占める時期はなかったのでしょうか?結論を言えば、自民党が民主党から再び政権を奪回した2012年以降だけで見ても数年間はそのような時期がありました。

 

2012年以降、衆議院と参議院でそれぞれ改憲勢力が全議員の3分の2以上を占めていた時期は以下の通りです。

 

衆議院→2012年~2024年

参議院→2016年~2019年、2022年~現在(2025年参議院選挙前)

 

この両方が被る時期、すなわち「2016年~2019年」「2022年~2024年」の期間は、衆議院も参議院も両方、改憲派が全議員の3分の2以上を占めていたことになります。数の理論から言えば、もしこの時期に改憲派が憲法改正案を国会に提出し、審議の上採決されていたら、改正案は可決されていた可能性が非常に高く、国民投票まで進んだと思われます。

 

 

 

 

なぜ憲法改正が出来なかったのか?



前章でお伝えした通り、衆議院も参議院も両方改憲勢力が3分の2以上を占め、憲法改正の前提条件が整った時期もありました。しかしながら、これまでに憲法改正が実施されたことは無く、そもそも憲法改正の国民投票も実施されたこともなく、そればかりか憲法改正案の採決が国会で行われたこともありません。これは一体どうしてでしょうか?

 

 

これに対する問いに簡潔に答えるとすれば、"改憲派の中で改正案がまとまっていないから"ということになります。

 

 

 

 

憲法改正と聞くと、まず最初に浮かぶのは第9条だと思います。ここで日本国憲法の9条を引用してみます。

 
 
第1項:日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
第2項:前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
 
 
自民党の意見は、この条文を修正しつつさらに自衛隊の名称を「国防軍」に改め、その表現を憲法の条文に加えようとする考え方です。
 
 
 
一方、自民党と連立して内閣を組織している与党の公明党は、条文は変えずに、自衛隊の名称も変えずに、自衛隊の存在を新しく条文に加える考え方を持っています。改正と言うより加憲、という方向性です。
 
 
 
自民党と公明党で意見が食い違っており、公明党は自民党の9条改正案について「賛成できない」と表明しています。現在、自民党側が公明党側に譲歩する形を取ってはいますが、いまだに統一された改正案をまとめることが出来ていません。
 
 
 
 
 
 
 
 

日本が戦後平和だったのは憲法第9条のおかげか?

 
 

 
これまで憲法改正の手続きや改正に向けての情勢などを解説してきました。日本国憲法は全部で103条ありますが、憲法改正と聞くとやはり第9条がピックアップされがちです。
 
 
憲法第9条では、戦争の放棄や戦力を持たないことが掲げられています。そして、この第9条を持っているからこそ、日本は戦後80年間平和だった、と考える方も多いと思います。
 
 
この"日本が平和なのは憲法第9条のおかげ"という考え方は、認識として正しいのでしょうか。私の考えを申し上げると、「半分正解」ということになります。
 
 

 
戦争には大きく分けて2種類あると思っています。自ら他国へ仕掛ける戦争(=侵略戦争)と、ある国から自分たちの領土が攻められる戦争(=自衛戦争)の2種類です。第9条は諸外国とのトラブルの最終解決手段としての戦争を否定していますから、戦後日本が他国へ侵略しなかった理由は間違いなく9条の存在があったからだと言えます。

 
 
その一方、仮にとある国が日本へ侵略しようと考えた際に『あ、でも日本は憲法第9条を持っているからやっぱり日本へ戦争を仕掛けるのを止めておこう』って考えるか?って話です。これ、普通に考えたら『そんなの関係ねぇ~!』って思うに決まってるじゃないですか。
 
 
 
もし、第9条のような平和憲法を持つ事が他国の侵略を防ぐ効果があるとしたならば、世界中の全ての国が平和憲法を持ちますよ。でもそんな効果は無いから、諸外国のほとんどは多大な費用をかけて軍隊を維持して防衛しているわけですから。
 
 
 
 
 
 
では質問を変えて『日本が戦後80年間、他国から侵略されなかったのはどうしてか?』という問いに答えるとしたならば、私の答えは『自衛隊と在日アメリカ軍が日本を守っていたから』という答えになります。
 
 

 
 
すなわち、日本が戦後平和だったのは"憲法第9条の存在+自衛隊&在日アメリカ軍の存在"のおかげ、ということです。冒頭で『半分正解』と言った理由がお分かりだと思います。
 
 
 
 
この主張をすると、「外交努力で他国からの侵略を防ぐことを考えるべきだ」といった反論が飛んできます。
 
"しかし、「そうはいっても他国が攻めてきたらどうするの」という素朴な疑問もあるかもしれません(中略)そもそも人口比で10倍、軍事費が6倍以上の中国や圧倒的な資源をもつロシアを相手に軍事力で対抗しようと考えることが本当に「現実的」なのか、私には疑問です(中略)その上、日本は資源に恵まれず食糧自給率も極めて低い水準にあることから貿易によって食糧や経済を成り立たせていますが、戦争になれば最悪それらが一切入ってこなくなること、食糧が不足し経済が動かなくなることを覚悟しなければなりません。外交努力の「その先」の心配をして憲法9条を改正するよりも、外交努力を「どのように続けるのか」、「どのように紛争を回避するのか」を考えることがもっとも現実的なのではないでしょうか。
 
 
 
「他国が攻めてきたらどうするのか?」という疑問に対して「攻められないように外交努力をすることが必要」って答え、答えになってないんですけどね。
 
 
しかもこの文章は、2022年にロシアがウクライナへ侵攻した後に書かれた文章なんですよね。話し合いそっちのけでいきなり他国へ攻め入る国が存在していることが明白になったにも関わらず、「外交努力で他国の侵攻を防ぐべし」論を掲げているのは、あまりにも"お花畑"過ぎやしませんかね。それとも、ロシアの侵攻を防げなかったウクライナに対して「外交下手の無能政府」とか評価するおつもりなんでしょうか?
 
 
 
以上のことを踏まえた上でも、『やはり憲法9条は他国への侵略を自制するのに効果的であり、今後も護持していくべきだ』との主張は存在すると思いますし、その考えについては私も評価します。しかしながら『憲法第9条さえ守っておけば日本が戦争に巻き込まれることは無いはずだ!』と決めつけてしまうのは、ウクライナ戦争の例を見ても、あまりにも危険な決めつけだと思えてなりません。
 
 
 
 
 

第9条以外の憲法改正論

憲法改正、と聞くとどうしても第9条ばかりが議題に上がりますが、憲法自体103条もあるので、他の条文の改正の良し悪しも考えていかなければなりません。
 
 
また、近年新しい権利(プライバシー権、環境権、知る権利など)が提唱されていますが、そのような新しい権利は約80年前に施行された憲法では当然触れられていません。
 
 
"また人権保障の分野では、デジタル時代の到来や、個人の生き方の変化・多様化に対応できていないとして、個人の尊厳を守るための「データ基本権」や「同性婚」などを保障するための改正案も例示しています。"
 
 
 
 
 
国民の権利を拡大するために憲法を見直そう、みたいな主張ならば護憲派の議員にも歩み寄る余地はある気がするんですよね。
 
 
 
例えば、最大野党で護憲派と考えられる立憲民主党は、9条以外の憲法改正を否定する立場はとっていません。
 
"立憲民主党は、憲法を一切改定しないという立場はとっていません。立憲主義に基づき権力を制約し、国民の権利の拡大に寄与することを前提に、国民にとって真に必要な改定を積極的に議論し、検討する、「論憲」を掲げています。"
 
 
 
その一方で、新しい権利(プライバシーの権利や知る権利など)は、現行の憲法でも制限されていたり憲法に違反している訳では無いので、憲法を変えなくとも法律を整備することで対応は可能である、という考え方もあります。
 
 
 
ちょっと古い資料ですが、2013年に開かれた憲法審査会での審議において、新しい人権を憲法に加えるかどうかの議論が行われました。
 
 
"一方、憲法上の規定を設ける必要はないとする意見からは、①新しい人権は、憲法の人権規定を踏まえて、国民の運動により発展的に生み出されてきた権利であり、第 13 条など日本国憲法の人権規定により根拠付けられている。②憲法は、奥深い容器として時代に即応した新しい権利を抱き取るような柔構造、時代に弾力的に対応できる構造になっている。③新しい人権については、基本法を制定し、個別法により具体的権利を保障するシステムを取るべきなどの理由が示された。 "
 
出典:『新しい人権』第183回の参議院憲法審査会における議論報告書
 
 
 
自分なりにまとめると
 
  1. 新しい人権はすでに憲法に根拠づけられており含まれているものだ
  2. 憲法は時代に合わせて対応できるよう、当初から大きな枠組みで作られている
  3. 憲法を変えるのではなく具体的なルールを定めた法律を制定するべきだ
 
と言った感じでしょうか。
 
 
 
このように、9条以外の分野においても、憲法改正について議論が続いており、国会議員全体で一致した見解はいまだに得られていません。
 
 
 
 
 
 

終わりに…

 
 
憲法改正について私が思っていることは、「憲法を変えること」もしくは「憲法を変えないこと」それ自体が目的となってはいけない、ということです。それぞれの陣営がそのような硬直化した態度をとっていては、議論が深まっていきません。
 
 
そして、最終的に憲法を改正するかどうかは国民投票によって決められます。憲法の意味を突き詰めていけばそれは、国民の権利や自由を守るために国家に対して突きつけられた約束のようなものです。憲法について考えることは、そのまま自身の生活や暮らしについて考えることに繋がっていくのです。
 
 
改正するかどうかはともかく、1人1人が憲法について考え、自分の意見をしっかりと持つことが大切なのです。
 
 
 
 
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