日常にツベルクリン注射を‥

現役の添乗員、そしてなおかつ社会科の教員免許を所持している自分が、旅行ネタおよび旅行中に使える(もしくは使えない)社会科ネタをお届けするブログです♪

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100年前の人々の結婚に対する悩みに耳を傾ける記事【新聞の投書欄を読む】

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よくtwitterなどで、恋愛や結婚の相談や愚痴をツイートしている方がいらっしゃいますよね。そのツイートに対して、フォロワーさんがリプライを返していたり、時としてリプライ欄で論争が繰り広げられることがあります。

 

では、twitterなどのSNSが無い時代、人々はどこで愚痴や相談を吐いていたのでしょうか?twitterのように、公に向かって相談事や愚痴を吐き出せる場として、新聞の投書欄がその役割を担っていました。

 

特に力を入れていたのが『読売新聞』で、今からおよそ100年前の1914年(大正3年)の5月、読者からの投書や相談を募集する「身の上相談コーナー」を新聞紙上に設けました。読者から寄せられた相談に読売新聞の記者が交代で回答する、というこのコーナーは大反響を呼び、半年で1万通以上の相談が書かれた手紙が読売新聞社に届きました。

 

今回は、およそ100年くらい前の『読売新聞』の身の上相談コーナーに寄せられた投書の中でも、特に結婚に関する悩みや相談事をピックアップし調査しました。100年前の人々が結婚に対してどのような悩みや相談事を抱えていたのか見ていきましょう。

 

100年前の文章をそのまま引用すると多少読みにくいので、私が現代語訳し、掲載しています。投書欄が掲載された日付を出典に明示していますので、気になる方はご自身で調べてくださいね(∩´∀`)

100年前の文章をそのまま現代語訳しているので、多少差別的な表現と受け取られる描写があるかもしれません。現代とは価値観が違う時代の話ですので、あらかじめご了承ください。

 

<目次>

 

 

 

 

遊女に恋してしまった

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投稿:『私は今まで、本当の恋は処女にのみ得られるものだと思っていました。ある日、ふとしたことからある友人の誘いで1人の女性を知りました。その女性は遊女でした。何度か逢瀬を重ねるうちに心から恋するようになってしまいました。遊女も同じ気持ちのようです。しかし私は長男であり、両親や親族は遊女との結婚を許してくれそうにはありません。私はこの恋を成就する勇気と自信がありますが、果たしてこれは親不孝にはならないのでしょうか?』

 

回答:「もしかすると遊女側も本気でこの恋を考えているのかもしれませんが、あなたの場合はどうだか疑問が残ります。あなたは、まだ人生経験が未熟な方ですから、その遊女から騙されているのではないですか?そもそも、あなたがそういう街へ繰り出すことが悪いのですから、そこの女性を奥様にする、しないは問題外です。親不孝を考える前に、あなた自身の体面を考えないと、将来取り返しのつかないことになりますよ。」

出典:1914年7月9日付け『読売新聞』より現代語訳

 

 

 

 

回答者の記者は、遊女との結婚に関して否定的です。『そもそも遊女がいるような場所へ行くことが問題だ』とのスタンスです。

 

特筆すべきは、後日、この回答に関する"反論"が元遊女の読者から読売新聞へ届いたということです。1914年7月26日付けの記事において、元遊女の読者は『遊女になったものは一生真面目な人妻にはなれないでしょうか?』『それほどまで迫害を受けないといけないのでしょうか?』と切実な思いを寄稿しています。

 

それに対し、回答者であった記者は『立派なお志に感心いたしました。遊女の中にあなたのような方がいるとは思いませんでした』とコメントしています。このように、寄せられた相談に対して、意見を言ったり回答者に反論する投書もあったようです。

 

 

 

結納を交わしてしまった後で‥

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投稿:「私は19歳の女性です。数年来、私を愛してくれている男性がいます。その人は現在、東京の大学に進学しており、来年卒業します。ところが、この頃私の叔父が"ぜひある人の妻に君を"と言って、強引に結納の取り交わしをさせられました。その後、大学生の彼が私と結婚したいという意思があることが分かりました。この場合、結納を破棄して、その大学生の彼が卒業するのを待つほうがいいでしょうか?」

 

回答:「結納をしてしまったのは早まってしまった事ですが、一生不幸になるよりも、今のうちに破棄して学生の方の卒業をお待ちなさい」

出典:1914年12月10日付け『読売新聞』より現代語訳

 

 

 

 

お見合い結婚と恋愛結婚の数が逆転したのは1960年代のことです。それまでは(特に戦前)、圧倒的にお見合い結婚(親の決めた相手と結婚する)の方が多かったのです。ましてや100年前など、ほぼお見合いで決まっていたことでしょう。

 

親や親族が決めた結婚に従うのが当然、と世間が思っていた時代でも、この投書のように、それに反発する意見もあったことは意外です。そして、回答者である記者も、恋愛結婚を後押しするような意見を出しています。100年前とはいえ、案外寛容的な意見を持つ人もいたことがうかがえます。

 

 

 

結婚の約束をしたのに…

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投稿:「私は青森県の女性です。6年前、故郷の人と結婚の約束をしました。そのころその人は医学生で上京しましたので、私も時々上京しました。その後、新聞紙上にその医学生の成功の報が伝えられたので喜んで手紙を出しますと、意外にも女性の筆跡で、しかも文面によるとその人の妻らしき様子のうかがえる手紙が返ってきました。私は驚いて再度手紙を出すと、今度は返事も来ません。私は、あれほどの結婚の約束があったので、両親の勧める縁談も断っていたくらいでした。どうしたらよいのでしょうか?」

 

回答:「確かにあなたを欺いた男性は不義理な人ではあります。ですが、生涯の大事を両親の賛同も受けずに2人だけで軽々しく決めてしまったのはあなたの過ちで、これがもし双方の両親も承知しての約束であれば、その男性も軽々しく破約出来なかったでしょうね。」

出典:1916年9月1日付け『読売新聞』より現代語訳

 

 

 

 

結婚の約束をした医学生を6年間待ち続けた女性に対し、回答者は「あなたの過ち」だと答えています。先ほどの相談とはうってかわって、手厳しい回答ではあります。

 

確かに親や親族の言いなりで、結婚したくもない人と結婚することに対しては、読売新聞も否定的でした。ただ同時に、両親の賛同を得ない結婚に関しても否定的です。両親の賛同を得ることで、結果的に当人たちの繋がりも強くなると諭しているのです。

 

『読売新聞』のスタンスとしては、ある程度年を重ねた者同士であれば、恋愛結婚も選択肢に入れるべきだが、若者同士の結婚は慎重に事を進めるべきだという立ち位置のようです。

 

 

 

"荒熊"のような妻

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投稿:『私は今から4年前に妻をめとりました。妻は農家の出身で(中略)、気質は荒々しく、むやみ癇癪を起こし、はなはだしい時に私が少し叱りつけますと手当たり次第に私に物を投げつけますので、余りのことに腹を据えかねて懲らしめようとすると「人殺し!」と言って大声で怒鳴り散らすありさまです。私は1日も早くこの妻と離婚してこの不快な家庭から逃れたいと思うのですが、実のところ、今の妻は私が両親の反対を押し切って嫁にしたのです。その手前、今さら私から離婚を言い出せないのです‥』

 

回答:『困った奥様ですが、そういう奥様も面白いではないですか。昔、哲学者のソクラテスも同じような奥様を持っていました。あなたも聖人になったつもりで、そういう荒熊のような奥様を柔和にする工夫をお積みになったらいかがでしょう。』

出典:1914年6月28日『読売新聞』より現代語訳

 

 

 

今でいうモラハラ旦那の奥さんverと言った感じでしょうか。にしても、昔のお嫁さんのイメージは、"三歩下がって旦那の後ろを歩く"といった控えめなイメージがあります。でも、100年前にも恐妻家はいたんですね。

 

 

 

 

"わきが"の人との結婚について

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投稿:『私はある人と婚約が成り立っていますが、私自身が腋臭(わきが)で困っています。大学病院で手術を受けたこともありますが、足からも嫌な匂いがして治る見込みがありません。そのうえ、遺伝性のものでもあります。相手の婚約者は私を非常に愛してくれていますが、それゆえになおさら病気のことが余計心配なのです。もし結婚しても、永久に幸福ではないような気がするのです‥』

 

回答:『腋臭を出来るだけ治療して全治するのが良いでしょうが、そのためにこれほど悲観されなくてもよいと思います。そのことにこだわって婚約を破棄するのは、かえって先方のためにもなりませんからやはり結婚したほうがよいでしょう。』

出典:1919年6月23日付け『読売新聞』より現代語訳

 

 

 

『腋臭(わきが)が気になって結婚出来ない』とは、思わず笑ってしまいます。ところで、少し前のネット上でこんなコピペが出回っていました。

 

……………………………………

1 名前:名無しさん 投稿日:2005/11/24(木) 23:55:11 hU9mnop30
とっても大好きな人がいるのにワキガなんです。
匂いが気になって告白も出来ません。
それともこんなことを気にするなんて器が小さいだけなんでしょうか?

12 名前:名無しさん 投稿日:2005/11/25(金) 00:19:21 LimwGyiE0
>1さん
よくわかるよその気持ち。私もワキガだもん。
つらいよね、、、クラスのみんなからバイキン扱いされるし。
恋なんて出来ないってあきらめかけたりもしたよ、、、
でも今は治療でなおせるらしいからお互いガンバロ!

15 名前:1 投稿日:2005/11/25(金) 00:22:17 hU9mnop30
>>12
私じゃなくその好きな人がワキガなんです。

16 名前:名無しさん 投稿日:2005/11/25(金) 00:23:49 oiK1KmFj0
以降このスレは>>12を励ますスレになります

 

……………………………………

 

この辺りは、100年前も現在も変わってないみたいです。

 

現在分かっている医学的見地から言うと、片親が腋臭の場合、遺伝する確率は50%、両親が腋臭の場合は遺伝する確率が80%とされています。

ワキガは子どもに遺伝する!発症時期やチェック方法・臭い対策も紹介

 

『自分の腋臭が子供に遺伝してしまうかもしれない…』と考えるのは、可笑しくもありますがある意味正しいです。ここで問題にしたいのは、自分(もしくは結婚相手)に遺伝する(もしくはその可能性のある)病気がある場合、それが結婚をためらう理由にもなりうる、という点です。

 

もちろん、ためらう理由が『腋臭だから』『容姿が良くないから』と言った理由であれば、100年前も『そんなこと気にする必要はない(笑)』と快活に答えていたようです。

 

 

 

終わりに…

私が結婚できないのは、アウトローだからでしょうか?それともひねくれているからでしょうか?どなたかご教示ください(*'ω'*)

 


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