日常にツベルクリン注射を‥

現役の添乗員、そしてなおかつ社会科の教員免許を所持している自分が、旅行ネタおよび旅行中に使える(もしくは使えない)社会科ネタをお届けするブログです♪

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戦前の女子(中学生&女子高生)の悩みに耳を傾ける記事

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多感な時期である中学~高校生の時期は悩みが尽きないですよね。特に女子は身近な人には言えないような悩みを抱えている人もいることでしょう。そしてそれはいつの時代も同じだと思うのです。

 

この記事では、昭和初期(昭和10年前後、1935年くらい)の女子中学生や女子高生の悩みを覗いちゃうちょっとアレな記事です。具体的に言うと、当時発行されていた少女雑誌のお悩み相談コーナーに読者から送られてきた悩みを見てみる、という趣向です。生きていれば100歳前後の女性の少女時代の悩みなので、たぶん時効です(*'ω'*)

 

もっとも、いま「女子中学生」とか「女子高生」とか言ってますけど、戦前は現代のように「6・3・3制」の教育制度ではなく、結構複雑な制度でした。

 

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出典:https://ameblo.jp/japanism2020/entry-12549883536.html

 

戦前の教育制度では、義務教育は小学校(昔は小学校のことを尋常小学校と呼んだ)6年間のみです。それ以降は、完全に男女別学の進路となり、男子は中学校(たいてい5年制)、女子は高等女学校(たいてい4年制)に進学していました。もちろん、進学できるのは、学力があってなおかつある程度裕福な家庭に生まれた少年少女のみでした。

 

上の図赤枠の高等女学校は、今で言う中高一貫の女子中学&女子高と思ってください。昭和10年の高等女学校への進学率は16.5%なので、当時は女子高生になれること自体がエリートであり、セーラー服を着た女子高生は憧れの的だったのです。なお、当時は女子高生とは呼ばずに「女学生」と呼んでいました。

 

そんな憧れの的だった戦前の女学生たちの、真面目だけどたまにとんちんかんな悩みを聞いてみましょう(*'ω'*)。

 

なお、今回は当時雑誌に掲載されていたそのままの原文で当ブログも引用掲載いたします。80~90年ほど昔の文章ですので多少読みにくいかもしれませんが、それは時代のせいです(*'ω'*)

 

文章の構成としては、「女学生からの質問」「出版社編集者の回答」「私ツベルクリンによる解説、講評」の3段構成で掲載していきます。

 

 

<目次>

 

 

 

 

 

体型について 

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出典:https://www.nikkan-gendai.com/

 

質問:17(歳)でございますが、元々太って居りましたのがこの頃急に一層太って参りました。腕など普通の2倍ほどございます。大きなお尻のために背縫が広がってしまいます。運動もかなりいたしますが背丈は伸びないで太る一方でございます。両股、膝の後ろなど擦れてただれた様に汚くなっております。ノーストッキングで居たいと思いますがそれもできません。

 

 

 

回答:そんなに太っていらっしゃるのはからだに異状があるためと存じます。もう少し、お年を召したり、結婚なさいますと幾分お痩せになることもございますが、一度内科の医者にお診せになった方がよろしう御座います。そして、菜食を主にして、脂肪の多い物、甘いものをお控え下さい。心臓に故障がなければ運動はうんとなさったほうがよろしう御座います。‥股ずれなどは、いつも清潔にしてシッカロールのような粉をつけておきます。

出典:『令女界』(昭和7年11月号)より

 

 

 

戦前にもダイエットの概念があったことが分かる回答です。でもね~、いくら昔とは言え、あまりにもおデブ過ぎるとお嫁にいけないんじゃ‥(*'ω'*)。ちなみに、"シッカロール"とは、今で言うベビーパウダーのことを指します。

 

 

 

 

足が太い

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質問:私は17歳の少女でございます。毎日女学校に通って居りますが、お友達は大抵洋服を着て居ります。お母さんもそれをご覧になって『洋服はいいねえ、格好がよくて』とおっしゃって、私にも着るようにおすすめなさいます。私も何遍洋服を着たいと思うか分かりません。でもそのたびに躊躇しております。

 

それは私は体はそうでもありませんが、足だけがブテブテ太っているのです。ですから洋服を着たら随分格好が悪いでしょう。私は洋服を着ない方がいいでしょうか?それとも足を細くする方法はないでしょうか?お母さんを喜ばしてあげたいのです。

 

 

 

回答:少女時代に太っているのは当たり前です。あまり気になさらぬ方がいいでしょう。それに少女の方々は、大して太くもないのに太いと考えすぎている方が多いようです。なみ外れて太いのでなかったら、どんどん洋服を着られたらよいでしょう。なお足を細くする方法は無いそうです。

出典:『少女画報』(昭和3年9月号)より

 

 

 

現代では、洋服だらけですけど、戦前は服と言えば基本的には和服を指しました。女学生は普段の学校生活では制服を着用していますが、普段着は和服だったようです。そもそも、洋服を売るお店が皆無に近く、戦前の女性にとって洋服は「買う」ものではなく「作るもの」もしくは「オーダーメイドするもの」でした。洋服を着ること自体がハイカラでステータスだったのです。

 

こちらの回答者はおデブさんに寛容です。寛容ですけど『足を細くする方法は無いわ(*'ω'*)』と容赦ないです。

 

 

 

 

 

おっぱいが大きすぎる

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質問:無理なお願いを申し上げて申し訳ございませんが、そうかこの苦しんでいる子をお助けくださいませ。私は今東京高女の4年ですが、お笑いくださいますな、私の乳房は年の割に大きくて着物等着ますと、胸が大きくて恥ずかしてたまりません。

 

このごろでは、夜も眠れぬほど1人で悩んで居ります。乳房が小さくなる方法をお教えくださいますよう、心からお願い申しあげます。

 

 

回答:乳房の大きいことは発育のよい証拠ですから、寧ろ女性として誇るべき健康美です。悲しむことではないじゃありませんか。乳房が小さくなる方法などありません。どうしてもきまりが悪いと言うのでしたら、この頃百貨店などで胸美帯というものを売って居りますから、それをしめるのがよろしいでしょう。もしそれが手に入らないところでしたら、晒し木綿かガーゼを三ツ折幅にして胸にまいて押さえて置きなさい。

出典:『令女界』(昭和6年10月号)より

 

 

 

まさに『となりの芝は青い』ってやつで、おっぱいが小さくて悩む人もいれば、大きすぎて悩む人もいます。いつの時代もおっぱいは悩みの種なのです。

 

ちなみに胸美帯とは、別名「乳バンド」とも呼ばれ当時(昭和初期)登場したばかりの下着だったようです。

 

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いわゆる現代のブラジャーのようなものです。当ブログの過去記事でも言及していますが、女性がブラジャーを着用するようになったのは、高度経済成長期になってからです。

【全裸論】~混浴の歴史を通して考える日本人と全裸について~ - 日常にツベルクリン注射を‥

 

 

 

 

 

 

キスについて

 

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質問:私は今年17歳になる少女です。一昨年、あることから「C」という男と知り合いになりました。1か月後2人は兄弟の約束をしました。そして十以上も違うCをお兄様と呼んで随分甘えていました。ところが去年の秋ふいに私の唇を奪いました。

 

びっくりした私を抱きながら、彼は、僕は変な意味でするのではない、お母さんが赤ちゃんに対して可愛くするように、お前が可愛いからだと申します。私もなるほどと思いましたが、成人から接吻は恋人同士の、愛のしるしだと聞きました。如何なものでしょうか。心配でなりません。 

 

 

 

回答:‥‥男女のキッスが愛のちかいであるという事が常識である以上、あなたが彼のなすがままに唇を許しているということは、つまりは男の愛を受け入れたという事に解釈できるのです。兄だとか妹だとかという事が、すでに未婚の男女の間には許されない事でなければなりません。よく、兄だとか妹だとかいう交際を続けている男女がありますが、それはやがて越えてはならない垣を越える道程にあることは多くの例にみるところです。

 

キッスなんかということは第一衛生的によくありません。そのために結核が感染したりその他の病気がうつったりすることは随分多いです。たとえ婚約者の間でもあんな非衛生的なことはやってはならないと思います。活動写真(注:映画のこと)やその他に影響された外国人の悪風などをまねるのは猿真似に等しい愚かなことです。断然おやめになることをおすすめします。

出典:『令女界』(昭和9年4月号)

 

 

 

キスのことを「キッス」っていうことにノスタルジーを感じます。キスと言う言葉が日本に入ってきたのは明治維新後であり、キスの和訳として「接吻」という単語が当てはめられたのも、明治時代の中頃の話です。それまでは、キスのことを「口吸い」と言ってました。

 

「口吸い」という単語から感じられるように、昔の日本ではキスは普通の人はやらないアウトローな性行為だと人々に認識されていました。恋人同士はおろか、婚約者同士でも普通は行わない行為だったのです。

 

1950年(昭和25年)に公開された映画『また逢う日まで』で、おそらく邦画史上初のキスシーン(窓ガラス越しなので間接キスだけど)が登場したので、キスが一般的になるのは、昭和30年代以降だと思われます。

 

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出典:https://www.allcinema.net/

 

という時代背景もあって回答者はキスのことを『猿真似に等しい愚かなこと』と全否定してみせたのです。数十年もすれば人々の価値観なんて180度変わるんですよね。

 

 

 

 

ハグされると妊娠するのか?

 

 

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質問:私は15歳の少女です。昨年9月、ちょっとした機会にSという当時16歳の中学生を知りました。その翌日から、Sは私の家の前を通るようになり、そのうち私もSに思慕の情を抱くようになりました。そして一度口をきいたことがきっかけとなって二人は夢うつつ、毎日毎日遊んだり開眼をや山を歩き回り、通学の時までも常に一緒になるようになってしまいました。

 

ところが私は、彼に5~6遍抱かれてしまったのです。不意であったとはいえ、私の気の弱さからSのなすがままにさせてしまったことを後悔しています。先生、抱かれると妊娠するものでしょうか?もし妊娠していたらどうするのが良いでしょうか?

 

 

回答:妊娠なんかという心配は今のところ毛頭ありませんが、心配なことはあなた方の気持ちです。15、16なんていえばほんの少女、そんな頃から思慕だの愛だのってそんな事を考えていたのではこれから先が案じられてなりません。

 

友達としての交際程度なら差支えはない事ですが。しかし未熟な少年少女のそうした友人関係が、時に全く常識はずれた無軌道行為まで進展する例は決して少なしとしません。ですからこの際二人きっぱりと絶縁してしまうのが一番です。今はただ懸命な勉強、ただこれあるのみです。

出典:『令女界』(昭和11年7月号)

 

 

 

 

 

ここでいう「抱く」とは、ハグのことを指すと思われます。ハグされただけで妊娠すると思っていたら、真実を知った時卒倒するで(*'ω'*)

 

そして、少年少女の恋愛には手厳しい回答者。きっぱりと絶縁しひたすら勉強せよとの教えです。高校生の私だったら反発したでしょうけど、30歳超えた今なら『回答者の言う通りや!!』って思います。私も大人になりましたわ。

 

 

 

 

終わりに…

 

時代が変わっても変わらない悩みもあれば、時代による価値観の違いを認識させられるような悩みもあって、非常に興味深いものがありますね。

 

過去記事として、「100年前の結婚に対する悩み」を聞いてみる記事もあるので、クソ暇だったら読んでみてください。

 

www.tuberculin.net

 

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