【アウトロー探訪】シリーズは、管理人である私ツベルクリンが普通のガイドブックでは紹介されないアウトローな場所に潜入し、ご紹介していくシリーズ記事です。今回は、厳島神社(宮島)の鳥居の先にある謎の宗教施設に潜入してきましたので、ご紹介していきます。
前回の記事で広島県の世界遺産である厳島神社をご紹介しました。
海上に浮かぶ朱色の鳥居(現在工事中)は非常に見ごたえがあります。
ところで、厳島神社へ行ったことがある方の中には、鳥居の向こう側の山中に巨大な建物があることに気づいた方もいらっしゃるかもしれません。
これです。
鳥居の写真を撮影しようとすると、どうしてもこの謎の巨大施設がカメラに入り込んできます。九分九厘『写真に写りこんじゃえ~』的思惑を感じちゃいます。クソ邪魔ですわ(*'ω'*)
この巨大施設は一体何なんでしょうか?厳島神社がある宮島の旅館(巨大施設とは何の関係も無い)のQ&Aコーナーを見てみます。
対岸に見える白い建物はなんですか。 | 宮島錦水館 | ホテル宮島別荘
旅館も毎回宿泊客から質問されるんでしょうね。このように回答されていました。
"『海の見える杜美術館』といいます。 以前は「王舎城美術宝物館」と言う名前でしたが、2005年9月に名前が変わりました。新興宗教団体「霊友会」の一宗派「平等大慧会(びょうどうだいえかい)」が運営しております。"
そうですかそうですか、美術館&宗教施設でしたか(*'ω'*)。
厳島神社を訪れる方のほとんどが気になる施設ですけど、普通の観光客はわざわざ対岸にある宗教施設を訪れるわけありません。それじゃ永遠に気になるままじゃないですか。なので、今回私が皆様の代わりに謎の宗教施設に潜入してきました。
<目次>
宗教団体「平等大慧会」とは?
公式HPです。トップ画面で挨拶もそこそこに『あなたにとって"信仰"は必要でしょうか?』と訴えかけてくるところが、もう鬱陶しいです(∩´∀`)。
先ほどのQ&Aにもあったように、平等大慧会は宗教団体「霊友会」の一派のようです。霊友会自体は結構メジャーな新宗教で、日本全国に信者が120万ほどいると言われています。
この平等大慧会の総本山が、厳島神社の鳥居の先にある建物なのです。この建物は一般観光客向けの「海の見える杜美術館」、そして信者向けの「王舎城」に分かれます。
王舎城について平等大慧会の公式HPではこのように紹介しています。
"日本三景安芸の宮島の対岸に立つ王舍城。ここは佛法上、最も大切な場所であり、人間も動物も植物もすべてのものが救われる善のエネルギーに満ちあふれたところです。また、宗教施設以外にも美術館や遊歩道などがあり、様々な形で私たちの心を潤わせてくれます。"
ヤバいわ(*'ω'*)。エネルギー満ち溢れてるじゃん。
まずは海の見える杜美術館へ
山腹にあるので、自家用車で行くことをお勧めします。駐車場も無料ですし。
お盆なのに誰もいねえ(*'ω'*)
全体図です。
左側の緑のゾーンにお客様用駐車場、右側のピンクのゾーンに美術館&王舎城があります。
駐車場から美術館入り口まではシャトルバスが運行されています。もちろん、宗教の力で無料です。
ただ、時刻表も見当たらないし、どう見たってお客は私1人だけなので、歩いて美術館まで行くことにしました(後で気づいたのですが、駐車場のシャトル乗り場にインターホンがあり、バスを呼び出すシステムだったようです)。
歩き出したのはいいものの、時季が悪すぎるわ。登り坂15分歩き続けるとか地獄なんですけど(*^-^*)
ただ熱中症になっても大丈夫。敷地内には「にこにこクリニック」なる診療所があるので。なんかハートフルだわ。
敷地すべてが平等大慧会の所有であり、宗教色が滲み出ちゃってる施設がいくつも建てられています。ホームページを見ると、20歳を迎えた信者は、ここで成人式を迎えるらしいです。
坂道を上がっていきます。左側の建物は、信者用の研修施設のようです。
さすがにここに入っちゃうと、帰ってこれなくなる気がしたので素通りしました。
暑すぎるので飲み物を買うことにしました。
何か見たことない飲み物が。「プライムテン」だって。
どうやら平等大慧会オリジナル飲料らしく、「高麗人参」「ドクダミ」「梅」というよく分からない組み合わせの材料が使用されています。炭酸飲料で味はポカリスエットにほのかに宗教色をプラスした優しい味わいです。プライムテンは、平等大慧会関連施設内でしか買うことはできません。
入り口までやってきました。壁面に梵字(ぼんじ・仏様の教えを記した漢字)が刻み込まれています。美術館って言ってんのに、宗教色を隠すことはしません。
そして、ウサギの像がお出迎え。こんなにおどろおどろしいウサギは初めて見ました。
空を見上げるとなんだか渡り廊下っぽい物が目に入ってきます。
「天の橋」だって。ここでも宗教色を隠さないスタイルです。
ちなみに、天の橋は美術館へ行くのには全く関係ありません。そのまま坂道を上がっていくと美術館へたどり着きます。
ぱっと見、美術館に見えないもん。そして、屋上には金ぴかに輝く仏像が。
ただ、中に入ると普通の美術館っぽいです。ってか受付の人以外誰もいないんですけど。コロナ禍のため、検温とアルコール消毒を済ませ受付へ。
受付のお姉さん『もしかして歩いて来られました?』
私『歩いてきました』
受付のお姉さん『それはそれはお疲れになったでしょう。シャトルバスが運行してますから、お帰りの際は受付までおっしゃってください。すぐにバスを手配しますから!』
どうやら、あのシャトルバスはお客さんが1人でもいれば運行してくれるようです。受付のお姉さんの『帰りはぜひシャトルバスを!!!』という言葉には、99%の親切心と1%の『美術館以外の他の施設を見るんじゃねえぞ』という威圧を感じました。なるほど、施設を一般人に見られたくないから、わざわざシャトルバスを運行させてるんだな‥。
入館料は大人1人1000円(小中学生500円)です。館内は、写真撮影禁止の作品以外は撮影可能という太っ腹さ。さすが宗教です。主な展示品は2階にあるようです。エレベーターで上の階に上がりましょう。
1階が受付、2階が展示室。じゃあ、3階と4階は何なん?気になったけど、すぐ2階に着いちゃったので謎のままです。気になる方は、ご自身でお確かめください。
2020年8月までの企画展は「版画首都東京」というコンセプトで開催されていました。なかなか面白そうな企画展ではありますが、いるのは私と学芸員さんだけです。
全体を見て回りましたが『入館料1000円の価値があるのか?』と聞かれると返答に困ります。
猫ちゃあああぁぁぁぁぁぁぁ嗚呼ぁあああああん!見返り美人だねぇ(*´Д`)
猫ちゃん!猫ちゃん!猫ちゃん!猫ちゃん!
順路に従っていくと扉が現れます。
「この先へお進みください」って、開けるの怖いわ。
扉を開けるとそこには、オーシャンビューのカフェテラスが。
無料のドリンクサービスもあります。さすが宗教。
対岸には宮島が見えます。さすが、厳島神社から望む鳥居の景観をぶっ壊してまでここに美術館を建てた甲斐がありましたね!!
無料の宗教コーヒーを片手に一服します。くそ暑いわ(*'ω'*)
いよいよ本丸、王舎城へ!
普通の観光記事だと、紹介したとしても美術館までです。アウトローな当ブログは、むしろここからが本番です。平等大慧会の総本山、本丸といえるのが美術館の後ろにそびえる王舎城です。王舎城へ何とも潜入したいと思います。
王舎城へは、先ほど触れた「天の橋」を渡ってしか行けません。見た感じ、とりあえず右側の細長いビルへ行ってみる必要があるようです。美術館の受付のお姉さんには先ほど『お帰りはぜひシャトルバスを!』と言われていましたが、無視して歩いて降りていきます。
ということで、天の橋が繋がっているビルの1階に行ってみました。ビルは「宝殿タワー」って名前が付いているみたいです。
タワーの中に入ると受付があります。受付にはおじさんの警備員がいました。その方のお話を総合すると
- 橋(天の橋)を渡ると信者用の展示施設がある
- 詳しくは橋を渡った先の受付に聞いてね
- 館内の写真撮影はダメ(外観はOK)
とのことです。観光客向けの施設ではありませんが、決して観光客を拒絶しているわけでも無いようです(でも積極的に見学を促しているわけでもないです)。
エレベーターで上に昇ると、天の橋が見えてきます。
また意味深な色の通路です。前方にかまぼこ型の建物が見えてきます。あれが平等大慧会の本丸、王舎城です。
いよいよ潜入します。なお、館内は全て撮影禁止です。ここからは文章とイメージ図でお楽しみください。
館内に入ると受付があります。そこには、もうすぐおばあさん期に突入するおばさまがいました。信者ではない一般人の私に対して、決して拒絶的な反応ではありませんでした。
こういう宗教施設を取材する時の心得としては、決して敵対心や冷やかす心をむき出しにして行ってはいけない、という心構えが大切です。むしろフレンドリーな心で積極的に自分から話しかけていく姿勢が大事ですし、その方が安全です。皆さんも覚えておきましょう(∩´∀`)
受付のおばさん『今日はどちらからいらしたの?』
私『〇〇です』
受付のおばさん『あらぁ~今日は広島にお泊り?』
私『いや、日帰りです』
現在、コロナに対する私なりの感染対策として、なるべく日帰り強行軍(朝6時出発午後11時帰着)で取材を行うようにしています。その受付のおばさんにとって、広島に日帰り、なおかつこんな宗教施設にやって来る私は、非常に奇異なものに映ったのでしょう。こんな質問を投げかけてきました。
受付のおばさん『今日はここへはどのような目的で?』
そりゃそうです。アラサーの平成生まれの私が1人で来ているなんて、受付のおばさんからすれば謎です。「謎の宗教施設VSアウトローブロガー」のデスマッチです。まさか『アバンギャルドな施設があると聞いたのでブログのネタにしようと思って‥』なんて言えません。
私『美術館の企画展と、あと仏教などの宗教に興味があったので‥』
しかしながら、宗教施設の人に対して宗教に興味があるとか言っちゃう時点でアレです。もっとも、私は添乗員という仕事柄、四国のお遍路も行ったし、それなりに仏教の知識があるのであながちデタラメとも言えません。
私が仏教に興味があると聞いた受付のおばさんは、それから延々と人の生まれ変わりについて説き始めました。ちゃんと真面目に聞いていたつもりなのですが、頭の中では『ちょっと何言ってるのか分かんない(*'ω'*)』というフレーズがグルグル回り続けていました。
おばさんの話(注意事項)をまとめると以下のようになります。
- 当施設は6階建てである(6階より上は信者専用)
- それぞれの階が人間が死んだあとに行くとされる6種類のあの世が再現してある
- まずは6階に上がり1階ずつ降りてくるように見学してね
- フロアは左回りで見学するように
- もし右回りで見学したり下の階から見学すると、あなたはきっと苦しみます
お、おう(*'ω'*)
話に出てきた"6種類のあの世"とは、「六道」のことを指しています。
出典:世界『三大宗教(洋泉社)』
人間は死んだあと、現世の行いによってあの世での処遇が決まる。6種類のあの世(六道)をぐるぐる生ま変わり続けなければならず(輪廻と言う)、結構しんどい。でも大丈夫。この王舎城に仏様が降臨したので、人々を極楽浄土に導いてくれるわ!6階より上の階には、すばらしい極楽浄土の世界が広がっているの。え?見たいですって?なら、この「入会申込書」にサインしてね!…ってことらしいです。
今回の受付のおばさんは、私に入会を勧めてくることはありませんでした。『しつこく勧誘しなくても、きっと良さを分かってくれるわ♬』スタンスの方なのでしょうかね。
6階でエレベータを降りると、横の方に上の階へ行く階段がありました。階段は封鎖されており、上の階へは行けないようになっています。上の階へ行くには、信者用IDを持っていく必要があるみたいです。
その後言われたとおり、各階を左回りで見学しました。各階は、六道の世界観がフロアごとに再現されいます。信者の方が製作した絵画や彫刻が展示してあり、それらで例えば「地獄道」などの6つの世界を表現しているのです。スーツ姿をしたサラリーマンがガイコツ集団に囲まれている絵画とか意味不明です。
王舎城の入場は無料です。さっきのボッタくり美術館の入館料1000円を余裕で回収できるアウトローさでした。そして、誰もいません。コロナ禍ですけど、マスクする必要無い施設です。
1階まで降りてくると、高さ4mほどありそうな大きな仏像(お地蔵様かな?)が君臨していました。おそらく、これがこの王舎城のご本尊様なのでしょう。
お地蔵様の足元には、ちょろちょろと水が湧き出しています。「聖水」ってやつでしょう。側には、長テーブルが置いてあり、その上に賽銭箱と使い捨てのコップが置いてありました。そのコップでこの聖水を飲め、ってメッセージですね、分かります。
まあ、飲んだところで写真撮影も出来ないし、結婚できるわけでもないので、お賽銭を入れて記念にコップだけ持って帰ることにしました。聖水を飲みたい方は、各自お越しください。
終わりに…
言っておきますが、私は特定の宗教を信仰しているわけではありません。あくまで、フラットにアウトローでハートフルなものを追い求めているだけです。まあ、休みの日に1人で宗教施設に潜入するとか、宗教みたいなもんですけどね(´∀`)。
イラスト図解 社会人として必要な世界の宗教のことが3時間でざっと学べる [ 池上 彰 ]
※追記:この記事の続編として、同じ平等大慧会運営の宗教施設である鹿児島県の涅槃城へ潜入しレポートにまとめました。ぜひご覧ください。
※平等大慧会の元信者(宗教2世)の方にお話を伺うことが出来ました。
※2024年更新。平等大慧会の現役信者夫妻のインタビューに成功しました
なぜ人はカルトに惹かれるのか 脱会支援の現場から [ 瓜生 崇 ]
あわせて読みたい宗教系の潜入記はこちら