日常にツベルクリン注射を‥

現役の添乗員、そしてなおかつ社会科の教員免許を所持している自分が、旅行ネタおよび旅行中に使える(もしくは使えない)社会科ネタをお届けするブログです♪

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【第3回】昔(戦前)の女子会でのガールズトークをのぞいてみる記事【時には昔の雑誌を‥】

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出典:https://kitakamayu.exblog.jp

【時には昔の雑誌を‥】シリーズは、ツベルクリン所有の昔の雑誌を解説を入れながら読んでいくシリーズ記事です。1939年2月5日発行の『週刊朝日』の中の特集記事「兵隊さんありがとう座談会」というガールズトークを全3回にわたってお送りしています。今日はその最終回です。キャプチャ画像は、座談会メンバーの原節子さんです。

 

 

【第1回】(メンバー紹介など)

www.tuberculin.net

 

 

【第2回】撮影の苦労話など

www.tuberculin.net

 

メンバー表です

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ガールズトークの概要を説明すると、『週刊朝日』の男性記者である櫻木記者と間下記者、そして女流作家の森田さんが聞き手にまわり、若手女優の6名に対し色々聞いていくというスタンスの女子会です。

 

今回は女子会の定番トーク、"恋バナ"がメインです。ではまいりましょう。

 

 

<目次>

 

 

結婚について

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いよいよ女子会も佳境に入ります。話題は"結婚について"です。

 

 

森田さん『今度は結婚のお相手を考えましょうか?吉川さんは?』

吉川さん『まだ考えていませんわ』

森田さん『橘さんはまだね?』

橘さん『ええ』

森田さん『原さんは?』

原さん『別に今は考えていません』

 

 

なんだ、つまんないの(´・ω・`)』感を感じた司会の森田さんは、さらに攻め込みます

 

 

森田さん『好きになったとか頼もしいとか‥外国の俳優でもいいのよ』

原さん『ええ、別に‥やっぱり会って話をしてみないと分かりませんもの』

森田さん『具体的に言って背の高い人が良いとか、そういうことは考えませんか?』

美鳩さん『私は考えます。私、とても好きな人がいるんですの』

 

このセリフで一瞬、緊張が走ります

 

美鳩さん『でも奥さんがいるの、その人には(笑)ご夫婦で可愛がってくださるの』

森田さん『そういう感じで独身の方がいればいいわね』

美鳩さん『私、フランス語大好きなんです。その方はフランス語も良くできるし、絵の勉強もしてらっしゃるし‥だから私は好きなんです』

森田さん『それではっきりしたわ(笑) つまりフランス語が専門で絵が得意で落ち着いた男性、そういう方が(美鳩さんの旦那さんとして)立候補する資格があるのね(笑) 歌上さんは?』

歌上さん『男性的で明朗な方が好きですわ。よく男の方でも女性的な方がいますよね。そういうんじゃなくて紳士的な‥』

森田さん『それからお酒を飲まない人がいいとかそういうことは?』

歌上さん『全然飲まない方よりも、少しくらいは飲む方がいいと思います。』

 

 

そして、やっぱり森田さんは原さんの"好きな男性のタイプ"を知りたいみたいです。

 

 

好きな男性のタイプ

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森田さん『原さん、結婚の相手じゃなくてもいいから、好きなタイプの男性について伺いたいんですが‥』

原さん『会って好きになる人はいても、話をしてみて嫌いになることがあります。だから私は付き合っていない人は全然好きでも嫌いでも何でもないですわ。タイプというより感じですね』

森田さん『話をして嫌いになった方がいるんですか?』

原さん『あるんじゃないかと思うんです。今までそういう方に会ったことがありませんけど‥私の兄が(交際について)やかましいので、あんまり男の人と交際できませんわ』

 

 

80年前も「好きな異性のタイプは?」って質問がかわされていたんですね~。そして森田さんの質問にのらりくらりとかわす原さん。質問はまだ続きます。

 

 

森田さん『原さんとお友達になろうと思ったら、お兄さんのお眼鏡にかなわないといけないのね。お見合いなんかについては?』

原さん『お見合いしてすぐ結婚するのはどうかと思うけど、お見合いをして好きになって少し付き合って結婚するというようなのは、お見合い結婚といってもちっとも軽蔑していません。第一印象がよくてそのまま結婚というより、付き合った上でのほうが良いんじゃないかと思います。』

 

 

この1939年当時、お見合い結婚は全体の7割強でした。お見合いで結婚するのが多数派であり、当たり前の時代だったのです。そういう時代においても、原さんのような"お見合い結婚疑問派"がいたというのは興味深いです。

 

 

森田さん『お見合いは1つのチャンスでもあるわけですね。吉川さんは?』

吉川さん『私は男のお友達がいないの。たいてい女のお友達ばかりです』

森田さん『皆さん"ゴシップ"というものにずいぶん困ることがあるでしょう。結婚しようと思っていない人との噂を立てられたり…美鳩さんなんかどう?』

美鳩さん『私、劇団でも無邪気だっていう風に通っているので、そんなこと(ゴシップ)とは無縁ですの』

森田さん『噂を立ててくれないんじゃないの?(笑)原さんは、いつかそんな話ありましたわね』

原さん『ええ、二年前くらいはずいぶん気にしましたけど、今は全然気にしていません。ファンからこういう風に(ゴシップ記事が)出ているが本当はどうなのか、ちゃんと返事をくださいなどという手紙が来ますけども、いちいち弁解をしても始まりませんし、別に返事も出しません。分かる人には分かってくれると思いますので…』

 

 

今では、アイドルに関するゴシップ記事が出るとtwitterが炎上しますが、この時代も手紙という古典的な方法で炎上していたようです(´・ω・`)

 

 

ちなみに、分かっている限りで今回の参加者の「その後」についてですが…

 

〇橘公子さん→3年後の1942年に結婚

〇美鳩まりさん→5年後の1944年に結婚

〇原節子さん→生涯独身

 

美鳩さんは、自分が出演した映画の映画監督と結婚しています。フランス語が堪能で絵が得意という好きなタイプ論はどこへいったのでしょうか?当時(今もだけど)、監督と女優が結婚するというのは常識では考えられないことであり世間を驚かせました。

 

原さんは、森田さんの質問にも、のらりくらりとかわしていたのですが、実際のところ一度も結婚をしませんでした。「オトコなんていらないわ」感をインタビュー中にも出していましたが、キャラではなく本当にいらなかったんですね。

 

原さんが戦後大人気を博したのも"あの美貌でまだ誰のものにもなっていない"というのが世の男性諸君にウケたのでしょう。

 

 

 

ファンレターについて


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先ほどのトークの中で、原さんが「しょうもない手紙が届く」という話をしていました。話題は"ファンレター"に移ります。

 

間下記者『ファンレターには、いちいちお返事を出しますか?』

原さん『(返信のための)切手が入っている手紙だけには出します』

森田さん『切手を入れて返事をくださいっていうのが一番困るでしょうね』

原さん『そういう時にもたいてい返事は書かないで、プロマイドをあげますの』

櫻木記者『僕も1つ切手を入れてプロマイドもらおうかな(笑)』

森田さん『サインしたプロマイドがたくさん用意されているんでしょう。美鳩さんは?』

美鳩さん『私は女学生さんや学生さんからのお手紙が多いのよ。文章はとてもあっさりしています。だから簡単ですけど"一生懸命やります、お手紙ありがとうございました"といって必ず返事を出します』

森田さん『困るようなお手紙は来ませんか?』

美鳩さん『一度もきませんわ』

森田さん『歌上さんは?』

歌上さん『たまには(変な手紙)ありますけど、そういう時には全然返事は出しません』

森田さん『弟子になりたいっていうような手紙は?』

美鳩さん『私なんかありません』

原さん『そんなことを書いてくるのもありますけれど、ほったらかしにしておきますわ(笑)時々劇団で団員を募集しますから、そういう時に応募なさったらよろしいでしょうくらいな返事を出します。』

 

 

現在のアイドルなんかは『お手紙たのしく拝見しています』『たくさんの方がお手紙を書いてくださりありがたいです』くらい言うし、言わないとブログが炎上しますが、昔の女優さんはさっぱりしてますね。特に原さんの"塩対応"っぷりには脱帽です。

 

 

森田さん『吉川さん、お弟子さんになりたいって言ってくる人はいませんか?』

吉川さん『とんでもない、こっちこそどこかへ弟子に入れて頂きたいくらいですわ』

 

 

吉川さんの対応が現代でも通用する"twitterもブログも炎上しない"受け答えです。

 

 

森田さん『これは内緒の話なんですけどね。私の知っている男の子がとても國分さんに夢中で、この間手紙を出したんですって。もし返事が貰えたらお父さんにおごってもらえるんだって言っていましたわ(笑)』

 

 

森田さんのお知り合いの男の子のように、アイドルに夢中な男の子も『週刊朝日』を読んでいるのかもしれません。「ほったらかしにしておきますわ(笑)」とか言って現実を見せつけるのはやめてください(´・ω・`)

 

 

 

ダイエットの話


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女優さんたちですから、当然自分のスタイルも気になるところです

 

美鳩さん『体重ばかり気になってしまいます。太りたくって…』

吉川さん『私は反対だわ。痩せたくてしょうがないの』

森田さん『太るためにはホルモン注射をするといいのよ。美鳩さんはふっくらしてるように見えますが、痩せていますかね…』

 

森田さんめっちゃ失礼なこと言っちゃってます(´・ω・)

 

美鳩さん『12貫(約45キロ)あってもいいと思うんです、でも11貫(約41.25キロ)しかありません』

森田さん『歌上さんも体重は少ないでしょう』

歌上さん『松竹劇団を辞めてからとても太りました』

森田さん『あなたは体重どのくらい?』

歌上さん『12貫(約45キロ)くらいです。痩せたくって困っているんです。松竹劇団を辞めましたのは病気して辞めましたので、あれを飲めこれを飲めといて教えてくださるので栄養ばかり取っていたら急に太ったんです。しばらくお会いしていなった方に会うと"どうしてこんなに太ったの?"なんて言われます』

 

 

当時の女性の平均体重は47~48キロですから、みなさん平均より少し少なめの体重です。80年前の女性だってダイエット志向があるのです(まあ数年後、戦争が激しくなるとダイエットどころでない飢えに襲われるのですが…)

 

 

 

終わりに…

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間下記者『いろいろと愉快な話をお聞かせくださいましたが、この辺で皆様の名において戦地にいる兵士の方々に心からの感謝のお言葉を差し上げたいと思います。』

皆さん『ただ、兵隊さんありがとうございます、とこの他に申し上げる言葉は無いかと思います。』

 

今の今までファンレターがどうの体重がどうのとか話していたのに、急に「そういえばこの座談会のタイトル、"兵隊さんありがとう"やったわ」と思い出したように切り出し、みんなで『皇軍将士に感謝の歌』を歌って女子会はお開きとなりました…(*'▽')

 

 

 

まとめ

全3回にわたってお届けしました「80年前のガールズトークをのぞいてみる記事」、最後までご覧いただきありがとうございました。

 

戦前ってなんか暗い時代なイメージがあるじゃないですか。もちろん日本は戦争に向かって突き進んでいく時代ではあるんですが、人々の価値観って今とあんまり変わんないんですよね(全然違うところもあるけど)。昔の雑誌を通して、明るく懸命に生きてこられた人々の様子を垣間見ることができればいいなと思います(#^^#)

 

 

第1回、第2回を読み直したい方はこちらからどうぞ

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