日常にツベルクリン注射を‥

現役の添乗員、そしてなおかつ社会科の教員免許を所持している自分が、旅行ネタおよび旅行中に使える(もしくは使えない)社会科ネタをお届けするブログです♪

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もう添乗員付きの団体旅行(ツアー)は"過去の物"になっていくのかもしれない‥

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コロナ禍の影響でまともに旅行に行けなくなったじゃないですか(GO TOトラベルの時期とかあったけど)。旅行好きな方はきっと『コロナが収まったら旅行に行きまくるぞ!』って思っている方も多いはずです。

 

ただね、個人旅行は別として、バスツアーを始めとする団体旅行(団体ツアー)の方はどうかな~って思うわけです。

 

 

団体旅行を実施するには、様々な関係機関の協力が必要です。旅行会社(旅行代理店)、食事場所、観光地、ホテル、バス会社‥、団体ツアーを催行するためには全ての関係機関が連動して動く必要があります。じゃあ、これら関係機関がコロナ禍の今現在、生き残っているか?って話です。

 

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出典:JTB - Wikipedia

 

 

誰もが知っている大手旅行代理店、JTB。そのJTBが今期、1052億円の赤字だったそうです(21年3月期の連結決算)。

 

業績悪化のJTBは再浮上できるか コロナで夏も冬も賞与ゼロの衝撃(重道武司)(日刊ゲンダイDIGITAL) - Yahoo!ニュース

 

上のニュース記事を引用します。

 

業績悪化に対応してJTBでは昨年11月時点に6500人としていた21年度末までの人員削減幅を700人上積みする。すでに20年度下半期だけで2400人以上をリストラしており、これを7200人規模にまで広げる。さらに賃金カットも拡大、今年夏と冬の賞与はゼロとする方針だ。"

 

確かにJTBは大きな企業ですけど、1つの会社内で7200人もリストラしちゃったら、コロナが収まって旅行需要が高まったしても、その需要に応えられないんじゃないかな、と思うわけです。

 

 

 

個人的にリストラ人数よりもっと衝撃的だったのが次の一文です。

 

前期(2020年3月期)は16億円の黒字"

 

旅行業界最大手のJTBが、コロナの影響がほとんど無かった2019年4~2020年3月の決算ですら16億円しか黒字にならなかったんですよ。個々の価値観はあるでしょうが、私の価値観を当てはめれば「たった」16億円の黒字です。

 

ってことは、旅行代理店という業態そのものが限界に来ていたのではないかと思うのです。近年は「楽天トラベル」とか「じゃらん」とか個人旅行のネット販売が普及してきているし、海外のホテルだってホテル公式HP(日本語翻訳ページ付き)で直接予約も可能になりました。大手の旅行代理店を介さない旅行スタイルが広まっている最中での、コロナ禍だったのです。

 

 

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出典:近畿日本ツーリスト - Wikipedia

 

他の大手旅行会社も軒並み赤字(近畿日本ツーリスト284億円、日本旅行128億円)だったようです。おそらく、親会社による財政支援(それぞれ近畿日本ツーリストは近鉄、日本旅行はJR西日本の子会社)が入るので、いきなり倒産することは無いでしょうが、親会社もコロナ禍の影響受けているでしょうからね~。

 

 

仮に、コロナが収束に向かい、旅行会社が団体ツアーの募集を再開したとしても、今度は添乗員が足りなくなる事態が予想されます。

 

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このブログで何度も言及していますが、添乗員は旅行会社の正社員では無く、「添乗員派遣会社」から派遣された派遣社員がほとんどを占めます。派遣社員ですから、ツアーに添乗しなければお給料は出ません。完全歩合制の仕事なのです。

 

緊急事態宣言下では、ツアーは軒並み中止になりますから、その期間中の添乗員の給料は0です。むしろ税金とか引かれると収入がマイナスになる可能性もあります。

 

添乗員苦境、業界離脱で人手不足 GoTo時の配置に苦慮も | トラベルジャーナル

 

2020年の夏~秋にかけてGO TOトラベルキャンペーンが実施されていた時、団体ツアーが一瞬復活した時期がありました。ところが、収入が無くなった多くの添乗員が転職を余儀なくされていたため、添乗員不足に陥ってしまったのです。

 

まだ昨年(2020年)の段階では失業給付金などで耐え忍んでいた添乗員も、コロナ禍の影響が長引く中、永久に失業給付金を受給できる訳では無いので、今年に入って添乗員業界に見切りをつけた知り合いも数多くいます。

 

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出典:https://money.rakuten.co.jp/woman/article/2019/article_0393/

 

失業給付金の受給期間一覧です。最長でも330日間。多くの添乗員はすでに受給期間を終えてしまっているでしょうね。

 

 

 

団体ツアー客を運ぶ観光バス業界も苦境に立たされています。

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団体ツアーが出せなくなれば、当然観光バスの需要も減ります。2020年のバス事業会社倒産件数は過去最高だったようです。

 

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出典:https://response.jp/

 

もっとも、例えば地域の特別支援学校への送迎を契約している会社だとコロナ禍に関係なく収入はありますし、最近では"コロナワクチン接種会場送迎バス"のような需要も登場し始めたので、何とか踏ん張っている状態ではあると思います。

 

ただ、バスドライバーの離職は添乗員同様増えているものと予想します。バスドライバーはそのほとんどがバス会社の正社員ではあるので、雇われている限りは毎月固定給が入ってはきます。しかしながら、その固定給自体が十分な額とは言えないようです。私が親しいドライバーさんに直接聞いた話では、「残業代ありきの固定給」らしいのです。

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朝早く夜遅い仕事だからこそ、もらえる残業代が多かったのですが、仕事(バスツアー)に出なければ残業代は期待できません。そもそも、「働き方改革」の流れで、残業代を稼ぐ、って価値観自体が見直されてきてますしね。『命を預かる仕事なのに満足に収入が得られないなら‥』とバス業界から離職をするドライバーが増えているのです。

 

 

 

影響を受けているのはホテル&旅館も同じでしょう。

 

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出典:20年のホテル・旅館倒産、前年比79%の大幅増 |

 

2020年は2019年と比べて倒産数が倍増しています。特に、日本人の団体客&海外からのインバウンド客を頼りにしていた宿泊施設が軒並み苦境に立たされているみたいです。

 

 

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昭和期に各地に乱立した、団体バスが何十台も押し寄せて夜な夜なカラオケ宴会をやって大騒ぎするような"団体客御用達"の大型ホテルなどは、団体客がコロナ禍で来なくなって、かなり厳しいでしょうね。

 

 

 

このように現状を見ていくと、仮に完全にコロナ禍が収まり、気兼ねなく旅行に行けるようになったとしても、バスツアーなどの団体旅行はコロナ以前の状況にまで戻らないのでは、と予想しております。バスツアーの需要があっても、その需要に応える体力が旅行業界側に残って無いのでは、と思うのです。

 

 

 

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私は添乗員側の人間ですが、アフターコロナの世界では、添乗員が何十人ものツアー客を引き連れて観光地を練り歩くみたいな風景は無くなっていくのではないか、と考えています。行き先が海外であれば、まだ添乗員同行のツアーは残りうるとは思うんですけど、その気になれば自分たちで予約や手配が出来る国内旅行ではどうでしょうかね(*'ω'*)

 

 

コロナ禍でも生き残っている宿泊施設やお食事処の特徴を上げるとすれば「twitterインスタグラムなどのSNSを活用している」という点でしょう。

 

twitter.com

 

高知の桂浜水族館とか、いつ潰れてもおかしくない風貌の水族館ですが、twitterフォロワー数21万人と、地方の水族館としては異例の人数を誇っています。

 

 

旅行会社が連れてくる団体客ばかりに頼るのではなく、SNSを通じて自らの魅力を発信できる観光地や宿泊施設は、アフターコロナの世界でも生き残っていけそうな気がします。

 

 

 

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インターネットやSNSを駆使して魅力を発信できない施設はいずれ淘汰されていくのと同時に、観光客側にもネットリテラシー(インターネットを使いこなす能力)が求められてくるのではないかと思います。

 

そもそもコロナ以前から、旅行会社の中には「web申込特典」なるものを導入している会社も出てきてはいました。ツアーを電話ではなくwebから申し込むと、ちょっとした特典(お土産付きとか)が用意されていたのです。高齢者が多い団体ツアーではありますが、添乗員をやっていた私の実感としては、だいたい半分くらいの方がweb申込みだった記憶があります。

 

 

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恐らく、このコロナ禍によって、旅行会社の人員削減の中に"コールセンターのオペレーター"も含まれているはずです。ツアー募集が再開したとしても、電話申込みは制限される方向になる気がします。電話を受け取る人が減らされているでしょうから当然です。

 

 

政府側もこの「高齢者ネット使いこなせない問題」が気になっているらしく、数値目標を掲げたようです。

 

スマホ使いこなす60歳以上「26年に7割に」総務省が数値目標(毎日新聞) - Yahoo!ニュース

 

このニュースに対する私の意見は『むしろ遅すぎるくらいだ、もっとやれ(*'ω'*)』です。これだけ情報化が進んだ令和の時代ですから、高齢者だってネットやスマホを使いこなせた方が良いに決まってます。

 

 

若年層の中には「高齢者はネットとかスマホとか使えない」って思っているフシがあります。もちろん、そういう方々も多いのですが、案外使いこなしまくっている高齢者も結構な数います。 

高齢者はスマホが使えないというのは思い込み!?マーケターが祖母のスマホデビューを手伝った経験を語る|tayorini by LIFULL介護

 

私が添乗したツアーの中にも70代の方が『観光地の写真撮ってfacebookに載せるんです』っておっしゃっていたり、89歳の男性がipad片手に写真を撮り続け、『家に帰ったら撮った写真をDVDに焼くんだよ~』と語る場面に遭遇してきました。

 

 

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出典:高齢者はスマホが使えないというのは思い込み!?マーケターが祖母のスマホデビューを手伝った経験を語る|tayorini by LIFULL介護

 

かなり暴論ですが、本気でデジタル化社会を推進したいのなら、多少でも強引にデジタル化を進めていく必要があると思うのです。もちろん、高齢者層に対するケアは必要でしょうが、ネットが使えない層にばかり合わせていたら、これほどにまで情報化が進んだ国際社会の中でどんどん国際競争力を落としていきますよ。

 

 

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まとめると、コロカ禍後の旅行の動向ですが、

 

  • 団体旅行から個人(小グループ)旅行へこれまで以上に大きくシフトする
  • 添乗員(ツアーコンダクター)の仕事の数が縮小傾向に進む。
  • 旅行は電話で旅行代理店に予約するのではなく、旅行予約サイト(トリバゴなど)や施設のHPから直接web予約する時代へ
  • 自らネットを通じて魅力を発信できるようなスポット&宿泊施設でなければ生き残っていくのは厳しくなっていく

 

という方向に向かっていくのではないかと思います。修学旅行や一部の会社の社員旅行など、旅行代理店の仕事も多少は残るでしょうが、旅行業界が"文系学生の人気企業ランキング"の上位から転落してしまうのも時間の問題かもしれません‥。

 

 

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