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現役の添乗員、そしてなおかつ社会科の教員免許を所持している自分が、旅行ネタおよび旅行中に使える(もしくは使えない)社会科ネタをお届けするブログです♪

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中学生の教え子に場面緘黙症の生徒がいた話

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みなさんは「場面緘黙症(ばめんかんもくしょう)」という症状をご存知でしょうか?話せる能力はあるのに、特定の場面や環境(学校や職場など)になると、話すことが出来なくなってしまう症状のことです。

 

この症状をご存知無い方は、「えっ、そんな人いるの?」と思ったり、「それって"無口な人"でしょ?」と感じたりするかもしれません。しかし、場面緘黙症は性格ではなく症状なので、「話さない」のではなく「話せない」のです。

 

先日、Yahoo!ニュースで場面緘黙症の生徒さんについて書かれた記事を見つけました。

「場面緘黙症」の13歳少女がつくる極上スイーツ(1/2ページ) - 産経ニュース

 

この記事を読んで、私が中学校の教師だったころ、教え子に場面緘黙症(と考えられる)の生徒がいたことを思い出しました。

 

 

 

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新卒で中学校の現場に飛び込んだ私でしたが(担任は持っていなかった)、私が社会科を教えるクラスの中にA君がいました。生徒数が多い学校ではなかったので、私は給食時間や昼休みなども積極的に生徒と関わるようにしていました。そうしていると、A君が全く喋らないことに気付きました。

 

恥ずかしいことですが、当時の新卒の私は「場面緘黙症」を知らなかったのです。言い訳させてもらえるなら、当時は発達障害に対する理解がようやく浸透していった頃で、まだ場面緘黙症に対する理解が十分とは言えなかったのです。

 

A君と小学校が同じのクラスメイトに聞いてみると、小4くらいから学校で話さなくなったようです。友人だけしかいない空間ですら、です。ということは、違う小学校出身の生徒はA君の肉声を耳にしたことが無かったのです。

 

 

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若気の至りと言ってしまえば簡単ですが、当時の私は「よし、私の力で喋れるようにしてあげよう!」と意気込んでいました。もし、A君が私の指導力で喋れるようになれば、他の先生方から一目置かれるようになるだろうし、生徒からの評価も上がるだろうと考えたのです。今考えれば全く分かっていない教師です。

 

後述しますが、場面緘黙症の生徒に対しては、話さなくてもいい環境を作ってあげることがまず行うべきアプローチです。「喋れるようにしてやろう!」と前のめりになって指導するのは間違いなのです。当時の私は、それが分かっていなかったのです。

 

もちろん体罰はしてないですが、自分から話しかけまくったり、それに反応が無いのでこちら側も段々イライラしてきて…完全に悪循環なのです。なにせ、A君は私がどんなアプローチをしても全く喋らないので、A君が何を考えているのかイマイチ分からないのです。

 

 

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喋ることが出来ないので、口答えしてくることはありませんでした。ただ黙っているだけなのです。そんなA君が行った私への"抗議方法"が、私が教えている社会科の定期テストだけ一切答えを書かないことでした。他教科は平均点ほど取れるのですから、問題の答えが分からないという訳では無いのです。テストの問いに一切答えない行為は、話すことが出来ない彼の最大級の抗議方法だったのです。

 

この行為はさすがに応えました。それ以降の彼へのアプローチ方法を切り替えていくキッカケになったのです。

 

 

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幸い、彼は話すことは出来ませんでしたが、周りに友人が見守っている状況下において、私の質問に対し、頷きや首を横に振る動作で答えることが出来るようでした。協力的な生徒たち(同じ小学校出身)のおかげで、首の動作のみによる受け答えですが、ぼんやりとA君の心の内が見えて来ました。どうやら彼は、

 

  • 今の喋れない状態が望ましく無い状態だと分かっている
  • 将来的に人前で喋れるようにはなりたい

 

と思っているようでした。てっきり私は今後も出来れば喋りたくないものだと思っていたので、彼の答えは意外でした。そして、黙ってはいるけど、彼も心の中で葛藤してることに気付いたのです。

 

 

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当時の反省の意味も込め、また1人でも多くの方に場面緘黙症について考えていただきたく、この記事を書くことにしました。

 

そもそも、場面緘黙症で困っている人はどの程度いるのでしょうか?

 

200人に1人の割合で存在する"場面緘黙(ばめんかんもく)" 8月1日、2日はフォーラムも開催 〈BOOKSTAND〉|AERA dot. (アエラドット)

 

発症率に関しては明確になってはいませんが、おおよそ500人~200人に1人の割合で場面緘黙症の人が存在すると言われています。中規模以上の学校であればどの学校にも1人や2人存在していることになります。

 

誤解して欲しくないのが、この症状は決して新しいものではなく、平成&昭和期以前にも場面緘黙症の症状を持つ子が確かに存在していたはずなのです。『最近の子は甘やかされている』『近年はコミュニケーション能力の低下が~』などと、すぐ"昔はそんな子なんていなかった論"を唱えないで欲しいのです。いなかったのではなく無視されていただけなのです。

 

 

 

場面緘黙症を発症する原因は未だにはっきりと分かってはいません。

 

発症要因(原因)は、『不安になりやすい気質』などの生物学的要因がベースとしてあり、そこに心理学的要因、社会・文化的要因など複合的な要因が影響しているのではないかと考えられています。"

出典:専門家に聞く、場面緘黙(かんもく)について知っておきたいこと - 記事 | NHK ハートネット

 

内的要因(その子そのものの性格など)や外的要因(ストレスや環境の変化など)が複合的に作用して発症するものと考えれらています。発達障害や自閉症、吃音症などを併発している場合もあるでしょうし、学力や運動能力も平均以上なのに話すことだけが出来ないパターンの子もいるでしょう。家庭環境やしつけはさほど関係ないと考えられています。

 

 

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場面緘黙症の子どもはおとなしい子が多く、問題行動を起こすわけでもないので、ただの"人見知りの子"として支援の対象とはなってきませんでした。適切な支援や対応が受けられなかったり、『なんで喋らないんだ!』と責められたりすると、それが引き金となってうつ病や不登校などの2次的被害が生じてしまう可能性もあります。

 

場面緘黙症の子に対するアプローチの仕方としては、話せるようにさせるのではなく、話さなくても大丈夫な環境づくりに目を向けることが大事でしょう。頷いたり首を傾げたりすることで話さなくても意思疎通が出来る環境を作ってあげることが先決です。話せなくても文字を書いて自分の気持ちを伝えることが出来る子もいます。

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出典:話したいのに、話せない…。“場面緘黙(かんもく)”を知っていますか? - 記事 | NHK ハートネット

 

そしてその後に、話すうえで障害になっている不安要素を排除していってあげることが、周囲の大人が出来る対応策になってくると思います。

 

私が出会ったA君も、周りの生徒は『A君はそういう(話さない)人』と受け入れていたように思います。A君の症状が悪化しなかった’(彼は休むことなく毎日登校していました)のは、そのような周囲の子の姿勢のおかげであり、そんな環境を作った担任の先生の力量だと今では思っています。

 

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大事なことは、まず私たちが場面緘黙症という症状を持つ人々がいることを知ることです。場面緘黙症は、決して性格ではないのです。気持ちや根性でどうこうなるものでもありません。周囲の大人が圧力をかけるようなことがあってはいけません。そして、無理に話すことを強要したり、ましてや叱りつけたりするなんてもってのほかです。場面緘黙症の人に『ちゃんと話せ!』と言うのは、盲目の人に『ちゃんと見ろ!』と言うくらい残酷なことです。

 

 

もし自分の子にそんな症状が出たら、早めにスクールカウンセラーや診療科を受診することをお勧めします。早めに対処してあげることで、2次被害を防ぐことが出来ますし、本当に少しづつだとしても、症状の改善が見られるようになるかもしれません。

 


私はかんもくガール しゃべりたいのにしゃべれない 場面緘黙症のなんかおかしな日常 [ らせんゆむ ]
 

 

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