【学校で教えてくれない社会科】は、社会科の教員免許を所有しているツベルクリンが、学校で教えてくれないような役立たない社会科の授業をしていくシリーズ記事です。2時間目の今回は「ロッコール島問題から考える島と岩の違いについて」学習していきましょう。
前回の1時間目の授業の復讐はこちら(リライト済み)
日本って島だらけじゃないですか(*'ω'*)
ちなみにに日本には島が6852個あるとされています。
こちらの日本離島センターとかいうマニアックな団体が『島の数は6852個だ!』と言い張っています。
でもね、問題は何をもって「島」って言い張るかですよ。
もし、島の定義を「周りを海(もしくは湖)に囲まれた陸地」とするならば、例えば映画製作会社である東映のオープニング映像で登場する、波しぶきブチ当たっている"アレ"も島と言えてしまうことになります。でも、これを島とか言ってたら『いや"岩"でしょ』って言われちゃうと思います。
というように、「島」と「岩」の境界線と言うか違いというのは、非常に分かりにくいのです。今日の授業は、この違いについて実例を挙げてご紹介していこうと思います。もちろん、テストにも入試にも出ません。『そんな内容を勉強する必要があるのか?』と言われても、そんなこと自分で考えろ、って話です(*'ω'*)
<目次>
島と岩の定義について
日本国内では、海上保安庁が編集した『海上保安の現況(昭和62年)』において、島について以下のように定義しています。
- 周囲が0.1km以上のもの
- 何らかの形で本土とつながっている島について、それが橋、防波堤のような細い構造物でつながっている場合は島として扱い、それより幅が広くつながっていて本土と一体化しているようなものは除外
- 埋立地は除外
例えば、1994年に開港した関西国際空港は人工島なので、島の定義からは外れる、ということです。
国際的に見たらどうでしょう?1994年に発効した国連海洋法条約では、島の定義につて以下のように定めています。
- 島とは、自然に形成された陸地であって、水に囲まれ、高潮時においても水面上にあるものをいう。
- 島の領海、接続水域、排他的経済水域及び大陸棚は、他の領土に適用されるこの条約の規定に従って決定される。
- 人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない。
1項は島の定義について、2項は島の周囲の海の領有について、3項は岩の定義について書かれています。
ある意味シンプルな条文ではありますが、シンプルすぎて逆にトラブってます。というのも、1項の条文を重視して『1項さえ満たせばそれは島じゃん!3項とか関係ないわ!』という立場と、『いや、1項と3項の両方を満たさなければ島とは言えませんわ!』という立場に分かれてしまうからです。
ちなみに、日本は前者(1項さえ満たせば島だわ)の立場です。その立場から、日本最南端の沖ノ鳥島を島だと言い張っているのです。
このように、島の定義をめぐって対立が勃発してしまうのです。この「島か岩か論争」が盛り上がった実例が「ロッコール島問題」なのです。
ロッコール島問題について
イギリス北西部に「ロッコール島」という、よくわからない物体が浮かんでいます(上の写真)。
場所はこのへん
めっちゃ中途半端な位置にあるので、『ロッコール島はどこの国の物なん?』論争が巻き起こりました。イギリスを始め、周辺の国がロッコール島を欲しがったのです。
どうしてこんな島を欲しがったのでしょう?はっきり言って、島自体には価値はありません。欲しいのは周りの海なのです。
皆さんは中学校の社会科の授業で「排他的経済水域(はいたてきけいざいすいいき)」という単語を習ったと思います。どうせ覚えてないですよね(∩´∀`)。人間、真っ先に記憶から消去されていくのは中学校社会科の内容です。
排他的経済水域とは、海洋資源(海産物とか海底に眠っている油田とかワカメとか)を他国に邪魔されずに自分の物に出来る水域のことです。島をゲットするとその周辺の排他的経済水域もゲット出来るのです。ロッコール島の周囲には海底油田が眠っているともされ、それらの海洋資源を周囲の国々は欲しがったのです。
しかし、そんな論争の最中に発行されたのが前述した国連海洋法条約なのです。ロッコール島の周囲の国々は日本と違い、1項と3項を同時に満たさなければ島ではないという立場に立ちました。
3項では「人間の居住が出来る島」という定義づけが成されていたので、『ロッコール島なんかに住めるわけないじゃん』と周囲の国々は思ったのです。岩と判断されれば、排他的経済水域は付いてきません。
イギリス『岩ならイラネ、解散解散〜(*'ω'*)』
ロッコール島は『人間が住めないなら岩じゃん…』といった風潮が強まり、ロッコール島領有問題は沈静化すると思われました…。
環境保護団体によるロッコール島の"占領"
ところが、これでロッコール島問題は終わりません。 カナダ発祥のグリーンピースという『環境保護を訴えれば何をやってもOK!』と考えるアウトローお騒がせ環境保護団体が存在します。このグリーンピースが行動を起こします。
グリーンピースさん『ロッコール島みたいな島があるから、領有権問題が起こって周りの環境が荒らされるんだよ‼︎』
グリーンピースさん『ロッコール島を自分達の物にして、周囲の海の環境を守ろう‼︎』
グリーンピースさん『岩には排他的経済水域は付いて来ないって?じゃあ島と認められるようにしてやるよ‼︎ ロッコール島に住めばいいんでしょ、住めば(*'ω'*)』
グリーンピースさんたちは、ロッコール島を「占領」。あろうことか、ロッコール島を「ウェーブランド」という国名を付けて「独立」宣言をしました。国を作ることでロッコール島の周囲の海を自分達の排他的経済水域とし、環境保護をしようと企んだのです。アクロバティックな環境保護ですね。
そして住み始めました。
黄色い部分がグリーンピースさんたちの居住空間です。ロッコール島(岩)に「ウェーブランド」という国名を付けて、独立宣言をしたのです。
国旗まで作りました
グリーンピースさんは、狂信的なほどにクジラ保護を訴えているので国旗にも小学生が描いたようなクジラがデザインされています。『行動的なアウトローほど怖いものはない』‥ウェーブランド独立騒動はそう私たちに教えてくれています。
これに対してイギリスは『何それこわい。無視しよう』という態度を取ります。
その後、このウェーブランドを支援していスポンサー会社が倒産してしまったので、今現在は沈静化しています。アウトローを維持するにもお金がかかる、ってことです。
終わりに…(2020年8月追記)
この記事も1時間目と同じように、大学生のころSNSのmixi上の日記にアップしていた自己満社会科ネタ講座を修正・加筆したものです。そして、このロッコール島問題は私が中学校の教師時代に実際の授業で取り上げたネタでもあります。【学校でおしえてくれない】とか言ってるくせに、教えちゃってるのです。
会長 島耕作(11) (モーニング KC) [ 弘兼 憲史 ]
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