【ざつだん!】シリーズは、私ツベルクリンが日々考えていることを垂れ流していく日常系記事シリーズです。今回のテーマは、「添乗員の仕事で出会ったほっこりとするお客様」についてお話ししていきます。
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私はツアーに同行する添乗員をやっています。仕事柄一度に多くのお客様(バス1台で30人〜40人)とお会いします。今まで同行したお客様の数は、もしかすると1万人に達しているのかもしれません。
当然、その中には色んなお客様がいます。お客様の年齢層としては、60代以降が多いです。人生の先輩方ですから、色々教わることもあります。今回は、その中で印象に残ったり、『将来こういうお年寄りになりたいな』と思えるようなお客様をお話ししていきます。
<目次>
70代のご婦人のお客様
ご友人とお2人でツアーにご参加なさった70代の女性がいました。そのツアーは、観光列車に乗るツアーでした。
ご婦人の友人同士でご参加されるグループは多いので、『ご主人様はお家で留守番なんだな‥』って思っていました(多くの場合、そうです)。
その70代のご婦人は観光列車のお席に座ると、カバンの中から"ある物"を取り出しました。手のひらサイズの、恐らくご主人様と思われる"遺影"でした。
もちろん、配偶者を亡くしておられるであろうお客様は年齢層的に多いと思いますが遺影をお持ちになるのは、このお客様が初めてでした。『あぁ、きっとご夫婦で一緒に来たかったんだろうなぁ‥』と思ったのです。
と、同時に『‥ってか夫婦で来とるやんけ、今日(*'ω'*)』と思い直し、お客様へ手渡しでお配りしていた記念乗車証を余分に一枚、車掌さんからもらいました。そして、そのお客様の元へ行き『大変失礼いたしました、今日は"ご夫婦"でお越しになっておられたのですね。こちらは、ご主人様の分です』と言って渡してあげました。
そのご婦人は、とてもお喜びになり『家に帰ったらこの記念乗車証、お仏壇にお供えしてあげます!』とおっしゃってくれました。これからも、"ご夫婦"でお出かけして欲しいなと思ったのです。
93歳のおばあさま
ツアーに1人でご参加されるお客様は割と多くいます。最近では、"お1人様限定ツアー"とかもあります。もちろん、お1人様でご参加するには、ある程度しっかりしたお客様でないとご参加しにくいのですが、これまで私が経験した中で最も高齢の1人参加者は93歳のおばあさまでした。
いくら高齢者社会だからといって、93歳まで生きる時点で長生きです。そして、そのご年齢でしかも1人でツアー(しかも新幹線で行く遠出のツアー)にご参加されるってすごいことです。
あらかじめ、お客様の年齢は名簿上で把握しているので、準備の段階で『93歳か‥各個所ではゆっくり歩いて誘導しないといけないな‥』って考慮しておきます。
そのような心づもりで当日お会いして、ツアーが始まると、ゆっくり誘導する私を尻目にスタコラと先を行く93歳のおばあさま(*'ω'*)。まさしくその姿は競歩であり、どんどん加速していきます。『あれ、もしかして歳を取るごとに加速するのか?』と錯覚しました。
そのツアーも観光列車に乗るツアーでした。その列車の中でおばあさまは、高速道路マップを眺めていました。高速道路マップって非常に小さい文字で書いてあり、普通の高齢者では恐らく読めないと思います。
そのおばあさまは、眼鏡無しで読んでいたので周りの同じツアーのお客様が『おばあちゃん、その文字読めるの?』と聞いていました。おばあさまはこう答えます。『60代の時に老眼鏡をかけ始めて、だんだん度数が大きくなっていくうちに、ある日を境に裸眼で見えるようになったの~』と。サイボーグ人間かよ(*'ω'*)。
そのおばあさまを見てると、人間『自分はもう歳だから‥』って思っちゃダメなんだなと感じます。そう思った時点で老いは進行していく気がします。人間、生きている以上は現役なのです。
80代後半のご夫婦
やはりツアーのお客様の多くは、ご夫婦でご参加なさることが多いです。中には、結婚記念日でツアーにご参加されるご夫婦もいらっしゃいます。
ところで、世間一般では「銀婚式・金婚式」なる節目があります。銀婚式は結婚25周年、金婚式は結婚50周年をいいます。銀婚式や金婚式の記念でツアーにご参加される方はたまにいらっしゃいます。
私がかつてご一緒したご夫婦の中に"ダイヤモンド婚式"の記念のご夫婦がいらっしゃいました。ダイヤモンド婚とは、結婚60周年記念です。なかなかご夫婦そろって60年を迎えるご夫婦はおられません。(どちらかが鬼籍に入ったり、そもそもツアーに参加できるほど体調が良くないのです)。
その80代後半のご夫婦は、ホームヘルパーさんと3人でツアーにご参加なさっていました。ご主人様は1人で歩けましたが、奥様は車いす移動でした。ツアー自体は順調に進み、北陸の金沢市内にあるお茶屋さん街(ひがし茶屋街)に行った時の話です。
希望の方は、私行きつけのお茶屋をご案内するのですが、古くからあるお店なのでバリアフリーという概念がありません。そのご夫婦のご主人様は興味があったらしく、中へご案内しましたが、車いすの奥様とヘルパーさんは玄関でお待ちになっていました。
しばらくすると、ご主人様は小さな袋を抱えお店の奥から出てきました。このお茶屋さんでは、金沢名物の金箔を使用した化粧水を販売していたのです。きっと、ご主人様は店員さんに聞いたのでしょう。その化粧水を買って来て、その場で開封し、車いすの奥様の手の平に丁寧に化粧水を擦り込んであげ始めました。
『店員さんがこれが一番良いって言ってたよ。これを塗ったらもっと綺麗になるね~』と言いながら、丁寧に丁寧に奥様の手を握って化粧水を手の甲に塗ってあげていました。
さすが、60年間一緒に生きてきたことはあるなと感じました。なかなか戦前生まれの男性は亭主関白的なところがあって、こういう行動をする人は少ないのですが、60年間これほどまでも愛を貫けるのかと、とても感心してしまいました。
こういう事を言うのは、無茶な話かもしれません。でも、営業のため言っちゃいます。『結婚70周年記念って何て言うか知ってます?"プラチナ婚"ですって。プラチナ婚の記念の際には、ぜひツアーにご参加くださいね』ってね。
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旅行に行けるのは幸せなこと
旅行に行けるって実はすごく幸せなことなんです。旅行に行けるだけのお金と体力と気力があるのですから。『あぁ、またお土産屋さんでお土産買っちゃった~。もう買わないつもりだったのに~』口では文句を言っていますが、その顔は幸せそうです。
そして、反対に不幸なことは『もう歳だから旅行に行けない‥』と思ってしまうことです。きっと、当ブログをご覧の読者様のご両親ってかなりのご高齢である方もいらっしゃると思うのです。でも、ツアーのお客様の中には80、90歳を超えても元気にお見えになる方もたくさんいらっしゃいます。
どうか、どうか『もう歳だから旅行に行けない‥』なんて思わないでくださいね。もちろん、足が悪くて他の人と一緒に歩けない、なんて方(もしくはご両親がそのような状態の方)もいるとは思います。添乗員という存在は、決して介護士ではありませんが、『何とか旅のお手伝いをしたい』と思ってお仕事をしています。もし、躊躇しているようだったら、ぜひ頑張ってツアーに参加してみませんか?
終わりに‥
たまには、真面目な記事だって書くんだぜ~アウトローだろぉ~(*'ω'*)
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