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現役の添乗員、そしてなおかつ社会科の教員免許を所持している自分が、旅行ネタおよび旅行中に使える(もしくは使えない)社会科ネタをお届けするブログです♪

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自分が受け持つクラスの児童が水難事故で犠牲になった際の対応と学校側の責任について

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2023年の夏も日本各地で水難事故が多発してしまいました。今年、私が最も記憶に残っている水難事故は、7月21日に福岡県宮若市で小学生の女児3人が犠牲となった水難事故です。

 

www.yomiuri.co.jp

 

皆様のご記憶にもあろうかと思います。

 

 

元中学校教師の私が気になるのが、このような悲惨な水難事故が起きた場合、その犠牲となった子供が通う学校では事故の一報を受けてどうような状況に陥り、どう対応が成されていくのか、という点です。さらに、事故の責任を学校側はどう問われていくのか(そもそも責任はあるのか)、その点も気になります。

 

 

例えば宮若市の水難事故では、事故の後に緊急の保護者説明会が開かれました。

 

出典:福岡・宮若の3女児死亡 保護者に説明会 | 毎日新聞

 

ただ、保護者説明会はマスコミに対しては非公開であり、我々がその様子を知ることは出来ません。果たしてどのようなことが話されているのでしょうか。

 

 

今回の記事では、過去に自分の受け持っていたクラスの児童が夏休み中に水難事故に遭い亡くなってしまった担任の先生(以下A先生と表記。私と非常に近い存在の人物、とだけ言っておきます。察してください)に、話を聞くことが出来ました。

 

記事の前半ではその話をまとめ、後半では学校はどこまで責任を持つべきなのか、宮若市の水難事故とA先生が遭遇した水難事故を基に、自分なりに考えてみました。

 

今回言及する水難事故(過去に実際に発生したもの)に関する記事は、検索すれば2023年現在も引っかかります。そのため、個人の特定を防ぐ観点から、ある程度ぼやかした表現で書いていきます。あらかじめご了承ください。

 

 

 

<目次>

 

 

 

事故の概要

 

 

まず、水難事故の概要についてです。詳しく書くと色々問題になるのでぼやかして書くと以下の通りになります。

 

  • 2000年~2023年の間に発生した事故
  • 発生時期は8月(夏休み期間中)
  • 父親と子供で海に泳ぎに来ていた
  • 海岸で泳いでいた際に水難事故に巻き込まれる
  • この事故で小学生の児童およびその父親が亡くなる
  • よくある"子供が先に溺れ助けようとした父親も…"パターン
  • ライフジャケットの着用は無し(ビート板のようなものを持ち遊泳)
  • 水難事故の大きな原因は"離岸流"
  • その場所は過去にも事故が発生しており、遊泳禁止区域に指定されていた

 

この事故で亡くなった小学生男児を受け持ってた担任が、今回話を聞いた先生(A先生としておきます。A先生と私はとても近い関係にある、とだけ言っておきます)です。

 

 

離岸流とは、海岸の波打ち際から沖合に向かってできる流れのことをいいます。

 

出典:知らないと怖い「離岸流」の特性と対処法 - ウェザーニュース

 

1秒間に2mほど押し流される強い流れであり、オリンピック選手でもこの流れに逆らって泳ぐことは出来ないと言われています。離岸流に飲まれた際は、海岸に向かってではなく、海岸と平行に泳ぐと流れから脱出することが出来ます。もっとも、流れに飲み込まれてパニックになっている状況下では、上手い判断が出来ない恐れもあります。

 

離岸流が原因(とされる)で多数の犠牲が出た事故の例として「橋北中学校水難事故」が挙げられます。

橋北中学校水難事件 - Wikipedia

離岸流が原因とされるが、詳しい事故原因は分かっていない

 

 

 

以下、当記事ではこの水難事故を「男児離岸流水難死亡事故」と表記します。

 

 

 

亡くなった児童の通う学校の対応

 

 

 

男児離岸流水難死亡事故の発生した日の翌日、現場近くの海で男児とその父親が遺体となって発見されました。発見を受けて、男児の通う小学校では臨時の保護者説明会が開催されました。

 

 

 

2023年の宮若市の水難事故では、亡くなった児童の通う小学校の校長が記者会見を開きました。

 

出典:川遊び中に溺れた女児3人が通う小学校が会見 事故の経緯を説明 福岡県宮若市(FBS福岡放送) - Yahoo!ニュース

 

『学校側が記者会見を開く必要があるのか?』という問いについては、後述します。少なくとも、今回の記事で取り上げている男児離岸流水難死亡事故では、学校は記者会見を開いてはいません。

 

話を戻します。離岸流水難死亡事故を受けて、男児が通っていた小学校では緊急の保護者会が開かれました。保護者会の対象者は、死亡した児童のクラスの保護者のみ(子供の参加はNG)だったそうです。

 

そのクラス保護者会には、担任のA先生および管理職(校長&教頭)が出席。基本的には校長が保護者に対し説明をしたそうです。

 

保護者説明会における説明内容は以下の通りです。

 

  • 事故の概要説明
  • お通夜及び葬式の詳細、日程連絡
  • 2学期からスクールカウンセラーを派遣してもらうこと

 

お通夜や葬式にクラスメイトの児童を参加させるかどうかは、各保護者の判断に任せる、とのことだったようです。

 

 

保護者説明会、と聞くと保護者からの批判の声や怒号が飛び交うイメージを持たれているかもしれませんが(そういうのって学校側を批判したいマスコミが欲しがる画ではありますよね‥)、男児離岸流水難死亡事故における保護者説明会では、そのようなことはなく、みなさん淡々と説明を聞いていたようです。

 

 

というのも、この男児離岸流水難事故は、いじめ自殺事件などと違って、明らかに学校側に問題があったケースではなかったからです。保護者に連れられて遊泳禁止の場所で泳いで水難事故に遭ってしまったものであり、どう考えても水難事故の責任は保護者である父親にあります(亡くなった方に対して申し訳ないですけど)。他の保護者だって、口にはしないですが、そう思っていたはずです。

 

 

2学期の最初の始業式では、水難事故についてはあえてノータッチだったそうです。学年が違っても、子供ながらに夏休み中に何が起こったのかくらいは察することが出来ます。それをわざわざ掘り起こさなくてもよい、との判断だったのでしょう。子供たちも、事故から2学期が始まるまで2週間以上間が空いたので、子供たちなりに心の整理をつけて2学期を迎えたのであろう、とA先生は推察していました。

 

 

A先生に関しては、説明会の対応や2学期以降の子供へのケアについて協議するなど対応に忙殺され、悲しむ余裕が無かったと振り返っています。

 

 

 

 

スクールカウンセラーについて

 

 

A先生に当時の話を聞いたところ、一番の困難となった部分は事故を受けて派遣されてくるスクールカウンセラーとの関係性であったと言及していました。

 

スクールカウンセラーとはどのような存在なのか、以下記事より引用します。

 

"スクールカウンセラーとは、心理についての専門性を持ち、学校において、児童・生徒が抱えるさまざまな課題について解決のための助言や指導などをおこなう者のことです。スクールカウンセラーは小学校と中学校、近年新設されている義務教育学校(小中一貫校)や高等学校、中等教育学校や特別支援学校などに配置されています。"

出典:スクールカウンセラーとは?役割や相談事例などを解説します【専門家監修】

 

"学校がスクールカウンセラーを採用するのではなく、各都道府県または政令指定都市の教育委員会が採用し、派遣先の学校を決める仕組みになっています。このため、スクールカウンセラーは学校と児童・生徒、保護者にとっては「第三者」という立場になります。"

出典:同上リンク先

 

 

 

 

スクールカウンセラーは、教師とは違う立場で子供たちに対しアプローチしていきます。もちろん、教師とスクールカウンセラーは情報共有しながら協力して子供たちのメンタルケアを進めていくことが望ましいのですが、立場が違うゆえの食い違いも生じてきます。

 

 

 

A先生のクラスには、不登校ぎみの児童がいました。水難事故後に派遣されてきたスクールカウンセラーは、A先生に対し『この不登校は水難事故が原因ではないか。家庭訪問などして早急にケアに当たるのが望ましい』『対応策を報告書にまとめ提出するように』と詰めるようなかたちで要求してきました。ところが、この児童は事故が起きる前の1学期から不登校ぎみであり、水難事故と不登校の間に因果関係が認められるとは言えない状況だったのです。

 

 

A先生もすでに1学期から継続して対応中であり、その点をカウンセラーに相談しましたが、カウンセラーは「水難事故が不登校の原因である」との姿勢を崩さなかったようです。

 

 

スクールカウンセラーは、たいてい「子供ファースト、子供が第一!」という姿勢で派遣されてきます。もちろん、その姿勢で大いに結構なのですが、その姿勢が水難事故で教え子が犠牲になってショックを受けている教員を圧迫するものあってはならないのです。

 

 

もっとも、この当時は教員のメンタルケアに関してはほとんど注意を払われることはなかったのでしょう。メンタルケアが必要な存在として見られていなかったのです。(ちなみにA先生は現在も教員として勤務しています)。

 

 

 

スクールカウンセラーの雇用形態は非常勤としての勤務が基本です。現在、日本の公立学校(小学校~高校&特別支援学校)はおよそ3万6000校ほどあり、スクールカウンセラー3万人ほどいます。すなわち、公立学校の数>スクールカウンセラーの数となり、1人のカウンセラーが複数の学校の掛け持ちせねばならない状況にあることが分かります(私立学校は独自で取り組んでいる)。

 

 

理想としてめざすべき方向性は、スクールカウンセラーを常勤勤務とし、各学校に最低1人は勤務させることでしょう。ポッと派遣されてきたカウンセラーがその学校の実情を短期間で知ることは困難でしょうから、ならばカウンセラーを常勤させて各学校の実情を詳細に把握させたほうが心のケアも正しい方向で進みやすいのではないでしょうか。

 

 

もっとも、「スクールカウンセラーの常勤化」を、目指すためにはカウンセラーの数を増やさねばならないのですが、問題はどうやってその質を維持していくか、です。

 

福岡市の高2女子自殺 学校側の臨床心理士「いじめ認定しても加害者に良いことはほとんどない」遺族に発言(TNCテレビ西日本) - Yahoo!ニュース

 

上記ニュースは私立学校のケースではありますが、今年5月に発生した福岡市立の私立高校に通う女子生徒がいじめを苦にして自殺した事件が発生しました。学校側の臨床心理士(スクールカウンセラーは臨床心理士の資格を持っていることが多い)が、遺族に対して『いじめを認定しても加害者にとって良いことはほとんどない。生きている生徒(加害者)を守りたい』と発言していた事実が明るみになったのです。

 

 

スクールカウンセラーと聞くと聖人君子のような立派な人物像を想像しますが、なかには職務上ふさわしくない言動を放つような者も存在しているのです。

 

もちろん、立派に勤務なさっているスクールカウンセラーも大勢いらっしゃいます。その点はご理解しているつもりです。ただ、中には‥って話です。

 

 

 

 

 

 

学校はどこまで責任を負うべきか



話を水難事故に戻します。水難事故が起こった際、学校側はどこまでその責任を負うのでしょうか。

 

2023年の宮若市女児水難死亡事故では、女児が通う小学校の校長が記者会見を行いました。このことに対し、『そもそも学校外の事故に対し、校長が会見を行う必要があるのか?』といった疑問を呈す記事や意見も見受けられました。

 

wedge.ismedia.jp

 

 

宮若市の事故もA先生の離岸流水難死亡事故も、"学校の拘束期間外(夏休み中)"に"学校外"で起こった事故です。事故後の他の児童に対するメンタルケアや保護者への説明は必要でしょうが、事故そのものに対する責任は一切ないと私は考えます。一部マスコミによる『子ども達への指導が十分ではなかったのではないか?』と学校側を責める姿勢が見受けられたりもしましたが、的を射た批判とは思えません。

 

 

 

学校を始めとする教育機関がどこまで責任を負うのか、それを考えるにあたって議論になりそうな事件が最近起こりました。

 

www3.nhk.or.jp

 

9日津山市で、孫の目瀬陽翔くん(2)を、勤務する病院の駐車場に止めた乗用車の中に、およそ9時間半にわたって置き去りにして、死亡させたとして、祖母で介護助手の柴田節子容疑者(53)が、過失致死の疑いで逮捕され、11日朝に送検されました。警察によりますと遺体を調べた結果、死因は熱中症だったことが分かりました。

これまでの警察の調べに対して容疑者は、近所に住む長女に、9月から保育所への送迎を頼まれていて「送ることを忘れてしまった。考えごとをしていた」などと供述しているということです。"

出典:上記リンク先記事

※リンク先の記事消滅してしまったみたいです

 

 

この事件において、保育園側が出欠確認をしていなかったことが問題視されました。もちろん、保育園側が出欠確認をしていれば、もしかしたら子供の命を救えたかもしれません。しかしながら、あくまでそれは可能性の話です。この事件は、登園前に起こったものであり、事故の責任はどう考えても保護者(このケースは祖母)にあります。

 

 

これは、学校でも言えることですが、学校(もしくは保育園など)の登校前もしくは下校後に起こったトラブルについては、基本的には教育機関側に責任は無いはずです。

 

 

 

もっとも、この事件を受けて岡山県は、県内の保育施設に園児の出欠確認の徹底を通知したようですけど

 

2歳男児置き去り死亡事故を受け「出欠確認の徹底を」岡山県が25市町村の保育施設へ通知(RSK山陽放送) - Yahoo!ニュース

 

じゃあ、保護者に電話繋がらなかった場合、1回着信を残せばいいのか、3回くらいかければいいのか、それともつながるまで何回もかけ続けたらいいのか、基準が分かりません。出欠確認に手間をとってしまい、すでに登園している園児たちのケアがおざなりになってしまっては本末転倒です。

 

 

繰り返しになりますが、学校や幼稚園・保育園などの教育機関の外で起こったトラブル(保護者が送迎中に園児が熱中症になった等)ついては、教育機関の責任は存在しないはずなのです。学校が悪い、保育園のせいだ、と責任を転嫁し続けていけば、組織は疲弊し、そのしわ寄せは子供たちへ向けられていく事になるのです。

 

 

 

 

終わりに…

 

話があちこちに飛んでしまい、読みにくい文章になってしまったことをお詫びいたします。今回は、実際に発生した水難事故の事例をもとに検証していきました。結局のところ、学校の外で起こった水難事故に関しては、学校側の責任は無いし、責任は無いからこそ学校側が出来ることは限られてくる、と言えます。

 

 

これが、学校のプールの授業中に溺れた、となると話は変わってきますが、学校外の水難事故に関しては、学校以上に保護者が責任を持って子供への注意喚起を行う必要があるのです。学校に全ての責任をなすりつけるような姿勢は望ましくありません。何のための保護者なのか、って話です。

 

 

今回取り上げた離岸流男児水難事故は、あきらかに遊泳禁止の場所へ子供を連れだした保護者(父親)の責任であり、他の保護者もそれは理解していたそうです。ただ、今後も似たような事故が起き、学校側に対し責任を追及されるようなケースが発生するかもしれません。

 

 

子どもの第一義的責任は学校側ではなくまず保護者にあるはずです。その上で保護者と学校側が協力し合うことで、はじめて子供たちの安全がより強固なものになっていくのです。

 

 

 

 

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