【保存版】シリーズは、筆者であるツベルクリンが色々なジャンルの有益かつ無益な情報を書いていくシリーズ記事です。今回のテーマは「世界遺産の候補地の候補地を紹介する記事」です。
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2020年現在日本に世界遺産は23個あります。
だいたいの観光地はちょっとでもスキを見せれば、すぐに世界遺産になりたがります。
以前、「大河ドラマの題材として立候補している地」というテーマで記事を書きました。世界遺産も大河ドラマも考え方は一緒で、採用や登録されればかなりの経済効果がもたらされます。その経済効果が欲しいのです。
ところで、みなさんは世界遺産はどのように決定されるかご存知ですか?
出典:世界遺産条約 - JapaneseClass.jp
まあ、詳しいことはどうでもいいんですけど、上の図の赤枠にあるように各国の政府がユネスコに提出する"世界遺産暫定リスト"に記載されることが、世界遺産登録への第一歩です。暫定リストに記載されるということは、少なくとも政府に候補地として認められたってことになります。
では、現在日本政府の世界遺産暫定リストに記載されている世界遺産候補はどこがあるかというと、
〇古都鎌倉の寺院及び神社(神奈川県)
〇彦根城(滋賀県)
〇飛鳥・藤原の宮都とその関連遺産群(奈良県)
〇北海道・北東北の縄文遺産群
〇金を中心とする佐渡鉱山(新潟県)
〇奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島の自然遺産(鹿児島&沖縄県)
このうち、「鎌倉」と「彦根城」は30年近くずっーーと暫定リストに記載され続けている"永遠の候補地""終身名誉候補地"みたいな立場で、半ば諦めムードってか候補地で満足、みたいな状態です。
じゃあ、この記事のタイトルにもある"候補地の候補地"て何なのか説明すると、暫定リストにもまだ記載されていない(日本政府から世界遺産の候補地と認められていない)、「候補地(自称)」ってことです。酷な言い方をすると「〇〇を世界遺産に!」とその地域で勝手に盛り上がっている所です。
そんな世界遺産候補地の候補地を今日はご紹介していきましょう。
<目次>
足尾銅山(栃木県)
2007年に島根県の石見銀山(いわみぎんざん)が世界遺産に登録されました。日本有数のマニアックで地味な世界遺産です。これに触発されたのかは知りませんが、『銀山で世界遺産になれるのなら銅山でもいけるぜ!』と思って勝手に盛り上がっているのが栃木県の足尾銅山です。
石見銀山は「銀を採掘しつつも環境に配慮した生産方式だったのよ」を売りにしていた鉱山でした。それに対し足尾銅山は「銅を採掘しながら周囲の環境を破壊していくぜスタイル(でも環境破壊に気付かされたぜ!)」をアピールしているヒップホップ系候補地の候補地です。
知名度で言えば、石見銀山や前述した佐渡金山より足尾銅山の方が高いと言えます。なぜなら、足尾銅山の公害問題は小学校の社会科の教科書に必ず載っているからです。そして、日本初の公害問題に立ち向かった偉人として田中正造(たなかしょうぞう)もセットで出てきます。田中正造は栃木県から選出の国会議員であり、足尾銅山公害問題の解決に尽力した人物です。
問題は、鉱山系観光地は、観光客の維持が難しいという点です。
出典:https://www.chukei-news.co.jp/
上のグラフは、石見銀山の観光客数の推移を表したものです。2007年に世界遺産に登録された石見銀山は、翌08年にピークを迎えます。そしてそれ以降は下がりまくり、最近ではむしろ登録前よりも減った感すらあります。鉱山系は「1回見れば満足」なのです。
出典:https://gurutabi.gnavi.co.jp/
まあ、足尾銅山がある栃木県日光市は、すでに日光東照宮っていう金ピカ世界遺産がありますからね。これ以上、観光客増やしてどうすんの?って感じです(*'ω'*)
シルク岡谷の近代化産業遺産群(長野県)
出典:旅行のクチコミとホテル・ツアー・航空券の料金比較【フォートラベル】
現在の日本ではほとんど作られていない生糸(きいと)。それでも昭和30年代までは各家庭でもグロテスクな幼虫である蚕(かいこ)を飼育して生糸の原料である繭(まゆ)を作っていたようです。
蚕がはき出した繭を生糸にすることを製糸(せいし)といいます。明治時代以降、日本には数多くの製糸工場が作られました。生糸は戦前までの日本の重要な輸出品目、言い換えれば外貨獲得製品でした。
社会科の授業で習う有名な製糸工場は群馬県にある富岡製糸場でしょう。ただ、地域全体で見た時にもっとも製糸業が盛んだったのは、長野県の岡谷(おかや)であると言えます。
岡谷の製糸工場で働いていたのは貧しい家庭の10代の少女たちでした。彼女たちの多くは家の暮らしを少しでも豊かにするために、隣の岐阜県から野麦峠(のむぎとうげ)を超えて岡谷まで出稼ぎに来ていたのです。
その時の過酷な様子は映画『あぁ野麦峠』で描かれてます
主人公役には、明石家さんまの元奥さんが出演しています。
明治時代~昭和初期の頃の製糸業遺産が岡谷には残っているんですけども、すでに製糸業関連は"日本初"の製糸工場である富岡製糸場が世界遺産に登録されちゃってますからね~。どうしても二番煎じ感はあるのです。
松本城(長野県)
現在の松本城は、豊臣秀吉が天下統一を成し得た1590年以降に、石川氏によって整備されたものと言われています。
石川氏は古くから徳川家の家臣であった一族にもかかわらず、途中で豊臣家に寝返っちゃいました。後の歴史を知っている我々からしたら、めっちゃ判断ミスです。その石川氏が豊臣家家臣時代に建造したのが、このクソ豪華な松本城です。
ところが石川氏は8万石程度の小大名であり、この松本城は豪華すぎます。住民を酷使して建造されたことは容易に想像できます。
世界遺産に登録された姫路城は、山陽道(昔の道の名前)に位置しており、西の守りの拠点であったのであの豪華さは分かります。ですが、長野県の松本のようなド田舎にこんな豪華なお城なんてあっても無意味です(まあ、松本も中山道が通っているんだけども)。
松本城は、復元ではない当時の姿を今にとどめる貴重な建造物であるんですが、世界遺産に登録されている姫路城と比べてみるとやや"格落ち感"が否めません。それに、同じお城カテゴリーで言えば"終身名誉候補地"である彦根城先輩がいます。まずは、先輩へのご機嫌取りが必要です。
四国八十八カ所霊場と遍路道
四国八十八カ所とは、今から1200年前に弘法大師(空海)が整備した88カ所のお寺を指します。そのお寺をお参りして回ることをお遍路(へんろ)と呼んでいます。
方向性としてはすでに世界遺産に登録されている「紀伊山地の霊場と参詣道」と似ています。どちらも弘法大師関連だし(*'▽')
出典: 金剛峯寺 - Wikipedia
そもそも同一国内で似たようなカテゴリーの世界遺産がある場合、後からの候補地は登録されにくいとされています。キャラ被りはユネスコから嫌われるようです。
そもそも、"四国八十八カ所を世界遺産に!"とか言ってるのは自治体と観光業者であり、お寺側が世界遺産登録を希望しているのかは微妙です。私は88のお寺全てお参りしましたが、まあクセの強いお寺が多いこと多いこと(*'▽')。とても、88のお寺が足並みを揃えて~みたいな協調性があるとは思えないんですけど‥(*'ω'*)
阿蘇山(熊本県)
一言で世界遺産と言っても、カテゴリーが分かれています。「文化遺産」と「自然遺産」そして、両方を兼ね備えた「複合遺産」の3カテゴリーです。
例えば、富士山は見た感じ自然遺産っぽいし、最初は自然遺産カテゴリーでの登録を目指しました。ところが、ゴミだらけなことがばれて、"富士山という自然の営みに宗教性、芸術性を見出してきた日本人の自然観や文化観"とかいうフレキシブルな思考で文化遺産カテゴリーでの登録となりました。
熊本県の阿蘇山も、山だけど文化遺産登録を目指す候補地の候補地です。
出典:https://jp.zekkeijapan.com/
そもそも、「阿蘇山」って山は存在しません。いくつもの山々の総称が阿蘇山、なのです。
阿蘇山がアピールしているポイントは「阿蘇山は昔から噴火しまくりなので、世界最大級の火山地形が形成されている。それが、信仰の対象となり、人々も火山と共に共生してきた!」とかいう、"山=信仰対象"路線です。富士山と方向性は似ています。
富士山と違う点は、富士山は江戸時代に噴火をしてから現在まで噴火していない"昔のヤンキー"であるのに対し、阿蘇山は現役バリバリのヤンキーだということです。
過去にツアーで阿蘇火口まで見学に行ったことがありますが、現在では火口周囲1キロが立ち入り規制されています。見学できないのです。
つまり、仮に阿蘇山が世界遺産に登録されたとしても、阿蘇山がヤンキー状態な限り、見学に支障が出るので、観光業が潤うとは言えないのです(山のふもとの観光客は増えるでしょうが‥)。阿蘇山が落ち着くまでは、存分にくまモンさんでお楽しみいただければと思います。
終わりに‥
今回ご紹介したのは、ほんの一部です。ちなみに、2020年夏開催予定の世界遺産委員会で、すでに日本の暫定リストに記載されている「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島の自然遺産」が審議される予定です。審議の結果、賛成を得れば世界遺産に登録される予定です。
仮に、奄美諸島他が世界遺産に登録されれば、日本の暫定リストに"空き"が出ます。まあ、暫定リスト内での順番待ちもあるんですけどね(´・ω・`)。平均して、暫定リストに登録されて世界遺産に登録されるまで10年くらいかかっているみたいです。候補地の候補地状態にある名所にとっては、まだまだ先の長い話ではあります。