【旅行用心集を読む】シリーズは、ツベルクリン所有の『旅行用心集(1810年発行)』という江戸時代のガイドブックを読んで行くシリーズ記事です。今日はその第2回です。
前回の第1回の記事はこちら
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第1回では、"はじめに"の部分に当たる文章を読んで行きました。旅行に出かけるにあたっての心がけなどが書いてあります。第2回以降は具体的な旅行中のアドバイス部分を読んで行きます。
著者の八偶芦庵(やすみろあん)という旅好きの一般人が書いた書物ですが、芦庵は旅行中のアドバイスを"道中用心六十一ヶ条"としてまとめていきます。当シリーズでは、その61ヶ条を今後何回かに分けてご紹介していきます。
<目次>
<第1条>
"初て旅立の日ハ~”から訳
「旅立ちの日は、足のコンディションを完璧にして、草履の履き具合を調整します。旅行初めの2~3日は、休憩を多めにとって足を痛めないように注意しましょう。旅が始めるとテンションが上がっちゃって休みなく歩き続けがちです。最初で足を痛めちゃうと、その痛みに苦しみますので、旅の初めは足を大事にすることが肝要です。」
江戸時代の旅というのは、基本的に1日約40キロほど歩きました。江戸時代において一番有名な道は、江戸の日本橋と京都の三条大橋を結ぶ東海道でしょう。東海道には53個の宿場町(しゅくばまち・旅館が集まった町)がありました。
東海道は全長500キロですから、500÷53で、だいたい10キロくらいの間隔で宿場町があったと言えます。だいたい、朝出発したら4つ先の宿場町を目指して歩く感じですね。
<第2条>
後ろから2行目の"道中所持すべき~"からの訳
「旅行中に所持すべき物は、普段の外出で持っていく物以外は、極力最低限にするようにしましょう。あまり多くの荷物を持っていくと忘れたりして、めんどくさいことになりますよ」
ツベルクリン的アドバイスをすれば、"あったら便利!は持っていくな"です。
<第3条>
2行目、"駅舎へ到着して~"からの訳
「旅館に到着したら、第一にその土地の東西南北を確認しておきます。次に旅館の間取りやトイレの位置、、非常口の場所を覚えましょう。もしかしたら火事や強盗、宿泊者同士の喧嘩が起こるかもしれませんから」
皆さんも、特に海外のホテルの場合は非常口を確認しておきましょう。読者の方で『いやぁ~あの時非常口確かめときゃ良かったなあ』という方もいらっしゃると思いますし、てか早く成仏してください。
余談ですが、この『旅行用心集』と同じ時期に書かれたギャグ紀行文『東海道中膝栗毛(とうかいどうちゅうひざくりげ)』において、主人公の弥次郎兵衛さんと喜多八さんは、旅の途中で夫婦喧嘩に巻き込まれて、有名店のとろろ飯を食べそこねています。
<第4条>
6行目の"道中初てする輩"からの訳
「旅行が初めての人で、馬や駕籠、人足などが必要な場合は、出発の前日までに旅館の支配人に手配をお願いしておきましょう。朝になってからでは間に合わないかもしれません。出納帳にサインが必要な場合も、宿に到着した際にお願いしておきましょう。」
「出発の時間は前日のうちに旅館側へ伝えておきます。その時間に応じて起床しますが、宿の人が起きていない場合は起こしてあげてください。朝食が出来上がるまでに身支度を整え、いつでも出発できる状態で朝食を食べます」
「そのくらい万全にしておかないと、馬や人足の準備もゴタゴタして時間の無駄になります。旅行中は貴重品の管理はもちろん、このように時間を守ることも大切です」
人足とは、荷物を運んでくれる人のことをいいます。馬や駕籠もお金かかりますから、一般庶民は気軽に利用できるものではありませんが、まあたまには駕籠や馬に乗りたい気分の時もあったのでしょう。
出典:http://www.rokushaku-dojyo.sakura.ne.jp/ukiyoe.html
人足さんと駕籠と馬です(´・ω・`)
ちなみに、駕籠の料金は現代のタクシーと同じくメーター制で、1里(4キロ)で100文(1文がだいたい40~50円。つまり4000~5000円)くらいと考えられます。
※物価はあくまでだいたいの値です
この時代の旅人は出納帳を持ち歩いていました。支払いをした際にその証拠として、旅館の支配人から署名をもらっていたのですね。今のサラリーマンがビジネスホテルへ泊まって領収書をもらうのと同じです。
江戸時代に、一般庶民が宿泊できる旅館の種類としては2種類存在していました。「旅籠屋(はたごや)」と「木賃宿(きちんやど)」です。違いは、"旅籠屋=食事つき"で"木賃宿=食事なし"です。宿泊料の相場は旅籠屋が1泊2食付きで4000円~5000円(もちろん相部屋)、木賃宿は2000~3000円です。
木賃宿です。"きちん宿"って書いちゃってます
<第5条>
7行目の"朝はせわしき故~"からの訳
「朝は忙しいので、忘れ物を防ぐために、前日のうちにしっかり確認しておきます。翌日使うものと使わないものに分けて、風呂敷に包んでまとめておきます。朝はもう足袋を履けば出発できる状態にしておきます。朝の遅れは、一日の遅れにつながります」
なお、ツベルクリンは荷造りするほどの荷物が無いので、仕事で旅館に宿泊している時も、朝はギリギリまで寝ています(´・ω・`)
<第6条>
2行目の"旅宿は定宿は~"からの訳
「旅館は、決まりきった定宿はもちろん、初めて来た街道筋で泊まる場合は、なるべく建物のつくりがしっかりとしていて、お客さんが多い宿を選ぶようにしましょう。多少、宿泊費が高くてもそれだけの価値はありますよ」
今では、
こういうサイトで旅館の予約ができますが、この時代はネットはおろか電話さえありません。宿場町に着いたら飛び込みで泊まる宿を探さなければならないんです。
でも、どうぞご安心を。客引きさんが強引に旅館に連れ込みますから(´・ω・`)
もう風呂敷つかんじゃってるもの。今やったら法律違反ですわ(;^ω^)
<第7条>
5行目"旅行ハ兎角暑寒~"からの訳
「旅行は、とにかく暑さや寒さをしのげるよう、衣類や食べ物を調整します。夏を基準に考えるのが良いでしょう。夏は胃腸が弱くなりがちなので、食べ物を消化しにくくなります。また、食べ慣れていない魚介類やたけのこ、キノコ、うり、スイカ、お餅、などはたくさん食べるのはやめましょう。夏は食あたりになりやすいからです。春秋冬は夏に準じて食べるものを考えましょう」
この頃から"とにかく"という接頭語に、"兎に角"って当て字をすでに使っていたんですね。江戸時代は冷蔵庫とか無いので食べ物痛みまくりんぐですよね(´・ω・`)
そして、文章の途中にこういう挿絵が挿入されています
終わりに‥
ご覧いただきありがとうございました。次回は第8条よりご紹介していきます。第1条から第7条までは旅の基本的なことを説明していってますが、条項が進むにつれて、めっちゃ細かい注意事項になっていきます(´・ω・`)
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